前節の浦和戦終盤、敵陣でFKを得るとボールの前に立ったのは犬飼智也だった。4点のリードを奪っていたとはいえ、まさかの人選にスタジアムはざわついた。
「あれはヤスさん(遠藤康)が「蹴っていいよ」、って。『練習しているから蹴りなよ』って言ってくれたので、蹴ってみました」
ボールは西川周作の手前で落ち、GKにとって処理が難しい弾道を描いた。ただ、本人には納得できるクオリティではなかったようだ。
「あまり当たっていなかったので、またいま練習しています」
「始めたときよりは全然上がってきていると思うので、もうちょっと突き詰めれば普通にゲームで自分から蹴ると言えるようになるかなと思います」
今シーズンの犬飼智也の充実ぶりはすばらしい。明治安田生命J1リーグでは、ここまで29試合に先発して全てフル出場を果たしてきた。自陣での空中戦では的確に跳ね返すだけでなく、丁寧なビルドアップを求めるザーゴ監督のサッカーにおいてなくてはならない存在となっている。ディフェンスリーダーとして存分な働きぶりと言えるだろう。
歴代、鹿島にはその時代を代表するCBが所属してきた。守備を統率し、苦しい試合になれば自らセットプレーで得点することでチームに勝利をもたらす。その多くはヘディングでのゴールだったが、犬飼はいま、新たなCB像にチャレンジしている。
文:田中滋(鹿島担当)
明治安田生命J1リーグ 第32節
12月12日(土)16:00KO カシマ
鹿島アントラーズ vs 清水エスパルス
◆【鹿島 vs 清水】犬飼智也が、新しい鹿島のCB像に挑む(J’s GOAL)