
日刊鹿島アントラーズニュース
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2018年2月19日月曜日
◆野沢拓也と田代有三、豪州でホットライン復活。二人三脚で上るAリーグへの階段(フットボールチャンネル)
オーストラリアの地で常勝・鹿島アントラーズを支えたコンビが再会した。昨年から田代有三がプレーしていた2部相当のウーロンゴン・ウルヴズに、ベガルタ仙台を退団してフリーになっていた野沢拓也の加入が決まった。将来のAリーグ参入を目論む古豪の命運は2人の日本人が握っている。(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)
野沢拓也が豪州へ。36歳で決意の海外挑戦

2月15日11時、快晴のウーロンゴン・ウルヴズ(NPLNSW1・NSW州1部/豪州2部相当)の本拠地WINスタジアムには、現地のメディアが集った。彼らのお目当ては、ウルヴズがこの日獲得を正式に発表する新外国人「タクヤ・ノザワ」である。
1999年にデビュー以来、19年連続J1でプレーし、鹿島アントラーズの5度のJリーグ制覇に貢献したJ1通算384試合出場70得点を誇る至宝、野沢拓也、その人だ。公式戦では2001年から実に17年連続、J1リーグ戦に限っても14年連続で得点を決め続けたレジェンドの豪州上陸が、遂にオフィシャルになった。
お披露目の場に臨んだ野沢には、適度な緊張と正式契約を交わしての安どがあいまった表情が浮かんでいた。その姿を、隣で目を細めて見守るのが、野沢の1学年下の後輩で鹿島、神戸を通じて7シーズンに渡ってチームメートとしてしのぎを削ってきたFW田代有三。盟友・野沢の加入で、神戸時代の12年以来となるホットラインが、豪州、しかもウーロンゴンの地で“再開通”することになるとは、当の本人たちをはじめ、いったい誰が予想しただろうか。
3年半在籍した仙台を退団後、つい最近までその動向が知れていなかった野沢だが、昨季ウーロンゴンでプレーした後輩の強い勧めもあって海を渡ることを決めた。いくつかのオファーのどれかを選んでJリーグでさらなる金字塔を打ち立てる可能性も捨て置いて、36歳での海外挑戦となる決意の来豪だった。
ここで、少し時計の針を戻そう。
2月10日、ブリスベン。抜けるような青空とじめっとした湿気。典型的な亜熱帯気候の夏の日の昼過ぎ、野沢と田代はブリスベン空港に降り立った。開幕に向けてのトレーニングを進めるチームが、当地でキャンプを張る中国2部・武漢卓爾の練習試合の相手として招へいされ、昨季の主力の田代、契約前提で練習参加している野沢の2人が帯同してきたのだ。
田代は昨年の経験から豪州の気候には慣れているだろうが、野沢は滞在わずか5日目。日本からやってきたばかりの身には、40度近くになる豪州の夏と日本の冬の気温差は知らず知らずのうちにボディブローとして効いていたに違いない。しかも、2人は共に実戦からかなり遠ざかっていたこともあり、そのコンディションは参考外とも言える状況だった。
「引退するかどうかまで含めて色々と考えた」(野沢)
ウーロンゴン側に許可を貰い、関係者だけの閑散としたスタジアムで非公開の練習試合を取材することができた。主催の武漢側の公式な許可を取っていないので、試合の詳細は書かないが、元浦和レッズのラファエル・シルバ擁する武漢は歴戦の強者である2人が素直にその実力を認めるほどの完成度。
「はっきり言って、Aリーグに入っても充分にやれるレベル。全く穴が無い良いチーム」(田代)という相手に、ウーロンゴンはチームとして厳然たる実力の差を見せつけられた。2人がプレーした前半だけで4失点。コンディションが整っていない2人は、ともに決定的な仕事をできずに前半で交代。残念ながら、野沢の「豪州デビュー」は到底本人が納得するレベルのものとはならなかった。
試合直後の野沢は、不満そうな表情を浮かべて、「いや、何もできなかった。ボールも出てこないし…」と何度も頭を捻った。オフ明け初戦、しかも合流直後の試合というシチュエーションでも、自分のパフォーマンスだけでなくチームとしての結果にも納得がいかないのは、長年常勝・鹿島の屋台骨を支えてきたプライドのなせる業だろうか。
「外国人枠の選手なのだから、こんな状況下でも違いを見せつけなきゃいけなかった」と反省しきりの先輩を「開幕前のこの段階で、これだけのレベルのチームとやれたことに意味があるし、これからうち(ウーロンゴン)も上がっていけば、すぐにタクさんにボールを集めなきゃいけないというのは、他の選手もすぐに分かりますよ」と後輩の田代がしっかりフォローする。
一旦宿舎に戻った2人と日本人経営の地元の焼き肉店で合流して、さらに話を聞くことができた。
「本当の話、(仙台を退団した後)それこそ引退するかどうかまで含めて色々と考えた。Jリーグでは、今までのキャリアで『ある程度、やり遂げた』って気持ちもあったし、もしまだチャレンジするなら他(海外)でって気持ちもあった。そんな時に、今回の(田代)有三の誘いがあって、彼がそれだけいいって言うなら、思い切って挑戦してみようかなって気持ちになった」
田代はそう語る野沢の横顔を眺めながら頷く。
「とにかく、このクラブが勝つためには、僕が取れるだけの点を取らなきゃいけない。そのためのパスの安定供給源が何としても必要だった。そう思った時に、僕の中ではタクさん(野沢)しか考えられなかった」
田代が直談判。クラブ首脳陣を動かした野沢への強い思い

そう思ってからの田代の行動は、かなり思い切ったものだった。
「会長とCEOに直談判です。タクさんがどれだけすごい選手かを必死に伝えて。最後には『ユウゾウが言うならば』とプレービデオなんかも確認しないで契約前提の練習参加を決めてくれた」
実は、筆者は偶然にも「野沢、豪州2部相当に移籍か」との報道が流れる1週間ほど前、ウーロンゴン・ウルヴズを現地で取材していた。その時、一時帰国中の田代とは行き違ったのだが、取材に応じてくれた現場の総責任者であるクリス・パパコスマスは「ここで話した以外にも、すごい話が近いうちに聞こえてくるから楽しみにしておくといいよ」と今思えば、かなり思わせぶりな言葉を残していた。
待ち合わせ場所からスタジアムまで向かう車中でもクリスからは「ユウゾウがいた頃の鹿島は強かったのか。どんなチームだった?」と質問攻め。その時は、ウルヴズでプレーする田代がどれだけすごい選手だったか知りたいのだろうくらいに思っていたが、それだけではなかった。
彼は「野沢拓也」の存在の大きさを筆者に逆取材を試みていたのだ。「小笠原満男、本山雅志、柳沢敦、鈴木隆行」といった鹿島の名だたるレジェンドの名前と共に、筆者は確かに「野沢拓也」の名前も出した。残念ながら、その時にクリスがどんな表情をしたかは、ハンドルを握って進行方向を直視していたので見ることができなかったが。
ブリスベンでの夜に話を戻そう。
「タクさんが、こうやってメディアの人と話しているのも、すごいことなんですよ」
田代が言うには、野沢は日本のフットボールメディアでは「なかなか話さない選手」として有名だったらしい。豪州を根城にする筆者はそんなことも知らずに、ずけずけと聞きたいことを聞いた。確かに、この日を前にリサーチしようとインターネットで過去記事を漁っても、これだけの実績を持つ選手にしては意外なくらいにメディアでの露出が少ないという印象はあった。
野沢は決して能弁ではないが、こちらが真摯に尋ねれば訥々と語ってくれる。鹿島ユース出身で鹿島と共にキャリアを高めてきた野沢は、古巣にもきちんと今回の挑戦に関しての報告をしてから海を渡ってきた。
「ここ(ウーロンゴン)に来ると決めてから、鹿島にも挨拶に行った。満さん(鈴木満強化部長)や(小笠原)満男さんも、快く送り出してくれた。やっぱりそういう人の期待に応えなきゃいけないし、この1年、精いっぱいやって結果を出して、何とかウーロンゴンの力になりたい」
そんな古巣について語る野沢の口調には熱がこもっていた。それは、今も彼の心の底にある「鹿島愛」なのだろうか。
目標はAリーグ参入。2人の日本人が背負う重責

その鹿島は3月7日に行われるAFCチャンピオンズリーグのアウェイでのシドニーFC戦のため豪州へやってくる。
「いや、監督には開幕直前で練習だから(観戦に行くのは)ダメって言われてます。でもね、それまでに僕とタクさんがきっちり仕上げて違いを出せてれば、『いいよ、行ってきて』ってなるんじゃないかな(笑)」と田代は屈託なく笑う。
遠征してくる鹿島の選手、スタッフ、サポーター達は遠征先のアウェイのスタジアムに2人のクラブの功労者の姿を見つけた時に何を思うのだろうか。見てみたい光景ではある。
とはいえ、2人にとって勝負のシーズンだけに、クラブ最優先は当然のこと。かつての全国リーグ(NSL)を連覇するなど輝かしい実績を誇るウーロンゴンは、直近で2019/20シーズンにも実現するとされるAリーグの拡張に向け、新規参入の有力候補となっている。
その立場をより強固にするには、今季のNPL(地域リーグ)で目に見えた結果を残すことが喫緊の課題。最短でのAリーグ入りを目指すロードマップを着実に進めるには、是が非でも結果が欲しい。そんな大事なシーズンの「外国人枠」を2つとも日本人選手に託したウーロンゴンと、託された2人の元Jリーガーは、言うまでもなく一蓮托生。ウーロンゴンの躍進には、“ジャパニーズ・コネクション”の大爆発は何にもまして必要なのだ。
田代は冗談めかして言う。
「当然ながら、タクさんのアシストで僕が決めるってのはすごく多いんですけどね、逆に僕がアシストして、タクさん(が得点)ってパターンも結構あるんですよ(笑)」
野沢も負けていない。
「有三は、セットプレーの時とか『ここに蹴って』って自分の頭の周りを指で指すこともあったけど、そんなのもう相手にバレバレ(笑)。それでもそこに蹴れば、なんとかしてくれるってことは多かった。確かに有三から僕ってパターンも結構あった」
ピッチ外での掛け合い同様、2人合わせて71歳のベテラン2人の息の合ったコンビネーションがピッチ上で観られれば、NPLレベルではそうそう止められまい。攻撃陣には2人以外にもなかなか面白い選手を抱えるウーロンゴンだけに、DF陣の頑張り次第ではNPLの優勝争いに絡んできても驚かない。
古巣鹿島にもつながる赤いユニフォームをまとう2人が、1回でも多く相手ゴールを陥れることができれば、ウーロンゴンの成績もおのずと上がっていくに違いない。
野沢拓也と田代有三、ウーロンゴンが誇る2頭の“ニホンオオカミ”の大暴れを期待したい。半年後、彼らがどのように充実したシーズンを振り返るのか。そして、その視線の先に何を捉えるのだろうかーー興味は尽きない。
(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)
【了】

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