日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年12月4日金曜日

◆「現実を突きつけられた…」来季鹿島内定の‟明治大の頭脳“、常本佳吾が吐露した常勝軍団の厳しさ(サッカーダイジェスト)




特別指定選手として練習参加した鹿島で感じたプロの厳しさ


 関東大学サッカーリーグ1部・19節、早稲田大と首位争いを演じている明治大は順天堂大と激突。この試合で『明治大の頭脳』と言える背番号2が復帰した。

 来季から鹿島アントラーズ入りが内定しているDF常本佳吾は9月からの2か月間、特別指定選手として鹿島の練習に参加。この試合の4日前に明治大に戻り、優勝を目指すリーグ戦に照準を合わせて来た。

 明治大では昨年は3バックの一角、今年はCB、ボランチを任せられることが多かったが、鹿島で右サイドバックとしてチャレンジし続けた経緯から、この試合では右サイドバックとして90分間プレーした。

「栗田(大輔)監督も僕に『鹿島でやって来たことを見せろ』と言うメッセージを送ってくれての起用だったと思う」と、彼自身もその意味を理解してピッチに立ったが、結果的には1−2の敗戦。順天堂大のU-19日本代表FW大森真吾をターゲットにした攻撃の前に押し込まれ、全体的にラインが低くなってしまったことで、右サイドバックとしての攻撃参加が減り、試合を決定づけるようなプレーはできなかった。

「守備はもちろん、攻撃面でサイドからチャンスメイクをしないといけない立場なのに、ボールにあまり関わることができなかった。本当にまだまだだなと思いましたし、優勝に向けて僕もチームももっと意識を持ってやらないといけない」

 試合後の彼の表情はいろんな感情が渦巻いているように見えた。鹿島で積んだ経験を明治大で示すことで、成長した姿をもっと見せたかったはずだ。だが、それを出来なかった。その一方でミックスゾーンでは鹿島での経験についての質問が飛んだが、少し間を置いて「……大学で積み上げて来たものを発揮しようと思ったけど、2か月いてもなかなか試合に絡めなかった。プロの厳しさというか、J1で数多くタイトルを獲っているチームの層の厚さを感じました」と悔しさを吐露した。

 常本がいた2か月間はちょうど連戦ばかりの時期で、チャンスはあった。しかもちょう鹿島への合流と時を同じくして日本を代表する右サイドバックの内田篤人が現役引退。寮も『内田部屋』を割り当てられるなど、周囲の期待も高かった。だからこそ、栗田監督も「常本にとって大きなチャンス。鹿島で頑張れと伝えた」と、他のJ内定選手がリーグ戦後期に向けて明治大に戻ってくる中、彼だけは鹿島に残った。

 だが、22節のサガン鳥栖戦にベンチ入りを果たすも出番はなし。31節には自らを育ててくれた古巣クラブである横浜F・マリノス戦に途中出場で11分間プレーし、J1デビューこそ果たしたが、それ以外はベンチ入りすらできなかった。


「鹿島は勝負に対してのこだわりがもの凄く強いチーム。綺世はそこにちゃんと染まって…」





 一方で学年的には同級生のFW上田綺世は1年早く鹿島に飛び込んで、熾烈な競争を経験して成長し、この順天堂大戦と同じ日に行なわれていた30節の浦和レッズ戦でスタメン出場、2ゴールを奪ってチームの勝利に貢献をしていた。

「鹿島は勝負に対してのこだわりがもの凄く強いチーム。綺世はそこにちゃんと染まって結果を出して、ボールを収める力、決める力は大学時代よりかなりレベルアップしているので、僕もそこについていかないといけないと思いました。それに僕も特別指定選手として呼ばれているわけですから、鹿島の力にならないといけなかった。それが本来のあるべき姿だったのですが…。もちろん、この2か月で自分が成長した手応えはありますが、それをもうワンランク上に押し上げていかないと試合に絡めない。現実を突きつけられたというか、もうここからは特別指定での2か月を生かして、来季のスタートにもっと自分を上に持っていかないといけない。それを強烈に意識できたことが財産だと思います」

 悔しさと向上心を胸に宿しながら、一つひとつの質問に丁寧に答える常本。プロの厳しさをリアルに突きつけられたことが、将来へ力強く帆を進める大きなエネルギーとなる。

「プロの世界はワンチャンスをモノにすることが本当に重要で、そのワンチャンスをものにするかしないかは全て自分の実力次第。普段の練習の細部に拘らないといけない。それは明治大も一緒」

 明治大も勝利を義務付けられたチーム。彼を含めJ内定者を8人も揃えるほぼプロの世界のようなもの。だからこそ、プロの意識そのままに、明治大でのサッカー中心の日常の精度を研ぎ澄ましていく。その証明がリーグ戦での優勝であり、その証明書を携えて鹿島に戻る。『為すべき道』に向けて、常本は決意の一歩を踏み出した。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)


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