鹿島アントラーズMF舩橋佑は今年度、ユースから唯一のトップチーム昇格者だ。「正直に言って嬉しいけど、やっとここにたどり着いたかという気持ちもあった」。クラブレジェンドからも信頼を寄せられる期待のルーキーは「遠慮は考えていない。先輩に食らいついていきたい」と力強く意気込みを語った。
小学生時代から鹿島のアカデミーで育った舩橋は、試合展開を読んだ長短パスを武器とするボランチ。ユース時代は積極的にトレーニング参加を行っていた他、かつて同じポジションを担っていた小笠原満男アカデミー・アドバイザーの薫陶も受け、憧れ続けてきたトップチームにたどり着いた。
舩橋にとって小笠原氏は「言われたことすべて響いている」というほどの存在。とくにトップチーム昇格が決まった直後に伝えられた「絶対にお前ならやれるから自信持ってやれよ」という言葉は印象に残っているといい、「やらないといけない気持ちになったし、鹿島のレジェンドに言われた言葉だったので身に染みた」と振り返った。
またプレー面でも積極的にアドバイスを求めており、「高校2年生まではサイドチェンジなど横のプレーが多かったけど、満男さんから縦を意識しろと言われて、やることが少しずつ変わってきた。ゴールを意識する上でのパスという考え方になった」と変化もあった様子。「イメージ的には話しかけづらい人と言われているけど、そんなことはなく、気になったことはすぐに聞けるし、満男さんからも気軽に言ってくれる」と良好な師弟関係を築いていたようだ。
そうして育ってきた舩橋だからこそ、鹿島にタイトルをもたらしたいという思いはことさら強い。
コロナ禍で迎えた昨季は唯一の全国大会となった日本クラブユース選手権(U-18)大会の準決勝で敗退。「ずっと小さい頃からアントラーズのアカデミーとしてやってきて、タイトルを取ることの大切さ、勝利することによって成長が得られることは言われてきたことなので、ああやって負けてしまって、自分自身足りないことを気付かされた。今年はタイトルに向けて、自分が少しでも多く力になれるようにやっていきたい」と意気込む。
また、同じ鹿島ユースで過ごしたMF柳町魁耀(水戸)、FW石津快(鹿児島)が他のJクラブでプロ生活をスタートした一方、鹿島には高体連からMF須藤直輝、MF小川優介(いずれも昌平高出身)が加入するなど、同年代で切磋琢磨する環境も出来上がっている。
「より自分がやらないといけないという立場を行動で示していかないといけない」とアカデミー出身者の自覚を語った舩橋は「自分はそこまでうまい選手ではなかったし、知られている選手ではなかったと自分でも思っている。だからこそ一番下からやっていくことに意味があると思う。一番下から這い上がるために練習から努力していきたい」と力を込める。
目指すはアントラーズの中心選手。「ユースの時より走力が必要になるし、チームの心臓として誰よりもやらないといけないというのはある。精神的にも誰よりも強くならないといけない。体力的にも向上させて、アントラーズの心臓として働いていきたい」。愛するクラブでプレーできる喜びを、ピッチ上で表現していく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
◆身に染みた“満男さん”の言葉…唯一トップ昇格の鹿島MF舩橋「一番下から這い上がる」(ゲキサカ)