日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年5月30日日曜日

◆プロ分析官が注目の『川崎×鹿島』を徹底展望! 両チームCBのパフォーマンスが命運を分ける!?(サッカーダイジェスト)






川崎は2つの大記録が懸かる重要な一戦!


 単独首位を走る川崎フロンターレが、ホームに直近6試合で5勝1敗と上昇傾向にある6位の鹿島アントラーズを迎える一戦。川崎にとってはリーグ新記録となる開幕20戦負けなしと、鬼木達監督のJ1通算100勝最速達成が懸かる注目の戦いが、5月30日に等々力陸上競技場で行なわれる。

『サッカーダイジェストWeb』では、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜でチームや対戦相手を分析するアナリストとして、リーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、17節・川崎対鹿島の勝負のポイントを伺った。

 確かな分析眼を持つプロアナリストは、この注目のゲームをどう見るのか。予想布陣の解説とともに、試合展開を4つの状況に分け、それぞれの見どころを語ってもらった。


――◆――◆――



両チームのマッチアップ図。


●川崎フロンターレ
今季成績(16節終了時)※19試合消化:1位 勝点49 15勝4分0敗 47得点・14失点

●鹿島アントラーズ
今季成績(16節終了時):6位 勝点27 8勝3分5敗 27得点・18失点

【予想布陣解説】
 予想した川崎のスタートは、2節前の横浜FC戦と同じ形です。前節の湘南戦はそこから若干メンバーを変えて挑み、結果的に追いついてドロー。一方、横浜FC戦のパフォーマンスは非常に良かったと思いますし、次は鹿島が相手というところで、長く使われている選手たちがメインになってくるかなと。

 ただ変更があるとすれば、インサイドハーフの旗手怜央選手が脇坂泰斗選手になる可能性もあります。ですが、鹿島のダブルボランチが三竿健斗選手とレオ・シルバ選手なのであれば、脇坂選手よりもより機動力があって、三笘薫選手の周りのサポートをしやすい旗手選手を選びました。

 鹿島も2節前の鳥栖戦とほぼ同じメンバー。ただ鳥栖戦では、常本佳吾選手が出場停止で出ていませんでしたが、現在は常本選手が右サイドバックの一番手になっているので、スタートで起用すると予想しました。

 また、前節のC大阪戦(〇1-0)は結果も出ましたし、その際に先発で出場したディエゴ・ピトゥカ選手や小泉慶選手らを連続で起用するかどうかにも注目です。

 上田綺世選手は怪我によって、途中からの出場が多くなってきています。エヴェラウド選手も練習には参加しているという情報はありますが、彼らをどれだけ使えるのか分からない状態なので、本調子の選手を使うだろうと考えました。川崎が相手ですし、相馬直樹監督になってから結果を出しているメンバーで、チャレンジャーとして挑むでしょう。


川崎の自陣からの攻撃vs鹿島の敵陣での守備


川崎が自陣でボールを保持している際のマッチアップ図


 今回のマッチアップは、川崎の2CBとアンカーに対して、鹿島は2トップ。この3対2という状況を川崎がどう生かすかというところには注目です。

 そこで、アンカーのジョアン・シミッチ選手がどのような動きをするのか。前述した3対2を生かすのであれば、J・シミッチ選手がCBの間に下りて、鹿島の2トップに対して数的優位を作り前進していくことです。

 ただ鹿島は14節の横浜戦で、中盤のミドルゾーンでボールを奪い、相手の陣形が整う前に素早くカウンターを仕掛けたことが結果的に大量5得点に繋がりました。川崎からすると、ミドルゾーンでは絶対にボールを失いたくない。その時に、後ろで3対2を作ったとしても、その先に中盤や前線でどれだけ人数をかけられるかを考えれば、わざわざ1枚を後ろに下げる必要があるのかという考えも浮かびます。ですので、J・シミッチ選手の立ち位置の変化は注視すべき点です。

 またこの図のようにジェジエウ選手がボールを持った場合、どのタイミングで最前線のレアンドロ・ダミアン選手に当てるのかも気になるところ。繋ぐ川崎として、シンプルにL・ダミアン選手にロングボールを入れるシーンはあまりなさそうですが、カウンターやビルドアップで敵陣に侵入するときに、L・ダミアンを使うのか使わないのか。使った場合、しっかり収めてもらえるかどうか。ここでボールを奪いたい鹿島の狙いを回避しながら、川崎が相手を押し込めるかどうかです。

 鹿島の敵陣での守り方は、2トップが相手CBにプレスをかけるよりも構えることが多い。ただ引いて構えるのではなく、図のようにボランチには入れさせない立ち位置を取ります。この時に、アンカーのJ・シミッチ選手がボールをもらいに下がると、鹿島の2トップも少しラインを上げる。この動きによって、川崎のCBが空いたスペースに自分で持ち運ぶことができます。川崎はこれを狙いたいし、鹿島としては2トップがどのタイミングでCBかアンカーにアプローチをかけるのか。そこのせめぎ合いが、川崎が敵陣に進入できるかできないかに絡んでくるかなと。

 ジェジエウ選手と谷口彰悟選手が前のスペースにボールを運べれば、必然的に全体が押し上がるので、サイドバックの山根視来選手や登里享平選手が、この図以上に高い位置を取れることになります。これを川崎として狙いたいところでしょう。

 川崎のCBが前線にどれだけボールを入れられるか、自分で持ち運んで味方を押し上げられるか。鹿島は下がり過ぎずに相手の3トップに対してのパスを潰せるかが、この局面での見どころです。


川崎の敵陣での攻撃vs鹿島の自陣での守備


川崎が敵陣でボールを保持している際のマッチアップ図。


 鹿島は鳥栖戦で相手のインサイドハーフが捕まえ切れなかったというシーンがありましたが、川崎は旗手選手と田中碧選手がどれだけ三竿選手とL・シルバ選手に捕まらない位置に動いて、ボールを握れるか。川崎側からすると、インサイドハーフの立ち位置で優位に立てるかがまず一つ目のポイントです。

 川崎は当然、鹿島の鳥栖戦や前節のC大阪戦を見てスカウティングをしているはず。そこで何を発見するかというと、単純にサイドバックの後ろのスペース。そこでの一番の狙いは、CBの犬飼智也選手と町田浩樹選手をつり出すことです。鹿島は鳥栖戦で、犬飼選手が外まで出て行って、対応し切れずにクロスを入れられて失点しました。その失敗を踏まえ川崎戦では、左ウイングの三笘選手のドリブル突破や抜け出しに対して、ボランチがカバーしたり常本選手が戻ってきたりといった判断に変更する可能性があります。川崎はそれを逆手に取って、三笘選手や家長昭博選手が積極的に裏に抜け出て、パスを受けようとするでしょう。

 単純にサイドを抜けられる以外に、もうひとつ鹿島が相手にさせたくないことがあります。それは、サイドチェンジです。川崎は頻繁にサイドチェンジをするようなチームではないですが、この図の時に逆サイドの山根選手が大外から上がってくるシーンは容易に想像できます。

 基本的には川崎の攻撃として、素早く縦に行くよりも時間を使いながらいかに隙を突いてゴールを狙うかという戦術がベースなので、サイドチェンジから崩すという狙いも出てくる。そこで鹿島のCBがどこまで外に出るか。一番脅威となるL・ダミアン選手がいる中央を空けたくないでしょうから、その意味も含めて最後の局面での鹿島のCBのカバーリングや状況判断が命運を分けるかもしれません。


鹿島の自陣からの攻撃vs川崎の敵陣での守備



鹿島が自陣でボールを保持している際のマッチアップ図。


 川崎の敵陣での守備では、前線の3枚と2人のインサイドハーフがハイプレスをします。鹿島は両サイドハーフが中に入ってきて、数的優位を作ろうともしますが、ただこれまでの鹿島のビルドアップを見ていると、ハイプレスをかけられた時に徹底的に繋ぐという選択はあまりしません。

 鳥栖戦でもそうでしたが、基本的には2人のCBかGKが前線にロングボールを蹴ってセカンドボールを拾うというイメージがあるので、当然川崎としては待つのではなく、いつも通りのハイプレスでロングボールを蹴らせることを狙う。この時、川崎が一番気を付けないといけないのは、鹿島の松村優太選手や白崎凌兵選手の両サイドハーフが下がってボールを受ける時に、この図のようにサイドバックがついて行きすぎてしまうと、後ろにスペースが生まれてしまいます。

 この時、図では谷口選手とジェジエウ選手が中央にいますが、実際にはもう少しボールサイドに寄せているはず。湘南戦でも見られましたが、この2人のCBがどれだけ後ろをカバーできるかが重要になってきます。

 一方鹿島は、基本的にはショートパスで繋ぎたいでしょうが、どうしても相手のプレッシャーが激しい時はそれができない。やりたい気持ちや狙いは見えますが、結果的にロングボールで進入するということが鳥栖戦やC大阪戦でもありました。この場面での両CBのロングパス成功率にも注目です。

 これまでの試合の平均値としては、鹿島の犬飼選手と町田選手はともに80パーセント台前半ですが、川崎の谷口選手とジェジエウ選手は90パーセント台。この差はシンプルに鹿島の方がロングボールを蹴ることが多いからですが、そのフィードをどれだけ高い精度で供給できるかも、この場面においての両チームのCBの役割として、面白い視点だと思います。

 鹿島は、せっかく自分たちのボールになって、自陣から攻撃を仕掛けられるという時に、簡単に相手にボールを渡したくないはず。川崎に繋がれてしまうと、ボールがしばらく返ってきませんからね……。しかし川崎は、L・ダミアン選手がハイプレッシャーをかけてきて、そこで奪ってゴールまで持ち込むシーンが何回も見られる。

 そこで、自陣でのボールロストを避けてロングボールを蹴らざるを得ないのか、それとも自分たちから意図的にロングボールを蹴って、この図のように荒木選手を走らせる狙いを持ってやれるかの判断が大切。ロングボールにしても繋ぐにしても、どちらの判断をCBが取れるのか。川崎としてはそれをさせない、また選択肢すら与えないぐらいのプレッシャーをかけられるかどうか。この攻防が見どころです。


鹿島の敵陣での攻撃vs川崎の自陣での守備



鹿島が敵陣でボールを保持している際のマッチアップ図。


 川崎は、湘南戦と横浜FC戦での後半の修正ができるかどうか。横浜FC戦は相手が最初は4-4-2でしたが、後半から5-4-1に変更してから、2シャドーを捕まえ切れず押し込まれるシーンが増えてしまいました。それは、5-3-2システムを使用した湘南相手の試合でも多少見られました。

 その理由として川崎は、この図の上の赤いスペースに相手に入られたとき、誰がマークをつくのかがはっきりしないこと。これは4-3-3のシステム上、ほぼ起きることなのですが、鹿島はこのエリアを使うのがとてもうまいチームなので、注意すべきポイントになってきます。

 鹿島は明らかにこのエリアを使うチームなので、どう修正して試合に入れるかどうか。単純に考えれば、インサイドハーフの旗手選手や田中選手が下がればいいだけだと思われるかもしれませんが、そうするとこの図のように、三竿選手とL・シルバ選手がフリーになってしまう。彼らから縦パスが入って、松村選手、荒木遼太郎選手と繋がって、サイドを変えられるというシーンがあった時、鹿島の両サイドバックはかなり高い位置取りをしてきます。この流れで、永戸勝也選手や常本選手が敵陣深くから鋭いクロスを入れてチャンスを作る場面は過去の試合でもありました。

 川崎はインサイドハーフが前からプレスをかけたいけど後ろを使われたくない。後ろを使われたくないから下がると、今度はボールホルダーにいけないというジレンマをどうやって解決するのか。解決策のひとつは、CBが前に出て行って相手を潰すこと。ただ、もしこの図の時に、ボールホルダーの荒木選手にCBの谷口選手がプレスをかけた際、土居聖真選手が斜めに走って、そこにスルーパスを通される可能性もある。一番使われたくないのは背後なので、そこをどうケアするのかです。

 敵陣でボールを保持した際の鹿島は、基本的に攻撃の仕方はどの試合も同じ。両サイドハーフが中に入ってきて中央に人数をかけ、ワイドのスペースはサイドバックが突く狙いがある。問題はそこで、中央パスを繋いでどれだけ両サイドバックが高い位置を取る時間を作れるかです。

 また鹿島の攻撃時、CBの役割として非常に重要なのはリスクマネージメント。川崎のカウンターにも注意しなければいけないので、なるべく相手の陣地内でボール保持をしたいのであれば、どれだけ川崎の3トップをマーキングできるか。守備を考えた時に重要なのはCBの立ち位置です。

 2人のCBに対して、もし川崎の3トップが前線に残っているのだとしたら数的不利になります。そこで両サイドバックがともに高い位置を取るのはかなりのリスクがある。もしかすると、ボランチの三竿選手が残って3人で守備対応する可能性もありますが、鹿島は攻撃の際に、同時に守備も考えながらやる必要があります。ここでも、CBのパフォーマンスが試されますね。


【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。

◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014~15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年~20年)

◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝 
2018年:ルヴァンカップ・準優勝 
2019年:J1リーグ優勝




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