
日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年8月11日金曜日
◆鹿島を支えるふたりのOBコーチ、柳沢敦と羽田憲司のいま。彼らの追求する指導者像とは?【前編】(サッカーダイジェスト)
「最初は何をしようと考えながらウロチョロしている感じでした」(柳沢)
鹿島アントラーズのコーチ陣には、必ず日本人が就任している。
「ブラジル人監督と契約する時には、必ず、日本人をコーチとするよう要請します。というか、その条件が飲めない監督とは契約はしない」
長年、強化を担ってきた鈴木満はそう語り、「そうやって日本人指導者を育て、準備してきた」と話す。
2015年シーズン途中に、トニーニョ・セレーゾ監督が解任され、コーチだった石井正忠が監督に就任。リーグ王者、CWC準優勝、天皇杯優勝と結果を残した。しかし今季、ACLでベスト16での敗退が決まると、石井に代わり大岩剛コーチが監督に昇格。リーグ戦8試合で7勝1分けと成績が一気に回復している。そんなトップチームのコーチをふたりのOBが務めている。日本を代表するストライカーとして君臨した柳沢敦と、将来を嘱望されながら負傷に悩まされたセンターバックの羽田憲司だ。
「鹿島へ戻ってきて、コーチの仕事を始めて、今年で3シーズン目。監督交代が二度あり、優勝も経験できた。本当に激動の2年半でした。指導者というものがまだまだ分かっていないなかで、チームの良い時と悪い時に接して、自分がどういうことをしなくちゃいけないかを考えた。力不足、未熟さを痛感する出来事がたくさんあります」
そう語る柳沢は、1996年に鹿島でプロデビューし、その後イタリアへ移籍、2006年に鹿島に復帰するが、2008年には京都へ移籍し、2014年に仙台で現役を引退。翌2015年に鹿島のトップチームのコーチに就任したが、当時は石井、大岩に続く3人目のコーチだった。
「現役引退して、すぐにトップチームのコーチに就任。いきなり上手くできるなんて思っていなかったから、気負いもなかった。石井さんや(大岩)剛さんのもとで、いろいろと勉強し、学ぼうと。もちろん、見て盗むという感じですけど、見ているだけじゃ仕事はない。やっぱり自分で探さなくちゃいけないから、最初は、何をしようと考えながらウロチョロしているような感じでした」
「いつか鹿島で仕事がしたいという思いがあった」(羽田)
柳沢から遅れること1年、2016年に古巣へ復帰を果たしたのが羽田だった。2000年に市立船橋高から加入、天性の守備センスとリーダーシップが高く評価され、2001年ワールドユース(現U-20ワールドカップ)ではキャプテンを務めている。しかし、2001年夏以降、原因不明の足の痛みと戦い、幾度の手術とリハビリを4年以上も行なうこととなる。
2007年にはセレッソ大阪へ移籍。2009年にJ1昇格を果たし、2010年にはリーグ3位でACL出場権を獲得。香川真司をはじめ多くの選手に慕われるキャプテンだった。そして、2012年に神戸で現役を引退すると、翌2013年からセレッソ大阪で指導者としてのキャリアをスタートさせる。
「セレッソでは、スクールから始まり、ユース、トップのコーチと短期間ではあったけれど、いろいろな現場で仕事をさせてもらった。様々な勉強をできているという実感があるなかで、鹿島からのオファーを頂いた。どうするべきか、本当に悩みました。鹿島のトップチームのコーチが自分に務まるのかという風にも思ったし、なによりセレッソを離れて良いのかという葛藤もありました。それでも、鹿島からのオファーはこのチャンスを逃せば、二度とないだろうし、いつか鹿島で仕事がしたいという思いもあったので。送り出してくれたセレッソの方々には今でも強く感謝しています」
現役時代に苦労した羽田は、選手の気持ちをより深く理解できる指導者になるだろうという声もあるが、羽田はそれを否定する。
「もちろん僕自身、長く負傷に悩まされたから、同じような立場の選手の気持ちを分かる部分もあるのかもしれないけれど、性格も育った環境も違うんだから、同じ気持ちを持てるわけがない。現役時代の経験がコーチをするうえで、良い影響につながればそれは素晴らしいことだけど、そんなシンプルなものでもないと思うんです」
そして、柳沢も似たような話をした。
「元選手だから、選手の気持ちを理解できるというわけじゃないんです。やっぱり、人それぞれに考え方があるから。僕がこうすべきだと感じても、それを押し付けてもうまくいかない。プロになるくらいなんだから、選手それぞれが強い個性や考え方を持っている。そこを尊重しながら、僕の考え方を伝えていく。どんなふうに伝えれば、選手たちにきちんと届くのか、その難しさをいつも感じているけれど、そこが最も大切なことだから」
「ピッチ外ではミツさん、ソガさん。ピッチ内ではミツ、ソガと呼んでいます」(羽田)
柳沢40歳、羽田35歳と選手たちとの年齢は近い。しかし、コーチと選手の間には、太くて明確な線が引かれているとふたりは言った。
「チームには小笠原選手や曽ケ端選手という、現役時代、先輩だった選手もいますが、まったくそこは気になりません。ピッチ外ではミツさん、ソガさんと呼びますが、ピッチ内では“ミツ”、“ソガ”と呼んでいます。年齢的に二人が上ですが、選手とコーチという立場、仕事が別ですから。そこは明確にしています」(羽田)
「僕がコーチに就任した時、最初にトニーニョ(・セレーゾ監督)から言われたのが、選手との間にしっかりと一線を置かなくちゃいけないということでした。確かに、僕らコーチは監督と比べたら、選手と近い存在です。だから、声もかけやすいし、話しやすいのかもしれない。だけど、選手同士ではないという気持ちはいつも忘れずに持っています」(柳沢)
「選手と密にコミュニケーションを取ることを意識しているけれど、厳しさも持って、接していかなくちゃいけないと思っています。練習前の遊びのボール回しを選手の中に入ってやることもあるけれど、そういう時でもメリハリというのを考えています。あまり楽しみすぎて練習への切り替えが上手くできず、練習の入りが悪くなったら元も子もないので」(羽田)
大岩新体制になり、練習のアップメニューを羽田が担当する機会が増えた。そして、ポジション別練習でも柳沢が攻撃陣を、羽田が守備陣を担当することも多いという。
「新しいメニューを監督に提案すると、『いいんじゃないか? やってみよう』と受け入れてくれます。そうやって、新しいものを取り入れようとする監督のもとで、やはり練習メニューのバリエーションをもっともっと増やしていかないくちゃいけない」と羽田が話す。
現役時代のキャリア、経験は、指導者にとってのひとつの個性になるだろう。しかし、柳沢や羽田の言葉から感じるのは、選手時代の自身に囚われることなく、ひとりの若い指導者として、選手と向きあおうとする誠実さや実直さだ。
「何気ない細かいプレーや態度を見逃すことなく」(柳沢)
「とにかく、しっかりと選手たちを見ていきたい。何気ない細かいプレーや態度を見逃すことなく、できるだけ詳細に見たいと努力しています。今、監督から『FWのことは任せる』と言ってもらい、プレーだけでなく、メンタル面でも気を配っています。だから、自分が発した言葉を意識しながら、選手がプレーし、結果を出してくれた時は嬉しいですね。受け止めてくれたんだなと。話している時には『ちゃんと伝わったかな』と思うこともありますからね」と柳沢が小さく笑う。
プロ選手特有のプライド。選手の性格、個性を受け止めながら、言葉や対応を考える。そういう繊細な作業が彼らコーチの日常のほとんどを占めている。
「選手を見る」というのは、マネジメントの重要なポイントだと羽田も語っている。「きちんと見てもらえている」という手応えが、公平な選手間競争の基本になることは、大岩監督の、そして鹿島のチーム強化における哲学のひとつだ。
次回は、強豪であり続けるクラブのコーチとしての矜持について、ふたりに訊く。
取材・文:寺野典子(フリーライター)
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