Jリーグ屈指の人気を誇るビッグクラブ、浦和レッズが迷走中だ。昨年オフに再建への「3年計画」を宣言。2020年を「変革元年」として「ACL出場と得失点差プラス2ケタ以上」を掲げたが、開幕から連勝と連敗を繰り返す不安定な戦いぶりで、チームとしての継続性も見えないまま11月25日に大槻毅監督の今季限りでの退任を発表。11月29日の鹿島アントラーズ戦に0対4と大敗し、残り3試合を残した時点で13勝6分け12敗、勝点45の10位(42得点52失点で得失点差-9)となり、ACL出場権を獲得できる3位以内の可能性も完全消滅した。
ファンとっては失意のシーズンになったが、この感情は何も今年に限ったことではない。リーグ戦の年間優勝は2006年を最後に遠ざかり、その間、ACLやJリーグ杯、天皇杯のタイトルを獲得して面目を保ったが、昨季は5年ぶりの無冠に終わり、残留争いにも巻き込まれた。何より、2012年から5年半に渡って指揮したペトロビッチ監督を最後に、2017年から毎シーズン、次々と監督が代わり、チームの強化方針が定まらないことが大きな問題だ。
クラブは抜本的なチーム改革を目指し、昨年12月にフットボール本部の新設と、戸苅淳本部長、土田尚史スポーツダイレクター(SD)、西野努テクニカルダイレクター(TD)の新体制を発表し、2020年を「変革元年」、2021年は「飛躍の年」、2022年に「リーグ優勝」を掲げたが、その1年目に成績低迷で監督交代、さらに土田SDが病気による長期休養となり、「3年計画」は早くも頓挫した形となったのだ。
所属する選手たちを見ても、過渡期と思わざるを得ない。ペトロビッチ体制で軸となっていたMF阿部勇樹(39歳)やMF柏木陽介(32歳)にスタメンでフル稼働する力はなく、DF槙野智章(33歳)、GK西川周作(34歳)もキャリアの下り坂。エースとして奮闘を続ける興梠慎三もすでに34歳だ。今季出番を増やしたMFの汰木康也、関根貴大、柴戸海がいずれも25歳、右SBの橋岡大樹が21歳だが、まだまだタレント的に小粒感が否めず、ネームバリューのある面々は元日本代表ばかり。
18歳の怪物GK鈴木彩艶、19歳のレフティー司令塔MF武田英寿の成長、抜擢が期待されるが、まだまだ若手の突き上げが足りず、躍動感、フレッシュさのない試合運びでは、「ロートル軍団」と揶揄されても仕方がない。
オフに大幅な血の入れ替えも予想されるが、まず定めるべきは来季の監督だろう。一部報道ではJ2の首位を快走する徳島ヴォルティスを指揮するスペイン人監督、リカルド・ロドリゲスを“強奪する”と言われているが、それによっては3バックへ再変更も予想され、求められる人材も変わってくるからだ。
ただ、監督に“丸投げ”するだけでは長期的な強化には繋がらない。誰が監督になり、どのシステムを採用しようとも、各セクションに新たな戦力が必要なことに変わりはない。海外組も含めた代表クラスの人材を確保したいが、それが無理ならば海外から大物外国人を獲得すべき。これまでの浦和の歴史を顧みても、また、他クラブの状況を鑑みても、外国人選手の力によって戦い方が大きく変わるのは紛れもない事実なのだ。
しかし、補強がそう簡単には進まないという実情もある。ひと昔前ならば、豊富な資金とレッズブランドを武器に国内の有望な若手を獲得することができたが、近年は若手の海外志向が強まり、自らのステップアップ先として浦和を含めた国内強豪クラブではなく欧州クラブを選ぶ選手が増えた。
その中で今季J1を独走優勝した川崎フロンターレや、ACL圏内のガンバ大阪、名古屋グランパスなどは下部組織からの人材供給をうまくチーム強化に結びつけているが、浦和レッズではこれまでユース出身者でトップチームの主力となった選手は数少ない。そして外国人に関しても、コロナ禍が続く中で、文化が大きく異なる未知の国へ、家族とともにも移住することに対して抵抗感を持つ選手も多いだろう。
今オフの補強が思うように進まず、来季も成績低迷となると、レッズブランドはさらに下落する。そして中位の常連となり、残留争いにも巻き込まれることになるかもしれない。この先、浦和レッズの未来は、果たしてどうなるのか。このまま“中堅クラブ化”してしまうのか。建前上、来年は「3年計画の2年目」となるが、「3年計画の1年目」はプラン通りにならなかっただけに、今後も心配な部分は多い。
◇浦和レッズが完全に“中堅クラブ化” 復活の糸口は果たしてあるのか?(AERAdot.)