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[5.27 キリンチャレンジ杯 日本1-0キプロス 埼玉]
真っ先にベンチへ向かった。前半43分、こぼれ球を押し込んで先制点を決めたDF内田篤人(シャルケ)はベンチ前のアルベルト・ザッケローニ監督とハイタッチをかわすと、チームメイトやコーチングスタッフと抱き合って喜んだ。
「前田さんと池田ドクター、早川さんのために、ちょっと(ゴールを)狙っていた」。試合後のミックスゾーンで前田弘トレーナー、池田浩ドクター、早川直樹コンディショニングコーチの名前を挙げた内田。ザックジャパン初ゴールとなる国際Aマッチ2得点目は、3人への感謝を込めた恩返しのゴールだった。
2月9日のハノーファー戦で右太腿裏を肉離れし、長期離脱を強いられた。手術を回避し、日本とドイツで懸命のリハビリを続けてきた内田にとって、代表の医療スタッフの支えなくして、この日の復活はあり得なかった。
「ケガをしてから、ほぼ毎日、どれぐらいの練習をすればいいのか、どれぐらい回復しているのか、連絡を取り合っていた。シャルケのクラブハウスにも来てくれて、シャルケのドクターとも会ってくれた。だから僕は安心してリハビリに専念できた」
あらためて感謝の言葉を述べる内田は「3人だけじゃないけど、3人の存在は大きかった。選手がスポットライトを浴びるのも、あの人たちが時間を削って、選手のためにやってくれているから。ケガをして、そういうことを学んだ」と、裏方で支えてくれるスタッフへの思いを語った。
ハノーファー戦以来、約3か月半ぶりとなる復帰戦は前半45分間のプレーだった。試合前にハーフタイムで交代するとは伝えられていなかったというが、「90分間はないかな。何となく45分かなと思っていた」。先制点が生まれたのは前半43分。交代する前に、どうしてもゴールが欲しかった。
FW香川真司のシュートのこぼれ球を押し込んだゴール。PA内まで進入していたのも、点を取るためだった。「あの場面は高く行き過ぎたけど、何回もあそこでこぼれているのを見ていた。(出場時間は)45分かなと思っていたし、時間が少なくなっていたから。1点入れて、ベンチに行かなきゃという気持ちがあった」
ゴールを狙って取れるものではない。しかも、ポジションは右SB。内田の代表戦でのゴールは08年6月22日のバーレーン戦以来、2165日ぶりだった。それでも、ゴールという形で感謝を伝えたかった。「一番分かりやすいのがゴールだから。実は狙っていた。宣言していた? 宣言したらできないから」。心に秘めていた思い。W杯壮行試合で生まれた“不言実行”の一発が、完全復活への狼煙となった。
(取材・文 西山紘平)