「環境を変えたかった」
ボールコントロールは錆びついていない。良質なキックも健在で、アイデアに富んだプレーはワクワク感を漂わせている。
荒木遼太郎、21歳。苦しんだ過去2シーズンの自分と決別するべく、青赤のユニホームをまとって新たなチャレンジをスタートさせている。
華々しいデビューだった。2020年シーズン、プロ1年目から鹿島でレギュラーの座を掴み、リーグ戦26試合で3ゴールをマーク。翌年には36試合で10得点を記録し、ベストヤングプレーヤー賞を受賞した。プロ3年目となる2022年シーズンから10番を背負い、同年1月にはA代表候補にも選出。誰もがさらなる飛躍を待ち望んでいた。
しかし――。そこからが苦難の連続だった。怪我の影響で満足がいくパフォーマンスを発揮できず、出場機会が激減。最終的には13試合で1得点に留まり、期待に応えられなかった。
「自分のコンディションも戻っていたし、プレーの質も落ちていなかった」と振り返ったが、昨季も低迷して出番は限定的。チームの戦術に馴染めなかった点もあるが、13試合で一度もネットを揺らせずに終わった。
そんな荒木は今オフに大きな決断を下す。4年間を過ごした鹿島を離れ、FC東京でリスタートを切ることを決めたのだ。移籍の理由について、こう話す。
「環境を変えたかった。そのなかで声をかけてくれたのがFC東京。自分のサッカーに合うと感じた。特に10番のポジション(トップ下)があるチームで、自分もそこで戦いたいという想いがあったんです」
合流して間もないが、チームにも馴染んでおり、1月9日からスタートした沖縄キャンプでも溌剌とした動きを見せている。
そうした良い状態をキープできているのも、ピーター・クラモフスキー監督からの期待があるからこそ。その点も荒木のモチベーションを高めさせている要因のひとつだ。
「自分に必要なことを言ってくれますし、本当にここで成長できそうだなって感じています」
練習から「前を向いてプレーする」ことを指揮官から求められており、自分の良さをより発揮できる環境は整いつつある。課題である守備面やプレー強度の面で与えられたタスクを遂行できれば、復活の可能性は高まるはず。そうすれば、2022年3月のドバイ遠征を最後に選出されていないパリ五輪世代のチームに加わることも夢物語ではない。
そのためにも、まずはチームでの活躍が必須。本人に焦りはなく、新天地でどんなパフォーマンスを見せられるかに重きを置いている。
「パリ五輪も目ざしているけど、まずはチームで溜まっていたものを爆発させたいなと思っています」とは荒木の言葉。復活を期すパリ五輪世代のファンタジスタは楽しみながら、あるべき姿を取り戻すためにボールを蹴り続ける。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
◆復活を期すパリ五輪世代のファンタジスタ、荒木遼太郎。新天地・FC東京で充実感「溜まっていたものを爆発させたい」(サッカーダイジェスト)