日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年8月9日金曜日

◆【中断明け初戦で鳥栖に3-0。町田に3差と肉薄した鹿島の今】(サッカー批評)






『頼む』っていうところで全部、思い通りにしてくれるんで、衝撃の連続です。そういう人と一緒にやれてるのはいい財産になっているのかなと思います


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【中断明け初戦で鳥栖に3-0。町田に3差と肉薄した鹿島の今(1)】「右SBが7点はなかなかできない」と、三竿も感心する濃野の高度な得点力……得点のための“サポート体制”も(サッカー批評)

【中断明け初戦で鳥栖に3-0。町田に3差と肉薄した鹿島の今(2)】夏場の省エネに適した柴崎・三竿コンビ。知念と樋口含め、ボランチの複数選択肢を今後にどう生かすのか(サッカー批評)





「右SBが7点はなかなかできない」と、三竿も感心する濃野の高度な得点力……得点のための“サポート体制”も


 約2週間の中断期間に入っていたJ1が8月7日に再開。24試合終了時点で3位につけていた鹿島アントラーズは降格圏に沈むサガン鳥栖をホームに迎えた。

 7月に垣田裕暉(柏)、松村優太(東京V)、土居聖真(山形)の3人が移籍し、鈴木優磨に続く得点源のチャヴリッチが長期離脱。知念慶も出場停止と、戦力的な手薄感が不安視された鹿島。それでも「この1週間で守備のスライドのところは(ランコ・ポポヴィッチ)監督から口酸っぱく言われた。スライドをマメにやって数的優位を作ることはしっかり練習した」と右サイドバック(SB)の濃野公人が話すように、中断前の総失点30という守備の改善を図り、重要な一戦に挑んだ。

 鳥栖がボールを大事につないでくるチームというのを認識したうえで、相手に持たせながらも締めるところは締めるという戦い方を選択した鹿島。今季11ゴールのマルセロ・ヒアンには植田直通と関川郁万がガッチリとマークに行き、打開力のある横山歩夢には濃野と三竿健斗、あるいは師岡柊生が人数をかけて止めるという形が徹底されていた。

 守りでリズムをつかむ中、彼らは前半18分に先制点を奪う。関川のサイドチェンジに濃野が反応。師岡とワンツーを仕掛けたが、相手に引っかけられ、失いかけた。そこで柴崎岳が力強くボール奪取。これを濃野がペナルティエリア外から決め切り、チーム全体に勢いが生まれたのだ。


■際立った得点力


「岳君が球際で勝って、僕のところにボールをこぼしてくれたのが一番大きかった。あとは自分の思い切りの良さが出たゴールだったかなと。(鈴木)優磨君が動き出しているのも見えたけど、クロスを上げるよりシュートを振った方が可能性があると思った。自分としても1本目だったんで、思い切り振り抜こうという気持ちを出せてよかったです」と今季7ゴール目を挙げた濃野は笑顔を見せた。

 濃野の目覚ましい働きはこの一撃だけではなかった。23分に再び関川のロングフィードに反応してゴール前へ突き進み、後半に仲間隼斗の2点目が入った後には、三竿の浮き球のボールに名古新太郎が反応し、最終的に濃野が逆サイドに入って惜しいシュートを放つという決定機も作った。

 もともと関西学院大学の途中までFWだったとはいえ、ここまで際立った得点力を持つ右SBは滅多にいない。濃野自身は鳥栖U-15出身で、ユースに昇格できずに大津高校に進んだ経緯もあるため、「ゴールを奪って成長を示したい」という思いは強かったようだが、それを具現化してしまうところは見事だ。

「シンプルに新人だろうがベテランだろうが、SBで7点取るっていうのはなかなかできないこと」と7月に古巣復帰した三竿も感心していた。「彼が思い切り上がれるように、自分は横のサポートだったり、背中をカバーすることを意識していて、今日も守備負担を減らせるように『カットインのところは俺が狙うからタテだけやらせるな』と伝えました」と彼は年長者らしいサポートもしており、鹿島全体で鈴木優磨に次ぐ得点源に上り詰めた濃野にゴールを取らせる体制が確立されつつあるようだ。


■生かせた教訓


 それに加えて終盤にはビルドアップや守備で貢献していた安西幸輝も3点目をゲット。チャヴリッチ不在の中、複数プレーヤーが点を取って勝ち点3をゲットし、2位に浮上した鹿島。首位・町田セルビアがセレッソ大阪と0-0で引き分けたため、勝ち点差も再び3に縮まった。5~6月にも一気に首位浮上できるチャンスがありながら、自らそれをフイにしてきただけに、今回は絶対にモノにしなければいけない。

「6月の代表の中断後にかなり大敗を喫してしまった部分もあったので、今回はその教訓を生かせたと思いますし、ここから勝ち続けていかないといけない」と植田も語気を強めたが、本当にトップに立てるかどうかは11日のジュビロ磐田戦、17日の浦和レッズ戦と続く8月の戦いぶりにかかっているといっても過言ではなさそうだ。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

    
夏場の省エネに適した柴崎・三竿コンビ。知念と樋口含め、ボランチの複数選択肢を今後にどう生かすのか


 8月7日のサガン鳥栖戦を3-0で勝利し、勝ち点47の2位に浮上した鹿島アントラーズ。ランコ・ポポヴィッチ監督が「全員がやるべきことをしっかりやり切ったという意味で言えば、今シーズンで一番の試合だったのかもしれない」と手放しで喜んだ通り、濃野公人、仲間隼斗、安西幸輝という幅広いポジションの選手がゴールを奪い、課題だった守備も無失点で乗り切ったのだから、大きな手ごたえをつかんだはずだ。

 とりわけ復調が目立ったのが、柴崎岳と三竿健斗の新ボランチコンビ。今回は知念慶が出場停止で、彼らがスタートから出場したが、「すでに佐野海舟(マインツ)が移籍し、今季前半戦デュエル王の知念もいなくなると、守備強度が下がるのではないか」といった懸念要素もあったのではないか。

 確かにポゼッションと丁寧な組み立てを重視する鳥栖に序盤はボールを持たれた時間帯もあった。が、指揮官が「もしかしたら柴崎選手は彼のキャリアの中で今日ほどボールを多く奪った試合はなかったかもしれない。重要な場面でボール奪取を見せてくれた」と絶賛したように、柴崎は前半18分の濃野の先制弾のシーンでも即時奪回から好アシストを披露。チャンスをお膳立てするパスや思い切りのいいミドルシュートも放った。


■「衝撃の連続です」


「(岳君は)信じたことを全てやってくれるというか、『ボール来そうだな』ってところに出してくれるし、『この球際で勝ってほしい』っていうのを勝って、僕にボールこぼしてくれた。『頼む』っていうところで全部、思い通りにしてくれるんで、衝撃の連続です。そういう人と一緒にやれてるのはいい財産になっているのかなと思います」と濃野も柴崎の本領発揮に目を見張ったが、キャプテン・選手会長・10番が復活しつつあるのは、間違いなく朗報だ。

 7月20日のFC東京戦から古巣復帰した三竿も24日のブライトン戦では動きにキレがなく、コンディション的に今1つという印象だったが、この日は仲間の2点目につながるパス出しなど攻撃に関与する回数も増加。守りの部分でも濃野の大きなスペースをカバーするなど、彼らしい頭脳的な動きが光った。

「ブライトン戦よりも横並びになる時間はそんなになかったんじゃないかなと。お互いを見ながら、どっちかがタテに出て、どっちかがへそを押さえるっていうのができていた。後半ちょっとタテ気味になって、守備の時には名古(新太郎)と岳君で相手の2ボランチを抑えにいくという形に中で喋って変えてみたけど、それも結構うまくいっや。そうやって臨機応変に対応できたところが今日はよかった」と三竿本人も前向きに言う。


■新たな成長の原動力に


 三竿にしてみれば、東京ヴェルディから移籍していた2016年時点では、柴崎と小笠原満男(アカデミー・テクニカル・アドバイザーがボランチのお手本だったという。

「僕が鹿島1年目で試合に出れてない時に満男さんと岳君を見てイメージを膨らませていた。あれから7年8年経ってから一緒に出れて、今は嬉しさだったり、楽しさの方が強いです」とやりがいを感じつつ、プレーできている様子。それも三竿にとっては新たな成長の原動力になるはずだ。

 11日の次節・ジュビロ磐田戦からは知念も復帰するが、今後は彼ら3人をベースに対戦相手や疲労・日程などを考慮しながらコンビを変えられるようになりそうだ。加えてリスタートのキッカーとしても力を発揮できる樋口雄太もいる。彼らを臨機応変に使い分けられれば、戦い方のバリエーションも広がるはずだ。

 一部報道によれば、手薄なFWに関しては、田川亨介(ハーツ)の加入が有力視されている。新戦力が入ってすぐにフィットするかどうかは未知数だが、中盤に関しては複数の組み合わせを作れるメドがついたと言っていい。ここから終盤戦にかけての鹿島のさらなる飛躍が楽しみだ。

(取材・文/元川悦子)


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