鈴木優磨も2試合シュートゼロ。土居聖真が「受け手の欲しいタイミングから2個3個…」と説く“改善点”
2024年J1の今後を占うと見られた3月代表明けの3連戦。3月17日の第4節で因縁の相手・川崎フロンターレを9年ぶりに撃破した鹿島アントラーズは充実した中断期間を過ごし、万全体制で序盤の勝負どころを迎えたはずだった。
一発目だった3月30日のジュビロ磐田戦を首尾よく1-0で勝利。チーム全体に弾みがついたはずだったが、続く4月3日のアビスパ福岡戦で0-1とまさかの黒星を喫してしまった。ここで連敗は許されなかったが、7日のFC東京戦も相手に鋭いカウンターを発動され、仲川輝人と原川力に2発を浴び、終わってみれば0-2の完敗。7試合終了時点で勝点10の8位に後退し、首位を走る町田ゼルビアとは6差をつけられてしまっている。
順位表を見ると、やはり気になるのが得点の少なさだ。鹿島の総得点は7でリーグ全体では下位。開幕の名古屋グランパス戦で3得点発進したことで「今季の鹿島は鈴木優磨依存から脱却できる」という前向きな手ごたえも感じられたが、4月に入ってからは無得点。エース・鈴木優磨も福岡・FC東京戦でシュートゼロという厳しい状況に陥っているのだ。
「流れからゴールを取れていないのは課題。トレーニングで改善して精度を高めていきたい」と指揮官も語ったが、得点力アップはポポヴィッチ監督率いる新生・鹿島の最重要テーマだったはず。そこが目下、足踏み状態に陥っているのは、やはり見逃せない点だ。
「結局、最後の精度じゃないですかね。いくら崩しても、最後のパスと最後のシュートがよくなきゃ点は入らないんで、そこの質は俺を含めて1人1人が上げる必要があるかなと思います」と背番号40は自戒を込めて語っていた。が、FC東京戦を見る限りだと、彼に点を取らせる形も作れていない印象も拭えない。
「カウンターの時に自分のところでリスク管理ができずに何度かやられてしまった」と、ボランチ・佐野海舟も反省の弁を口にしたが、チャレンジのパスが引っ掛かり、相手の逆襲の餌食になるというシーンは何度か散見された。もともと本職でない知念慶と守備職人の佐野というボランチコンビだと、効果的なタテパスがなかなか入らないのも1つの事実。
■土居聖真が説く「組み立ての改善」
そこで指揮官もここまで土居聖真を下げたり、樋口雄太を起用したりと、さまざまなボランチコンビを編成してきたが、守備はよくても攻めが物足りないという現実はある。
FC東京戦で新戦力のミロサヴリェビッチがデビュー。彼がもう少しフィットして来れば攻撃リズムも変わるだろうし、キャプテンで10番の柴崎岳の復帰も待たれるところ。ただ、柴崎は4月初旬の時点で全体練習に合流しておらず、ピッチに戻ってくるのはしばらく先になりそうだ。となれば、ある程度、現有戦力で乗り切るしかない。
「僕らの悪い時は外回しさせられちゃう。福岡戦もそうだったんですけど、受け手の欲しいタイミングから2個3個遅れてボールを出されても、相手に寄せられるし、相手を簡単に守れちゃう。そういう流れを変えないといけない」と土居も強調していた。組み立てのところからの改善が今の彼らには必要なのだ。
土居聖真が感じる常勝時代との違いとは……柴崎岳、遠藤康、小笠原満男を例に出して話したこと
ランコ・ポポヴィッチ体制の鹿島アントラーズは今、最初の難局に直面している状況。ここでズルズル行ってしまえば、上位躍進、優勝争い参戦はもちろんのこと、多くのサポーターが望む常勝軍団復活は遠のくばかりだ。ここで踏み止まらなければ、致命的な状況になりかねない。だからこそ、確実にチャンスを作り、ゴールをこじ開けられるチームに変化していくことが強く求められる。
「今は流れから点を取れてないっていうところで、成功体験がみんなの中にないんで、自信になりきってないのかなと。そこは試合重ねて、そのチャレンジしていくしかないのかなと思います」と語気を強めるのはベテランの土居聖真だ。
2010年代から在籍し、小笠原満男(鹿島アカデミー・アドバイザー)や本山雅志(鹿島アカデミースカウト)、遠藤康(仙台)らと共闘し、タイトルを取れるチームの一員だった彼は当時と今の違いをこう語っていた。
「僕と(柴崎)岳の例で言うと、ホントに話さなくても、見てなくても、パスが来るというのがある。満男さんだったり、ヤス君だったりもそうでしたけど、『こいつだったらこう動いてくれる』『こいつならここに出してくれる』っていう信頼関係があったと思う。それがやっぱり同じ絵を描けてたっていうことなんだと思います。だからこそ、今のチームでももっと密に信頼関係築いていかないといけない。プライベートとかじゃなくて、サッカー面で積み重ねていかなきゃいけないのかなと感じます」
■3試合連続で異なるトップ下
今季の鹿島攻撃陣を見ると、絶対的エースの鈴木優磨は不動だが、彼と組むトップ下が試合毎に変わっている。今回の3連戦で言えば、ジュビロ磐田戦が名古新太郎、福岡戦が土居、FC東京戦が樋口雄太と全て異なっている。
ポポヴィッチ監督には「毎回メンバーを変えて攻撃に変化をもたらしたい」という思惑があるのだろうが、人が変われば連携やコンビネーションも違ってくる。土居がかつての鹿島で感じていた「阿吽の呼吸」は生まれにくくなってしまうのだ。
ボランチに関してもタテパスを思うように入れられないという課題がある。ここ3試合は知念慶と佐野海舟のコンビだが、彼らは守備のバランスはいいが、攻撃の違いを作るようなプレーはやはり苦手だ。むしろ土居が下がった方がいいボールが供給される。彼らと鈴木優磨、そして今はサイドで起用されているチャヴリッチらとの関係性を研ぎ澄ませていくことが、得点力不足解消へのカギになってくるのではないか。
「今は結果が出てないですけど、悲観する必要はないと思いますし、ずっとチャレンジするだけなんで。『鹿島は今年も常勝にはなれないのかな』と思われてもしょうがないですし、それはみんなも思うことでしょうけど、やってる僕らは負けを引きずってもしょうがない。監督も『下を向かずにやっていくぞ』って試合後のミーティングでも言ってくれたんで、それにしっかり乗っかって、下向かずに進んでいくだけかなと思います。
とにかく今の僕らに必要なのは成功体験。それさえあれば絶対によくなる。僕はそう信じています」
■京都戦までの準備期間
年長者の土居が語気を強めるように、今の鹿島に必要なのは勝利という結果に他ならない。鈴木優磨、あるいは別の選手に流れの中からゴールが生まれ、1つ勝つことができれば、この停滞感は払拭できる。今はチーム全体がそういった前向きなマインドを持っている。そこは明るい材料と言っていい。
4月13日の次節・京都サンガ戦までは1週間の準備期間がある。これをどう有効活用していくかが重要だ。主軸メンバー固定が顕著なポポヴィッチ監督にしてみれば、疲労困憊の関川郁真、安西幸輝、濃野公人らを休ませられるのもポジティブな材料だろう。
ここでしっかりと攻守両面で組織を立て直せるか否か。今こそが今季鹿島の今後を左右する重要局面なのは間違いない。
(取材・文/元川悦子)
◆【得点力不足という最初の難局。ポポヴィッチ鹿島はなぜ点を取れないのか】(サッカー批評)