日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年6月24日月曜日

◆「それじゃダメ」鹿島アントラーズの“弱さ”を植田直通が指摘。なぜ勝てなかったのか「それができてこそ強くなる」【コラム】(フットボールチャンネル)






明治安田J1リーグ第19節、浦和レッズ対鹿島アントラーズが22日に行われ、2-2の引き分けに終わった。鹿島は2位でシーズンを折り返したが、植田直通は満足しない。2点をリードしながら引き分けたこの試合で見せた「弱さ」を認めつつ、チームが再びトップに返り咲くために必要なことを指摘している。(取材・文:元川悦子)






著者プロフィール:元川悦子

1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。


鹿島アントラーズが「完璧」だった前半


 2024シーズンの明治安田J1も折り返しの第19節を迎え、今季初昇格のFC町田ゼルビアが勝ち点39を稼ぎ、首位をキープしている。ランコ・ポポヴィッチ監督率いる新体制でスタートした鹿島アントラーズは2ポイント差の2位。昨季は19節終了時点で同29の6位に沈んでいたことを考えると、ここまでは悪くない位置につけているとも言えるだろう。

 とはいえ、彼らはもっと勝ち点を伸ばせるタイミングはあった。後半頭の時点で3点をリードしながら最終的に追いつかれた5月12日の東京ヴェルディ戦などはその筆頭。どこか守備の脆さが感じられるケースがある。

 6月22日の浦和レッズ戦もそんな試合だった。前半開始早々の3分にエース・鈴木優磨が先制点をゲット。凄まじい入りを見せると、その後も強度の高いフットボールを展開。指揮官が求める連動したハイプレスを終始、見せ続ける。そして42分には、右サイドに流れた佐野海舟の折り返しを、ペナルティエリア左の安西幸輝の下へこぼれる。安西の折り返しを鈴木優磨が中央で仕留め、2-0で折り返すことに成功したのだ。

「まさに前半を一言で表すなら『完璧』。私は長く日本にいますが、これまで(指揮を執った戦い)のベストと言えるくらいの出来。本当に誇りに思います」とポポヴィッチ監督が絶賛するほどの内容だった。


しかし…。鹿島アントラーズが見せた「弱さ」


 しかしながら、後半に入って浦和が4-3-3から4-2-3-1に布陣変更し、より縦への意識を強めてくると、鹿島は守勢を強いられる。それでも何とか跳ね返し続けていたが、77分に伊藤敦樹にディフェンスラインの裏を取られ、そこからマイナスクロスを途中出場の武田英寿が押し込まれてしまったのだ。

 さらに後半アディショナルタイムには、その武田に意表を突かれる形でFKを決められ、2-2のドロー。勝ち点3が見えていながら、2ポイントを失うという悔しい結末を余儀なくされたのだ。

「今のチームの弱さを見せてしまったかなと。リードしている展開で、無失点で終えられるのがいい時のチーム。それができなかったことにはすごく責任を感じてます」

 守備の要・植田直通は苦渋の表情を浮かべた。2-0から2-2にされるというのは、鹿島のDFとして「あってはいけないこと」。そう感じているから悔恨の念を口にしたのだ。

 確かに常勝軍団の伝統は「1-0でしぶとく勝ち切る」という戦い方だ。かつて秋田豊、大岩剛、中田浩二、岩政大樹、昌子源と、日本屈指のDFが最終ラインに陣取っていたどの時代も、鉄壁のディフェンスで敵を跳ね返し1点を守り続けてきた。2013年に加入した植田も鹿島らしさを肌で感じ、それを実践しなければいけないと胸に刻んできたはずだ。

 2018年夏にセルクル・ブルージュへ赴き、ニームを経て、昨年頭に古巣復帰してからはなおさら「伝統を守るのは自分」という意識を強めたはず。同じタイミングで戻ってきた昌子が途中から試合に出られなくなったこともあり、責任感の強い男は「自分が全部守って無失点の戦いをしなければいけない」と自らを鼓舞し続けたに違いない。


「去年と違うのは…」「それじゃダメだと思う」


 そして迎えた今季。昌子が町田へ移籍し、センターバック(CB)が自分と関川郁万、若手の津久井佳祐の3人しかいないという変則的陣容になったことで、植田の自覚は一段と強まった。実際、前半戦はほぼ出ずっぱり。累積警告やケガは絶対に許されない状況の中、ここまでフル稼働し続けてきた。

 そのうえで、高いパフォーマンスを発揮し、自らも3得点を挙げているのは称賛されるべきこと。だが、総失点数は22と、昨季の19試合終了時点の18より多くなってしまっている。総得点が同24から33へと大幅に増えているからこそ、「自分が守り切れていれば…」という不完全燃焼感が色濃く残っているのだろう。

「去年と違うのは得点力の部分。点が取れているのは前に枚数をかけいてるからでもある。去年なんかは『後ろに引いて守って無失点』っていうのはすごく多かったですけど、それじゃダメだと僕は思う。枚数かけながら攻めつつ、無失点で終える試合をもっと増やさないといけない。それができるようになってこそ、このチームは強くなるかなと僕は思うんです。

 今の課題は無失点にすること。自分がその責任を感じながらやらなきゃいけない。なんだかんだ言って自分次第かなと。自分が全部止めればいいと思うし、統率できれば止められる。まあ自分の力不足ですね」と彼は自らを鼓舞するように語ったのだ。

 攻撃リーダーの鈴木優磨も「浦和戦の後半は『ペナの前で守ればいいや』という考えになって、後ろに重たくなっていた」と指摘する。「それが鹿島の伝統でありつつも、やっぱりもっともっと前から行って、ハイラインを引くこともできるようにならないといけない」とも提言していた。

 そのラインコントロールを的確にやっていくのは、まさに植田の役目。後ろに引き込んで跳ね返すだけでは、ヴェルディ戦や浦和戦のような展開が再び起きないとも限らない。6月26日のガンバ大阪戦から始まる後半戦では同じ過ちを絶対に繰り返してはいけないのだ。

 植田は後半戦に闘志を燃やしている。


「2位に誰も満足していない」


「今の攻撃陣はたぶん『1点じゃ怖いな』と思ってるだろうし、そう思わせてしまっている自分たちにも責任がある。そう思わせないためにも、『1点取ったら問題ない』と安心させられる守備を作り上げていきたいですね。

 試合に出続けているけど、僕自身は全然疲れてないし、どれだけ連戦しようが全く問題はない。チームの力になれるようにしっかりいい準備をしていきたいと思ってます。

 2位という結果は誰も満足してないし、このチームがいるべきポジションは1位だけなんで」

 6月最終週のガンバ大阪、ヴィッセル神戸との2連戦は今季の鹿島を大きく左右する重要な局面だ。ここを無失点で乗り切れれば、チーム全体に弾みがつくだろう。植田は鈴木優磨の指摘を受けて、ハイプレス・ハイラインの守備とブロックを敷く守備をどう使い分けていくのか。本人が言うように、ここからの鹿島の守りは彼次第なのかもしれない。

 偉大なレジェンドたちを超えるべく、彼にはタイトル獲得請負人として異彩を放ってほしいもの。鹿島が2016年以来のリーグタイトルを手にしたいと思うなら、植田のさらなる成長が欠かせない。

(取材・文:元川悦子)




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