サッカーの本質を改めて見せつけた
この男こそプロ、真の戦士──。FC東京戦でのシュートは1本、走行距離は約9キロ、スプリント数は11本と、これらのデータからは凄みは感じられない。それでも、闘争心溢れるプレーで鹿島に闘魂を注入した鈴木優磨の姿を見て、素直にそう思った。
鹿島がFC東京を3−1と下した試合(7月16日)でマン・オブ・ザ・マッチを選べと言われたら、それは文句なしに鈴木だった。松木に覆い被さるような格好で決めたヘッド弾はもちろん、攻撃面での駆け引きが秀逸で、データからは測れない上手さと威圧感を示していたのがこの日の彼だったのだ。
サッカーをよく知っている。FC東京戦の鈴木のプレーを端的に言えば、そうなるだろう。フィジカル勝負でガツンとかまし相手に心理的なダメージを与え、また最前線のポジションからすっと降りてきて敵CBのマークを外すなど、実に嫌らしいプレーでFC東京の歯車を狂わせたのだ。
しかも、休むところは休む。90分間走り続けるのではなく、オンとオフの切り替えがしっかりできている点も素晴らしかった。
パワーと知性を備えた鈴木は、FC東京にとってなんとも厄介な存在だった。ボールがないところでもわざと身体を当てたり、ちょっとしたアクションで相手の心とスタミナを削る。サッカーにおいて、こうしたずる賢さは非常に重要。「こいつ、面倒くさいな」と敵に思わせただろう彼のスタンスには脱帽した。
球際の強さ、さらに駆け引きの上手さも思う存分と言っていいほどアピールした鈴木は試合後、「戦術はもちろん大事ですけど」と前置きしたうえで次のようにコメントした。
「見ているお客さんは、俺たちの戦う気持ち、魂が乗っている部分を感じて心を震わしてくれる。(今日は)戦術にプラスして戦う気持ちを見せることができたと感じています」
サッカーは戦術が全てではない。ピッチでプレーしているのは生身の人間で、ロボットではない。だから、気持ちも重要になるのだ。気迫溢れるプレーでFC東京にストレスをかけ続けた鈴木は、サッカーの本質を改めて見せつけてくれた。
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
◆FC東京にストレスをかけ続けた鈴木優磨。「こいつ、面倒くさいな」と敵に思わせただろうこのアタッカーの“ずる賢さと闘志”に脱帽【鹿島】(サッカーダイジェスト)
『(今日は)戦術にプラスして戦う気持ちを見せることができたと感じています』
— 日刊鹿島アントラーズニュース (@12pointers) July 20, 2023
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