http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/soccer/news/CK2014051802000180.html
ワールドカップ(W杯)ブラジル大会日本代表のDF内田篤人(26)=シャルケ=が17日、「脱力のススメ」を説いた。4年前の南ア大会後に欧州へ渡り、ドイツ1部リーグ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)で結果を残してきた自負がある。右太ももの故障から復調途上だが「W杯だからといって意気込むんじゃなくて、普通にやればいい」と静かに語った。
3カ月前に重傷を負い、練習に合流できぬままシーズンを終えた。本大会まで1カ月。でも、内田はどこか飄々(ひょうひょう)としていた。焦ったり、力んだりしてもおかしくないのに、ゆったりと落ち着いていた。
「W杯だからといって意気込むんじゃなくて、普通にやればいいんじゃないかと思う。そう言えるレベルでやってきた自負もあるし、CLはレベルも高かった。W杯も普通でいいと思っている」
独特な表現は決して楽観ではなく、自信と覚悟、決意の裏返し。そして、もう1つ。「4年前より責任感がある」。2月9日のリーグ戦で負傷すると、「W杯は終わった」と心が折れかけた。だが、日本での復帰ロードに転換点があった。
治療、リハビリのために通い続けた国立スポーツ科学センター(JISS)で、重傷から競技復帰を目指す他種目の選手たちの懸命な姿に心を打たれた。
「CLとかよりも、自分自身と向き合える時間だった。アスリートとしての根本的な部分。スポーツ選手って何なのかを考えるようになった」
恵まれぬ環境、光の当たらぬ場所で、けがを負ってなお、歯を食いしばってはい上がろうとする選手たちがいた。励まし、励まされ、内田自身もはい上がってきた。
「W杯で勝ちたい理由は1つだけじゃない。自分だけのためじゃない。そういう人たちのためにも」-。
(松岡祐司)