日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年10月15日日曜日

◆鹿島で丸刈り流行、発端は曽ヶ端準。 あらゆるエピソードが男気だらけ。(Number)


鹿島で丸刈り流行、発端は曽ヶ端準。あらゆるエピソードが男気だらけ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

 鹿島アントラーズで“丸刈り”になる選手が続出している。

 西大伍を皮切りに遠藤康、鈴木優磨、梅鉢貴秀が頭を丸めた。曽ヶ端準の髪型から影響され「ソガさん、リスペクト」という言葉を西や鈴木が残すも、「本当の丸刈りではない。ソガさんには失礼」という声も飛ぶ。よく見ると、丸刈り頭にラインを入れたり、場所によって長さを変えたり。たしかに純粋な丸刈りとは言えない。

 曽ヶ端は、プロ入りから髪の色は変われど髪型は変わらないイメージがある。いつから今の髪型になったのだろうか。本人に聞いてみた。

「いつからだったか覚えてないですね。ユースのときは短かったけど、坊主ではなかった。小さいときはスポーツ刈りみたいな感じ。間違いなくプロに入ってからですね。サポーターの皆さんの方が詳しいんじゃないですか?」

 なるほど。やはりイメージ通り“ベテラン丸刈り”選手だ。チームメイトが感じるリスペクト。その源流はどこにあるのだろう。

「ソガさんがいるだけで安心感がある」

 曽ヶ端は茨城県鹿嶋市出身、ユースからアントラーズで育った。アントラーズ一筋20年、これまでの獲得タイトル数は16。GKというポジションゆえになかなか表に出る機会は少ないが、まさに“ミスターアントラーズ”と言える存在だ。

 同期に小笠原満男、中田浩二、本山雅志、山口武士、中村祥朗がいて、当時「アントラーズのV6」とも呼ばれた。今年で20年目を迎えるが、変わらずゴールを守り続けている。

「最近、俺までいじられるようになったよ」とチーム内での役割の変化に苦笑いを浮かべるも、実力は今も健在だ。「ソガさんがいるだけで安心感がある」とは、今や日本代表に選出され続ける昌子源や植田直通の言葉で、チームに安定感を与えている。

 今季はACLを制した経験もある実力の持ち主、韓国代表GKクォン・スンテが加入してもなお、リーグ戦500試合出場を達成し、天皇杯では歴代1位の釜本邦茂の59試合出場という記録に並んだ。連続フルタイム出場試合数244というJリーグ記録も持つ。38歳となった今も、名実ともにリーグ屈指のGKであり続けている。

若いときはイライラしていた。しかし今は……。

「どちらかというと短気な方だから」

 今やどんな場面でもどっしりとゴール前で構え、チームに安心感を与える曽ヶ端だが、若い頃はそうではなかったという。

「若いときはイライラすることが多かった。得点が入らなかったり、味方のミスで失点したときなんかは思い切り態度に表すこともありました。でも、今はなくなった。冷静でいないと、判断を誤って失点やミスにつながることがありますからね。何試合も成功や失敗をたくさん経験して、自分の課題を改善しようと意識し続けてきたからこそ、克服できたんだと思います」

 すべては勝利のために。常に冷静にチームを見ることで、プレーはもちろんチームメイトとの関係にも余裕が生まれた。改善した課題が、今季より良い形で表れている。

正GKの座を争うスンテとも良好な関係を築く人間力。

 6月17日、J1第15節札幌戦での出来事だった。大岩剛監督就任以来、初のホームゲームでもあったこの試合。W杯最終予選で韓国代表に招集されていたスンテは、家庭の事情でチームへの合流が遅れていた。曽ヶ端は、この試合でリーグ戦6試合ぶりの先発出場。これまでスタメンの座を譲っていただけに、ポジションを奪うまたとないチャンスとも言える状況だった。

 にも関わらず、試合前にスタジアム入りしたスンテは曽ヶ端のウォームアップを手伝う。曽ヶ端も声をかける。「一緒に戦おう」。いつも通り、お互い笑顔で握手した。

 GK同士の関係は、本来とても繊細なものだ。正GKの座は1つしかない。GK同士がピッチ外では口も利かないという話を聞くこともあるほど。しかし2人の間には、それとは違う空気が流れている。

「僕もスンテも、お互いにいろいろな経験をしてきたからこそ、今の関係性が築けているんだと思います。若いときだったら、もっとギスギスしていたかもしれないですけどね」

 ニヤリと浮かべた表情が、2人の関係性を物語る。

 スンテも「僕自身、ソガさんと良い競争をしながら、もっと一緒にプレーしたい。選手人生を振り返ったとき、ソガさんと出会えてよかったと言える関係になりたい」と言う。

 いつも通り、チームの勝利のために。2人の間には、ベテランならではのあたたかい空気が流れている。

ミスした試合こそ、取材に真摯に答える。

 GKとは難しいポジションである。簡単なプレーも難しいプレーも、すべてが失点につながる可能性がある。さらに、どれだけファインプレーを繰り返しても、90分のうち1つでもミスをして失点すれば、負けに直結してしまう。GKには、常にミスが許されないプレッシャーとの戦いがあるのだ。

 それでもやっぱり、ミスというのは起こってしまうもの。曽ヶ端は、自らのミスと真摯に向き合う男である。それは日々取材をしていて感じることだ。基本姿勢として「ミスのあった試合では(コメントを)聞きに来てほしい」と言う。なかなかできることではない。

言い訳一切なし、年下の昌子にも謝罪。

 9月23日、J1第27節G大阪戦。開始7分、いきなり先制点を叩き込まれた。相手のゴールキックから右サイドのペナルティエリア付近でボールを収めたFWファン・ウィジョが、昌子を背負いながらも鋭い反転からミドルシュート。曽ヶ端の反応は完全に遅れた。明らかな判断ミスだった。試合後に話を聞いてみた。

「中の状況を見た瞬間に打たれました。苦しくしてしまったのはあの1点。みんなで試合の入り方を話していた中で、ああいうプレーをしてしまったのは良くない。自分のミスです」

 言い訳は一切なし。

「試合後に声をかけてもらったけど、僕にも責任があるので申し訳ない」と昌子が教えてくれたように、チームメイトにも謝罪した。それでも前を見据えてしっかりと、そして冷静に失点を振り返る。

「セオリーとして、キーパーが守るべきシュートでした。絶対にやられてはいけない形。タイミングが予想と違っていたけれど、ドライブをかけたシュートを逆サイドに決められたわけではなく、ニアサイド。抑えないといけないコースでした。本当にチームに助けられました」

 後半アディショナルタイムに植田の決勝弾が生まれた劇的な試合展開の裏で、興奮とは対極のホッとした表情が、そこにはあった。

やっぱり「ソガさん、リスペクト」。

 若手がよく興奮して話すことがある。レストランで食事をした帰り、店員から「曽ヶ端さんが払ってくれました」と言葉をかけられることがあるという。若手が別の席にいるのを見かけると、黙って会計をして帰る。家族と食事中の曽ヶ端へあいさつをしたときはもちろん、レストランにいたことに気がつかなかったときもある。「かっこいいですよね」。何人もの若手が、うれしそうに語っていた。

 今季もスンテの声掛けで、シーズン初めにGK陣で食事会が開催された。その際も支払いは曽ヶ端だったという。本人に聞けば「年が上ですから」と何でもない話になる。ちょっとしたことが自然とできる。やってもらった方は、それだけで心が弾むものだ。

 これだけ曽ヶ端のピッチ内外でのストーリーを聞くと、西や鈴木の言葉も、軽いものではないような気がしてくる。ただのいじりではなく、本心なんだろう。丸刈り頭の選手が増えたピッチを見るたびに、「ソガさん、リスペクト」の言葉が頭に浮かぶ。



鹿島で丸刈り流行、発端は曽ヶ端準。あらゆるエピソードが男気だらけ。

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