日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月7日水曜日
◆鹿島、脈々と連なる「常勝軍団」のバトン。プラチナ世代へ引き継ぐための大一番。8度目の年間王者へ描くシナリオ(フットボールチャンネル)
http://www.footballchannel.jp/2016/12/03/post188132/
2016シーズンのJ1王者を決めるJリーグチャンピオンシップ決勝第2戦が、3日19時半に埼玉スタジアムでキックオフを迎える。11月29日の第1戦では年間勝ち点1位の浦和レッズが、敵地カシマスタジアムで1‐0で先勝。10シーズンぶり2度目の年間王者獲得へ大きなアドバンテージを得たなかで、年間勝ち点3位の鹿島アントラーズが下克上を成就させる可能性はあるのか。7シーズンぶり8度目の王者獲得へ、常勝軍団が描くシナリオを追った。(取材・文:藤江直人)
昨シーズンと異なる優勝決定の方式
いい意味で開き直れる。2ゴール以上を奪ったうえで、浦和レッズに勝つ。具体的な得点数と戦い方を明確にしながら、鹿島アントラーズが敵地・埼玉スタジアムで3日に行われる決戦に臨む。
ホームのカシマスタジアムにレッズを迎えた、11月29日のJリーグチャンピオンシップ決勝第1戦。アントラーズは57分に喫したPKによる失点を取り返せないまま、0‐1で苦杯をなめた。
準決勝ではエース・金崎夢生があげた値千金の先制ゴールを死守し、敵地・等々力陸上競技場で雄叫びをあげた。ディフェンスリーダーの昌子源は、試合後にこんな言葉を残している。
「(レッズとの)第1戦はしっかりとホームのアドバンテージを生かして、アウェイゴールを与えずに勝つこと。特に何かを変えることなく、僕たちらしいサッカーを最後まで貫きたい」
昌子がアウェイゴールにこだわったのは、もちろん意味がある。サンフレッチェ広島がガンバ大阪を下し、美酒に酔った昨シーズンから優勝チームの決定方法が大きく異なっているからだ。
ホーム&アウェイ方式で争われ、2試合で勝利数が多いチームが王者となる点は変わらない。1勝1敗の場合、(1)2試合の得失点差(2)2試合におけるアウェイゴール数――の順で決まる点も然り、だ。
それでも両チームが並んだ場合、昨シーズンは(3)第2戦終了後に15分ハーフの延長戦を行う(4)PK戦――で決着をつけていたのが、今シーズンはともに廃止されたうえで(3)に次の項目が追加された。
「年間勝ち点1位チーム」
シーズンを通して最も多くの勝ち点を獲得したチームに、最終的にはアドバンテージを与える。ある意味で理にかなった方法であり、今シーズンはレッズが歴代最多タイの勝ち点74で年間1位になった。
同72で2位のフロンターレを下克上で撃破した、同59で3位のアントラーズとしては2試合をトータルで考えた場合、可能な限りネガティブな要素は取り除いておきたい。
昌子「最低限0-1のスコアを保てたのはよかった」
ゆえに「アウェイゴールを与えずに勝つ」こと、つまりは完封勝ちが必要と昌子は言及したわけだ。実際には青写真を具現化させるどころか、引き分けにすらもちこめなかったが、希望の灯は何とか紡いだ。
1点のビハインドを背負い、チーム全体がさらに攻勢に転じた33分間プラス5分間の後半アディショナルタイム。センターバックを組む元韓国代表のファン・ソッコと、昌子はこんな言葉をかけあっていた。「最低限、この1点差をキープしよう!」
前がかりになった背後を突かれ、追加点を奪われれば、第2戦を待つことなく決勝戦が終焉を迎えかねない。同点に追いつきたい思いとのはざまで、昌子は必死にリスクマネジメントを徹底した。
「負けることはもちろんよくないけど、最低限、0‐1のスコアを保てたのはよかった。後半の最後はウチがずっと攻めている状態でしたけど、カウンターで一発という点は浦和さんも強いので。
もちろんウチが同点にすればいい形となりましたけど、0‐2にされるのが一番嫌だったので。浦和さん相手だと堅い試合になるし、今日もなかなかオープンの展開にはならなかった。そのなかでホームのウチが相手をゼロに抑えることは、かなり重要な意味をもつことはわかっていた。それほどヤバい、危ないと思えるシーンもなかっただけに、非常に残念なんですけど」
3部門すべてタイ記録も色あせないレッズの年間成績
今シーズンの頂点を争う戦いは、先勝したレッズが優位に立った。第2戦で勝てばもちろん、引き分けでも2試合で勝利数がアントラーズを上回るために、10シーズンぶり2度目のJ1王者の称号を手にする。
さらに敗れたとしても、スコアが0‐1ならばレッズに凱歌があがる。(1)の2試合の得失点差、(2)の2試合におけるアウェイゴール数がすべて並び、年間勝ち点1位のアドバンテージを得るからだ。
ゆえに冒頭の部分で「2ゴール以上を奪ったうえで勝つ」と、アントラーズが逆転で7シーズンぶり、他のクラブの追随を許さない8度目のJ1王者を勝ち取るための条件を記した。
たとえば2‐0のスコアで勝った場合は(1)を、2‐1ならば(2)のそれぞれ条件を満たす。実際、埼玉スタジアムで6月11日に行われたファーストステージ第15節は、鹿島が2‐0で快勝している。
もっとも、このときのレッズはPK戦の末にFCソウルに屈し、ACL制覇の目標が決勝トーナメント1回戦で砕け散った直後。メンタル的にどん底で、続くガンバ大阪、サンフレッチェ広島戦でも黒星を喫した。
リーグ戦で喫したまさかの3連敗ともに、レッズはファーストステージの優勝争いから脱落。敵地で快勝したレッズ戦を含めて怒涛の6連勝でフィニッシュしたアントラーズが、逆転で優勝を果たしている。
もっとも、セカンドステージ制覇とともに刻まれたレッズの鮮やかなV字回復ぶりを見れば、約半年前の対戦結果をそのまま今回に当てはめることは、やや無理があると言っていいだろう。横浜F・マリノスと1‐1で引き分けたセカンドステージ最終節。残り5分強を守り切っていれば年間総合勝ち点76、年間勝利数24とJリーグ記録をそろって更新することができた。
加えて、もしマリノスを零封して総失点27のままならば、J1が18チーム体制となった2005シーズン以降の年間勝ち点1位チームでは、最も少ない数字を記録するところだった。
最終的に3部門ですべてタイ記録に終わったが、だからといって今シーズンのレッズが歩んだ軌跡が色褪せることはない。むしろマリノス戦で引き分けた悔しさを、チャンピオンシップ決勝への糧にしてきた。
復帰した背番号「10」
第1戦で見せた球際に激しい守備は、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が好んで口にする『デュエル』が、和訳すれば「決闘」を意味するフランス語が存分に具現化されたものでもあった。
最終ラインを形成する槙野智章や遠藤航も大きな手応えをつかんだところへ、チケットが前売り段階で完売。3日は約5万9000人が詰めかけて、真っ赤に染まるスタンドが堅守をさらに後押しする。
アントラーズにとっては不利な条件ばかりが並んでいるが、昌子を中心に最少失点でしのぎ切った粘り強い守備とともに、第2戦へ向けて明るい材料を残してもいる。痛恨の失点から5分後の62分。右足親指の付け根を痛めて戦列を離れていたMF柴崎岳が、MF中村充孝に代わって途中出場。38日ぶりに公式戦のピッチに立った「10」番は、2分後にいきなり魅せる。
左サイドでMF永木亮太があげた浮き球の縦パスを、右サイドから回ってきたMF遠藤康が胸で後方へ落としたところに走り込み、バランスを崩すことなく右足を一閃。的確にボールをとらえる。
強烈なダイレクトボレーは左側ゴールネットの外側をかすめてしまう。しかし、アディショナルタイムの後半47分には波状攻撃から、最後は左サイドから絶妙のクロスをゴール前へ供給している。
「点を取って、流れを変えたいと思っていた。シュートまでいけたシーンが前半なかったので、しっかりとゴール前まで入って仕事をしたいと思ってもいた。結果がついてこなかったのは残念ですけど、ホーム&アウェイで挽回できるチャンスがまだある。やるべきことをしっかり整理して、次の試合に備えたい」
前半はまさかのゼロに終わったアントラーズのシュート数は、一転して後半は11本を数えた。柴崎自身は淡々とテレビのインタビューに答えたが、金崎と並ぶ最多タイの3本の
シュートを放っている。
冷静な立ち居振る舞いとは対照的に、熱い思いを胸に秘めて攻撃陣を活性化させたのだろう。ピッチで躍動する司令塔に、石井正忠監督も「失点した後の戦いが理想的」と柴崎の復活に手応えをつかんでいる。
常勝軍団の系譜を受け継ぐために重要な一戦
「非常にいい状態になってきている。試合には負けてしまったが、それ(柴崎の復帰)はいい材料になったと思う。自分たちからボールを奪いにいく形を考えつつ、自分たちから相手陣内でボールを動かすことが重要になる。そのために今日は交代の選手を入れたわけですが、そういった選手が要望通りの動きをしてくれたことで、次への期待が高まったと思う」
第1戦ではキャプテンの小笠原満男と永木が組んだボランチが機能した。球際の攻防を制して相手ボールを奪い、前へ運ぶという仕事で、2人は第2戦でも人体にたとえれば左右の「肺」を担うだろう。
そして、柴崎が先発に復帰して「心臓」を担うとすれば慣れ親しんだボランチではなく、途中出場した第1戦と同じく2列目の左サイドとなる。その攻撃力で、相手により重圧をかける意味でも理にかなう。
「今日よりもさらに攻撃的に行かなきゃいけないし、でもそのなかで失点してしまえば絶望的になる。難しいところにはなりますけど、それでも絶対に2点以上取って勝ちたい」
第2戦の戦い方に言及したのはFW土居聖真だ。アントラーズ最大のチャンスだった後半6分の遠藤のシュートを1本の縦パスで演出し、後半アディショナルタイムには前出の柴崎のクロスをヘディングで巧みに流すも、惜しくもシュートをポストの右に外して天を仰いだ男も静かに腕をぶす。
リスクを極限まで冒し続けたうえで、リスクマネジメントをも常に共存させる。一見すると二律背反に映る攻守両面の仕事を、90分間を通して完遂させる以外に逆転優勝への道は開けない。
昌子も土居も、そして柴崎も、くしくもJリーグがスタートする前年の1992年に産声をあげた。ともに入団6シーズン目で、柴崎と土居は5月にすでに、昌子も来週に24歳になる。
年齢的にも若手から中堅の域に達しようとしているプラチナ世代にとっても、常勝軍団アントラーズに脈打つ伝統のバトンを託される過程で極めて重要な意味をもつ大一番は、19時半にキックオフを迎える。
(取材・文:藤江直人)
【了】
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