日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年1月30日日曜日

◆“干からびた”筋肉を最短リセットする、サッカー選手のピッチで生まれたメンテナンス法とは? 「びっくりするほど体が軽快に動けるようになる」(文春オンライン)






「疲れが短時間でスーッと抜ける」「びっくりするほど体が軽快に動けるようになる」と評判を呼ぶ、元鹿島アントラーズのトレーナーで鍼灸師の小池謙雅さん。初の著書『疲れて「もうムリ!」と思った時にすぐ動ける!トリガー体操』には、アスリートたちとの現場から生まれたシンプルかつ強力なメソッドが満載。芸能人やスポーツ選手たちからも厚い信頼を寄せられる、唯一無二の体のメンテナンス法に迫った。

◆ ◆ ◆

――近年、どんな体のトラブルが増えていますか?

小池 コロナ禍のなか患者さんの傾向が明らかに変わってきて、腰痛と首こり・肩こりが著しく増えました。顔の表情がくもりがちで血色の悪い、鬱っぽい人も多い。これは長時間のデスクワークと運動不足からくる単なる慢性疲労とはちょっと違います。





筋肉・筋膜に“シャウエッセンの皮”のような〈弾力と潤い〉を取り戻すことが肝心


 いわば、全身の筋肉が凝り固まって“ビーフジャーキー化”している方が非常に多く見受けられます。

――筋肉が干からびている!?

小池 まさにそんなイメージです。人間の筋肉は使いすぎても、使わなさすぎても、柔軟性を失い、血流不足で潤いを失って硬くなります。それが続くと、筋肉と筋膜の境目にできる硬いしこり「トリガーポイント」が形成されます。これが痛みやさまざまな不調の大きな原因になるんです。筋膜とは筋肉の束を包む透明なフィルムのように見える膜のことです。

 筋肉の固さって、意外に自分では自覚しにくいもの。たとえば「ゆったり息をしてみてください」といっても、肩が上がりっぱなしで縮こまっている人が多くいます。肩をストンと落としてゆるませて、横隔膜を大きく使った呼吸ができないんです。

 とくにデスクワーク中心の仕事の方は、パソコンを打つときに猫背や巻き肩で、顎がつき出た姿勢で、首や胸、背中の筋肉がロックされた状態で作業しがち。しかもマスクをしていることが多いから口をぽかんと開けたまま、浅い口呼吸になってしまっている。すると交感神経がオンになったままなので、つねに全身が「過緊張モード」で筋肉がゆるまず、ますます「トリガーポイント」の形成が進むという悪循環に陥ります。

――それって腰痛にも繋がってきますか?

小池 長時間悪い姿勢で座っていたり、椅子の高さが自分の体にあっていないと、骨盤が寝た姿勢でロックされます。腰回りの筋膜が硬くなってすべりが悪くなると、腰が伸びなくなります。筋膜はお尻から太もも、股関節や背中にもすべて連動しているので、体のあちこちに腰痛の原因となるトリガーポイントがつくられてしまう。

 この痛みの原因を取り除くには、「トリガーポイント」を破壊して、筋肉・筋膜に“シャウエッセンの皮”のような〈弾力と潤い〉を取り戻すことが肝心です。





鍼と近しい効果でいつでもできるようにしたものが「トリガー体操」


 論より実践。早速腰回りを軽くするいちばん手軽で基本となる体操をひとつご紹介しましょう。

 まず立って肩幅に足を開きます。腰に手をそえ、骨盤の一番高いところに親指をグッと差し込みます(親指でやると痛い人は写真のような鉤爪で)。腰骨ではなく、脇腹との境目のくぼみで、押したときにいちばん痛気持ちいいポイントを見つけてください。

 手を添えたまま、5秒で鼻から大きく息を吸います。次に5秒かけてゆっくり口から息を吐きながら、おへその指3本ぶん下の丹田のベクトルに向かって、トリガーポイントをしっかり圧迫します。上体をやや倒して、体の重みで深く圧を入れていくイメージです。

 この「5秒で吸って・5秒で押しながら吐く」のセットを2~3分間、体がポカポカするまで繰り返します。




――ちょっと痛いくらい。体の奥にじんじんきますね。

小池 筋膜のビーフジャーキー度が深刻な人ほど、筋肉が突っ張って圧が入れにくかったり最初のころ強めの痛みを感じたりするかもしれません。これはトリガーポイントを物理的に破壊して、筋膜と筋肉の癒着をとっているんです。私の治療院ではこれを鍼で行いますが、鍼と近しい効果でいつでもどこでもできるようにしたものがこの「トリガー体操」です。

――だんだん呼吸が深くなって、体温が上がってきました。

小池 その方の体質にもよりますが、発汗作用が強いメソッドで、だんだん汗ばんでくると思います。次に同じポイントを圧迫したまま、左右に腰をスイングしてください。リズミカルに楽しく10回往復しましょう!


マッサージで血流がよくなっても一時的


――不思議と腰まわりが軽くなってきましたね。

小池 トリガーポイントにアプローチしたことで縮こまった筋肉・筋膜の血流が一気に改善されているんです。新著『トリガー体操』は、流れで組み合わせてやると一番効果の高いメソッドを紹介しているので、ぜひ日々実践してほしいと思います。3~4週間続けると、びっくりするほど代謝がよくて“疲れがとれやすい”動ける体になっていきます。




――いわゆるマッサージとは全然違いますね。

小池 マッサージで血流がよくなっても一時的です。あとマッサージを受けたあとは弛緩して動く気がしないものですが、トリガー体操は痛みの根本原因を取り除いて、体の内部から活性化するので、筋肉に柔軟性を取り戻しつつも「集中できる」「バッと動ける」覚醒度の高い状態にもっていくことができるんです。

 これは、アスリートたちとの現場ならではのニーズから生まれた治療法です。僕は2007~2012年の6シーズンにわたって鹿島アントラーズのトレーナーを務めましたが、試合中たとえばハーフタイムのわずか10分ほどの間で選手たちの体のコンディションを整えなくてはなりません。このときマッサージで体を弛緩させてしまっては後半使い物にならなくなるわけで、疲れていても即「戦える体」にする必要がありました。

――確かにリラックスしきってしまっては試合になりませんね。

小池 この時、飛び道具的なアプローチとして使っていたのが、「トリガーポイント」への刺激だったんです。当時はまだこの言葉もあまり知られておらず、僕は現場での積み重ねから、筋肉の可動域を一気に改善したり痛みをとったりする筋膜へのアプローチ法として磨きをかけていきました。

 飛び道具のなかでも最強の方法が本書でも紹介している「ヒラメ筋トリガー」です。天皇杯の試合で、ある精神的支柱の選手が不調で、前半1-0で負けていたことがありました。ハーフタイムで上がってきたその選手が「足がパンパンでなんか動けないんだ」と訴えました。監督も心配そうに見守るなか、僕はヒラメ筋を中心に、汗だくになってトリガーポイントの破壊に集中して治療しました。あっ、手応えがあったぞと感じた瞬間、その選手が「OK! 楽になった」と言ったんです。後半、その選手は劇的によい動きをして見事試合を勝利に導きました。チームはそのまま決勝に進んで、優勝のタイトルを獲ることができました。


疲労を上手に取り除くことは、人生の充実度に直結する


 プロスポーツの現場の積み重ねから、ハイパフォーマンスを生むこの強力な治療法をもっと広く一般の方の体のケアに役立てたいという思いが生まれ、自身の鍼灸院を設立しました。初の著書では、治療院に来られない人たちにも老若男女広くトリガーポイント療法の素晴らしさを体感してほしいと思い、汎用性の高い体操本として打ち出しました。

 トリガーポイントという「筋膜リリース法」✕「腹式呼吸法」が融合した、ありそうでなかった体の活性化メソッドが「トリガー体操」です。

――リラクゼーションをメインにした健康本が多いなかで新鮮です。

小池 現代人はとにかく時間がないですよね。そのなかでいかに効率よく仕事したりパフォーマンスを出すか――疲労を上手に取り除いて、体をオンにするコンディションを整えていけるかどうかは、人生の充実度そのものに直結するでしょう。仕事中なんとなく頭がしゃきっとしない、体が重だるいという方も変化を実感していただきやすいと思います。




 日頃から筋膜のコンディションを整えていると、文字通り人生が変わります。代謝がよく集中力の高い体質へシフトチェンジできるのはもちろん、これからの超高齢化社会をできるだけ自分の足で動いて、健康に過ごすための一生の財産が手にはいります。当院にくる高齢の患者さんは笑い話で「ピンピンコロリ、先生のおかげで自分の足で棺桶に入れますよ」なんて言っていますが、長い老後の大半を痛みを抱えたままじっと過ごすのはイヤですよね。

 日本は国民皆保険制度で、少ない負担で世界でもまれにみる高度な医療を受けられます。ただその反面、予防や健康管理には疎い国民性になってしまった。病気になったらマイナスからゼロにするのは熱心だけれど、日頃からゼロをプラスにする意識が希薄。でもこれからは人生100年時代を十全に生きるための意識改革が必要です。

 毎日のトリガー体操の実践で、生涯笑顔でハッピーに過ごすための“筋膜貯金”をぜひ貯めていってほしいと思います。

(撮影:松本輝一/文藝春秋)


プロフィール

小池謙雅(こいけ・けんや)

1977年茨城県生まれ。トリガー鍼灸院グループ代表、トレーナー、治療家。明治鍼灸大学・鍼灸学科、大東医学技術専門学校・柔道整復学科卒。複数の治療院での下積み期間を経た後、2007~2012年の6シーズンに渡って、Jリーグ・鹿島アントラーズのトレーナーを務める。退任後、都内にトリガー鍼灸・整骨院を開業。トリガーポイント治療法をスポーツ選手だけでなく、のべ8万人を超す人々に広く行い高い評価を得ている。


◆“干からびた”筋肉を最短リセットする、サッカー選手のピッチで生まれたメンテナンス法とは? 「びっくりするほど体が軽快に動けるようになる」(文春オンライン)


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