日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年12月2日土曜日

◆なぜ鹿島は柴崎岳を求めたのか。チームの矢印を明確にできる存在。「満男さんじゃないけど...」強力なリーダーシップに指揮官も期待(サッカーダイジェスト)






左足ハムストリング負傷。全治8週間


 岩政大樹監督が初めてフルでシーズンを率いた2023年、鹿島アントラーズはまたしても無冠に終わってしまった。理由を探せば色々と考えられる。ただ、終盤戦で1つ残念だったのは、夏に加入した柴崎岳の怪我だ。

 2016シーズン以来の復帰となった柴崎は、「日本でプレーする時はまたアントラーズで、と思っていました」とコメントしていた。9月4日からチームに合流してからの変化を、岩政監督は「ガクが帰ってきて、1か月ぐらい、あいつが怪我するまでのチームの雰囲気は全然違いました」と振り返る。

「何も言わなくても、ガクがそこでしっかりプレーしていることで、選手の取り組む姿勢が全然違う。彼が怪我した後、空気がまた変わってきて...コーチングスタッフが、いくらちゃんとやらなきゃいけないよと説いたって伝わらないものが、一人の存在で変わってくる。それがこの世界なので」

 柴崎がまだレガネスに所属していた昨年末、スペインまで行っていたという岩政監督は「何度も会って話して。あいつは向こうに残りたい気持ちもありつつ、(鹿島に)戻る決断をしてくれて。願わくばシーズン頭からいてくれたら、助かっただろうなというのはありますけど」と振り返る。

 実際の加入は夏だったが、柴崎の効果が目に見えるほど明らかだったのは、1-0で勝利した9月16日のセレッソ大阪戦でも伝わるものがあった。

「彼のパスとか技術は当然そうだけど、姿勢がやっぱり、優勝するための日常を作り出す彼の人間性というか。男としての仕事ぶりが一番の良さだと思っているので。鹿島復活の重要なピースになると思いました」

 横浜F・マリノス戦も1-2で競り負けはしたものの、前回王者と接戦に持ち込めたのは、中盤でゲームコントロールを担った柴崎の貢献が大きい。しかし、彼を欠いたアビスパ福岡戦は0-0のドロー、続く神戸戦で0-2とリードされたところから逆転の望みをかけて投入されたが、そこで左足のハムストリングを負傷。全治8週間の診断となり、残りシーズンの欠場が確定してしまった。


J1王者が醸成する空気感





 この数年、なかなかタイトルに手が届かない状況で、鹿島のサッカーは古いという言葉が世間で飛び交うようになる。チームの変革を目ざし、なかなか結果が出ないなかで、戦い方のベースを担う監督も、2020年から4シーズンでザーゴ、相馬直樹、レネ・ヴァイラー、岩政大樹と移り変わり、その間に遠藤康や永木亮太、レオ・シルバなど、経験豊富なベテランを含む多くの選手が鹿島を後にした。

 チームのサイクルとして、必要な血の入れ替えは当然あるが、年齢や経験値のバランスを考えても、やや急な印象を受ける入れ替わりであったのは確かだ。

 そうした状況で鹿島が頼ったのは、鈴木優磨、安西幸輝、植田直通、昌子源といった、国内外の異なる環境を経験してきた“鹿島ファミリー”の選手たち。そのラストピースとも言うべき存在が、柴崎だった。

「彼は昔の(小笠原)満男さんじゃないですけど、いろんなものを引き受けるメンタリティを持っている。ピッチ内にそういう選手がいるのは大きいです。どうすればいいのかというのは言語化して、コーチ陣で落として、毎日の練習で求めますけど。

 それを求めたからってできるもんじゃないのが現場の難しさ。それを体現してくれる選手が夏に戻ってきたのは大きいですし、彼に期待しているところはあります」

 首位を走っていた神戸との試合で、岩政監督が痛感したのが、ピッチ内での神戸の選手たちの出す覇気や声だった。「サコ(大迫勇也)を中心に出してるんだけど、佐々木とか前川とかも引っ張っていて。あの空気感ですよね。あの空気感を作らないといけない」と岩政監督。

 元チームメイトでもある岩政監督が大迫と話した時に「経験値の差です」と直球の指摘をされたという。それは日本代表で共に戦った酒井高徳が、神戸に与えた影響からも感じたという。

 スタイルを見れば神戸は大迫を中心に、シンプルに高強度を突き詰めることで、ライバルとの違いを出している。現在の鹿島は「決まりきったものに見えないようなチームを作りたい」という岩政監督の言葉通り、簡単に言えば“後出しジャンケン”で相手の逆を狙うような戦術であるため、完成度が上がらないと、上手く行っている時と行き詰まった時の差が激しく出やすい傾向にあるのは確かだ。


新しい鹿島を築いていくために





 しかし、どんなスタイルであろうと突き詰めて、際での勝負強さを求めるなら、選手たちが同じ方向を見て、チームの矢印を明確にできるかが大事になってくる。そうしたリーダーシップを持った選手を鹿島は求めていた。

 ただ孤軍奮闘するのではなく、若手もベテランも関係なく、チームが勝利に向かって行く矢印を生み出していける存在だ。

 それと同時に、岩政監督はセンターバックを組む植田直通の隣で、大きく成長した関川郁万の姿を目の当たりにしており、日本代表にも招集された佐野海舟が、柴崎の隣でさらに成長することも思い描いているようだ。

 理想を言えば、もう少し柴崎が良い状態でチームに入り、終盤戦でタイトル獲得のラストピースになってほしかったというのが、岩政監督や強化部としても正直なところかもしれない。

 しかし、鹿島の戦いが今年で終わるわけではない。現時点で来年の監督がどうなるかも、コーチングスタッフがどうなるかも、リリースされていない。選手も少なからず入れ替わるかもしれない。

 それでも柴崎が、ここから新しい鹿島を築いていく強力なリーダーの一人となっていくことは間違いないだろう。もちろん彼一人に頼るのではなく、チーム全体が勝利のために責任感を持って、一つにまとまっていく空気感を生むための主軸である。

取材・文●河治良幸




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