昌平の主将DF津久井佳祐、誤解を招きかねない発言について真意を説明
開催中の第101回全国高校サッカー選手権大会に出場した昌平(埼玉)は、優勝候補の一角に挙げられたが3回戦で前橋育英(群馬)に逆転負けし、ベスト8を逃した。試合後、主将のDF津久井佳祐が下級生に発した言葉が一部で物議を醸したが、誤解を招きかねない発言に本人が改めて真意を語った。(取材・文=河野正)
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2年ぶり5度目の出場で初優勝を目指した昌平は前半3分、MF荒井悠汰のロングシュートで先制。しかし同13分に追い付かれると、後半10分に決勝点を奪われ1-2で痛恨の逆転負けを喫した。
試合終了の笛が鳴ると、ほとんどの選手が膝を折り、ピッチにうずくまって泣き崩れた。津久井は主将として、守備の中心として2失点で敗れた敗戦の責任を背負い込み、前橋育英のMF小池直矢に声を掛けられてようやく立ち上がった。
ドレッシングルームでの長いミーティングを終えた津久井が、記者の待つ取材場にやって来た。敗因や試合内容などをひととおり説明したあと、後輩に向けてこんな檄を飛ばしたことを明かした。
「今日はうしろから見ていて1、2年生は今までで一番駄目なプレーだった。相手のプレスにびびってしまい、うちのサッカーができなかった。(負けたのは)お前らのせいだ。自分たちを踏み台にしてもいいからもっと上を目指してくれ」
津久井は「励ますのもいいけど、それでは後輩の力にはならないと思った」と、あえて厳しい言葉を使って後輩の奮起を促し、さらに逞しい選手に成長してもらいたい意思表示だったという。
記者団にも「1、2年生のおかげでここまで来たと思っています」との感謝の念、いたわりの思いを口にしていた。
しかし、「お前らのせい」という言葉がクローズアップされたことで津久井は消沈し、敗戦のショックもあってすっきりしない心持ちが続いているそうだ。
そこであの時の心境と状況を明確に伝えたいと思い、素直な胸の内を改めて明かした。
「後輩に厳しい言葉をぶつけたのは事実で、まず彼らの力がこんなものではないだろう、もっともっとやれることを知っているぞという気持ちが真っ先に出ました。後輩に励ましの声を掛けても意味がないので、あえてそういう表現をして来年、自分たちと同じ思いをさせたくなかったので言いました。僕の言葉を思い出してほしかったんです」
試合後に発したコメントを振り返る津久井「チーム内にとどめておくべきでした」
少々辛辣なのは「お前らのせい」だけで、ほかは愛情の発露と言える言葉ばかりだ。
「正直なところ、お前らのせいで負けたなんて思っていません。あんなことを言いましたが、ここまで来られたのは1、2年生のおかげです。インターハイも後輩たちが本当にいいプレーをしてくれて、外で見ていて泣きそうになりました」
津久井は昨夏のインターハイ、大津(熊本)との準々決勝で前半15分過ぎの右コーナーキックに攻め上がった際、右足首を負傷。じん帯断裂と脱臼という全治3か月の大怪我を負った。
大勢の報道陣を前にして、ドレッシングルームでの発言を正直に話したことを失言と受け止めている。
「メディアの人たちに話す内容ではなく、チーム内にとどめておくべきでした。後悔しています。反省もしています」
これは言い訳でも抗弁でもなく、津久井の人柄と人間性があの発言に至ったようだ。
「自分が喋っている時、ロッカーにテレビカメラが入っているのを知ったのは最後のほうでした。テレビに流れると思い、取材場でロッカーと違ったことを話したら、嘘つきと思われるのではないかと、ロッカーで話したことを記者のみなさんにもそのまま伝えました」
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鹿島アントラーズへ加入した津久井は1月5日夜に入寮。チームは6日から始動したが、怪我が完治しておらず、1週間後の検査結果で合流できるか判断するという。「鹿島のサッカーに早く慣れ、徐々に試合に絡めたらいいですね」と気持ちを新たにしていた。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
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