[7.31 東京五輪準々決勝 U-24日本 0-0(PK4-2) U-24ニュージーランド カシマ]
0-0で迎えたPK戦。しびれるような状況の中、PK戦の一番手に向かったのはU-24日本代表FW上田綺世(鹿島)だった。
ベンチスタートとなった上田に出番が巡って来たのは、スコアが動かずに迎えた後半24分だった。「守備とか求められることはあるけど、決勝点を取ることに注力していた」。そして、後半37分に決定機が訪れる。右サイドからMF堂安律(PSV)が送ったラストパスに反応すると、ゴール前でフリーに。しかし、右足で合わせた至近距離からのシュートは好反応を見せたGKマイケル・バウドにストップされてしまった。
0-0のまま、試合は延長戦へ。そして、延長戦でも得点は生まれず、勝敗はPK戦に委ねられることになった。
ここで、森保一監督はPK戦のキッカーを挙手での立候補制で決めることに。そして、一番手に名乗りを挙げたのが上田だった。「自信もあったけど、この状況を作ってしまったのは僕なので。取り返すことはできないけど、1本目に自分がしっかり決めてチームを勢い付かせることしかできないと思い、1本目に立候補した。6番目とかで終わっても悔しいし、自分が外したまま終わるのが嫌だった」。
先行のニュージーランドが1本目を決めて迎えた、日本の1本目。ペナルティースポットに向かった上田は、ボールを頭に当てて願いを込めた。
「何かの節目にあったときに必ず運が必要だと思う。自分自身のキャリアを見ても、自分のラッキーパンチに助けられたこともある。自分が今まで背負ってきたものをここで出さないといけないし、あの一蹴りで僕の人生を、これまでの人生をつなげることにもなるので、その念を込めた」
上田が右足から蹴り出したボールはきっちりネットを揺らした。さらに相手の2本目をGK谷晃生(湘南)がストップして勢いに乗ったチームは、PK戦を4-2で制して、スペインが待つ準決勝へと駒を進めた。
「この状況を作ってしまったのは僕なので、次につながったのは僕にとってもチャンス。絶好機があって、それをモノにできなかったのがすべてだと思う」。次こそは、チームに勝利をもたらすゴールを奪うために「僕の持っている力のすべてを使っていきたい」と決意を固めた。
(取材・文 折戸岳彦)
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