日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年5月4日木曜日
◆「お前、ここから逃げるのかよ」“鹿島の鬼”小笠原が若手にかける「励みの言葉」(報知)
鹿島MF小笠原満男が次節C大阪戦(4月8日・カシマ)で、J1通算500試合出場を達成する。1998年の同期加入のGK曽ケ端準とともに出場試合数を499とし、J1リーグ史上7人目の快挙達成に王手を掛けている。4月5日で38歳になった小笠原は「数字に興味があるのは記者くらいじゃないの? 興味ないよ」と笑い飛ばし、偉業を前に「カズさん(横浜C)に比べたら、まだまだ子供みたいなもの。どれだけ試合に出たかより、どれだけ勝ったかが大事」とベテランらしく本質を突いてくる。
出場試合のチーム成績は、262勝89分け148敗で勝率・525。引き分けが日常的にあるサッカーでは驚くべき数字といえる。国内主要3大会で獲得したタイトル数はJリーグ7回、ナビスコ杯5回、天皇杯4回の合計16冠。曽ケ端と並んでJリーガー最多を誇る。それでも「1つタイトルを取ったら、また次も勝ちたくなる。満足することはない」と次の1試合を見つめ「どの大会が重要だとか、どの試合が重要だとか、考えたこともない。目の前の試合に勝つ。それだけ」と姿勢がぶれることはない。今季でプロ入り20年目。その繰り返しが、他の追随を許さない数字につながっているのだろう。
屈することを許せない性分。試合前に風邪を引いた時は、レモン100個分のビタミンCが含まれる飲料に、わざわざレモン1個を持って来て果汁を搾り、飲み干した。2008年10月に左ひざ十字じん帯断裂で手術を受け、全治6か月と診断された際は「復帰スピードの世界記録に挑戦する」「全治は早めるためにある」と言って、術後148日でピッチに戻った。
「勝負の鬼」への取材は、とりわけ敗戦後、困難を極める。苦渋に満ちた表情で取材エリアに現れ、何度か会釈をして無言で通り過ぎるのが恒例。鹿島が敗れた試合後、しっかりと口を開いたのは2度しか知らない。2009年6月24日、ACL決勝トーナメント1回戦のFCソウル戦(カシマ)。警告2枚で退場し、チームはPK戦で敗れた。アジア初制覇への道が絶たれ「試合を台無しにして申し訳ない。みんなに謝った」と絞り出した。首から白いタオルをぶら下げ、目は真っ赤に充血していた。
そして、2016年7月19日のJリーグ・松本戦(松本)。トニーニョ・セレーゾ監督が解任された試合だった。取材エリアではなく、VIP用の出入り口を出てきた小笠原にバッタリ。「(チーム用の)バスどこ?」と聞かれ、まだ運転手がいないと伝えると、厳しい口調で話し始めた。「監督は悪くないよ。やるのは選手だから。鹿島は誰が出ても勝たなきゃいけない。試合に出ている選手に、その自覚と自信がない」と訴え「今の若い子は上から厳しく言われたらシュンとしちゃうから、うまく書いといて」と付け加えた。
同期のMF本山雅志(北九州)が移籍する前には、オフにもかかわらずクラブハウスに顔を出した。新天地へ向け、自主トレをする本山と一緒に練習するためだった。「もうすぐモト(本山)と一緒にボールを蹴れなくなっちゃうからね。長くサッカーを一緒にしていたいから」。事実上の契約満了でクラブを去る若手選手には「お前、ここから逃げるのかよ」と声を掛ける。「頑張れよ」とは言わない。一見ぶっきらぼうだが、落ち込んでいる若手には「励みの言葉」になると知っているからだ。鹿島のファン感謝イベントの終了後には、地元の東北から出店した店舗の片づけを1時間かけて手伝う姿を見た。
厳しさと優しさが同居する人柄。DF内田篤人(シャルケ04)ら後輩からは「ああいう男になりたい」という声が絶えない。DF昌子源は「代表やチームで、いろいろなキャプテンと一緒にやってきた。満男さんが『右を向け』と言えば、チームのみんなが右を向く。鹿島どころか、Jリーグのキャプテンみたいに(大きさを)感じる」と明かす。
「野生児」を自認していたが、35歳を迎えた頃から「必要ない」と言っていたマッサージを受けるようになった。年齢のせいか視力も落ちて、コンタクトレンズに頼るようになった。「ベテランと言われるのは好きじゃない。年でサッカーするわけじゃない」。ここでも負けん気全開。14年ブラジルW杯後に日本代表引退を示唆した内田には「俺もこの年(35歳)だけど、まだ代表を目指しているんだから、お前はそこで待っていろ。何も言わずに待ってればいい。もう一回、一緒のチームでやりたいからさ」と熱いメッセージを送っている。
小笠原は若手の頃、日本代表・ジーコ監督の部屋を訪ね「試合に出るためにはどうしたらいいか」と聞いた。元ブラジル代表FWからの答えは「試合に出たかったら練習から一番になれ。ダッシュでも何でも一番を目指せ」だった。不惑を前に、ある程度マイペース調整を許されるようになった今でもジーコの教えを守り、体に多少の痛みがあっても「ポジションを奪われたくない」という一心で全体練習に参加し続けている。
気の遠くなるような努力を重ねて迎える500試合目。小笠原に指摘されるまでもなく、私は「数字に興味を持つ」のが仕事の記者だから、節目の試合で背番号40番を追い掛けるだろう。そして、目に飛び込んでくる姿も想像できる。「記念日」なんてみじんも感じさせない勝負の鬼が、ピッチを走り回っているはずだ。(記者コラム・内田 知宏)
http://www.hochi.co.jp/soccer/column/20170405-OHT1T50173.html
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