日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年6月2日水曜日

◆“100%”の川崎を追い込んだ鹿島の底力 万全の“三笘対策”に見た常勝軍団の意地(FOOTBALLZONE)






【識者コラム】鹿島相手に“総力戦”を強いられた川崎、三笘は珍しく苛立ち露わ


 川崎フロンターレのテーマはメリハリだ。それはリーグ戦を乗り切る鉄則でもあるのだが、絶対に勝たなければならない“決勝戦”をいくつか設定しながら、それ以外の試合では実験を重ねていく。そして監督交代後に著しく改善されている鹿島アントラーズ戦は、紛れもなく「決勝戦」だった。

 キックオフからベストメンバーが100%の集中を見せる川崎は、やはり早々と主導権を握った。鹿島も上田綺世と小泉慶が最前線から相手の最終ラインに圧力をかけようとしたが、川崎はハイテンポのダイレクトパスを3~4本連ねることで一気に打開。その中で家長が巧みに落ち着きをもたらすタクトを揮うなど、大方鹿島陣内で試合を進めるようになる。レアンドロ・ダミアンの先制シーン以外にも、いくつかのゴールチャンスを創出していた。

 ただし反面、滑り出しが好調な川崎にも誤算はあった。川崎の攻撃の最大の特徴は、三笘薫の突破力だ。三笘と家長をスタメン起用するのは前半から決めに行きたい試合で、逆にストレスの少ない試合なら途中から出して効率良く決めに出る。これまで三笘は、どちらの起用法にも十分に期待に応えてきた。

 だが、鹿島の三笘対策は万全だった。相馬直樹監督は「川崎対策は何もしていない」と言う。しかし、対峙する常本佳吾は「映像を見て、ボールの持ち方などを研究し、1対1には負けない。また自信を持っている縦への勝負などをやらせないように、できるだけ相手を苛つかせようとした」と語った通り、当面のデュエルでほぼ全勝し、犬飼智也との共同作業で三笘へのパスの供給も寸断し続けた。

 珍しく三笘も苛立ちを露にしていた。1対1の仕掛けで常本にインターセプトされた後には、後ろから背中を突くシーンもあり、後半には常本と犬飼に対応され突破が難しいと判断すると、不得意な左足でクロスをミス。ついに鬼木達監督も、鹿島に追いつかれ本来なら最も残しておきたい切り札を、真っ先に交代させる決断を下すのだった。

 鹿島がエースを消したことで、川崎は文字通りの総力戦を強いられた。インサイドハーフの田中碧をボランチに下げ、家長をトップ下に移行し、旗手怜央を右サイドに張らせてチャンスメイクを託した。アディショナルタイムに入ると、ダメ押しのように小林悠を送り込み、勝ち越しゴールを奪い切る。


終了間際に起きた川崎の“小さな奇跡”、ここまで追い込まれたのは今季初めて


 それは蓄積された勝者のメンタリティーが生み出した、小さな奇跡のようなものだったかもしれない。これまでも川崎が引き分けた試合もあるし、苦戦をしたこともある。だが開幕の横浜F・マリノス戦から、FC東京との多摩川クラシコ、さらには名古屋グランパスとの首位攻防を賭けた連戦など、言わば決勝戦と位置付ける節目の試合は、ことごとく圧倒してきた。要するに100%万全の川崎を、ここまで追い込んだのは鹿島が初めてだった。

 試合後は両チームともに何人かの選手がピッチに崩れ落ち、土壇場で勝利を手にした川崎は優勝シーンのような歓喜に包まれた。鬼木監督も「本当に痺れるゲーム。価値のある1勝」と振り返るように、おそらく今季のベストゲーム。こうして川崎の全力を引き出す試合が増えれば、リーグに牽引車を得た本当の価値が見えてくるはずである。


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