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J1 1st 第13節 vs 浦和レッズ
アウェイで先制も、屈辱の逆転負け。鹿島、埼スタに散る
鹿島が、アウェイの地で屈辱的な逆転負けを喫した。J1 1st 第13節、ここまで無敗で首位を走る浦和レッズと対戦すると、67分にオウンゴールで先制に成功したものの、その後2失点。1-2で敗れた。
前節の広島戦、鹿島は一時は逆転に成功しながら、2-2で引き分けた。ホームでまたも逃した白星。勝ち点1を得るにとどまり、試合後のカシマスタジアムには、声援とブーイングは渦巻いていた。あれから1週間、選手たちは再起を期して、宿敵相手のアウェイゲームに向けてトレーニングを積んだ。2日前の練習を急きょ非公開とするなど、周到な準備を進めたトニーニョ セレーゾ監督は、「毎回、この対戦は見応えがあって、エキサイティングな試合になる」と、期待感を示しつつ、「不注意、集中力の欠如があった場合は、非常に危険な状況になる」と、険しい表情で語った。
細心の注意を選手たちに求める指揮官は、先発メンバーを3人入れ替えた。前節でデビューを飾り、いきなりゴールを決めたジネイを1トップに指名。最終ラインにも変更を加え、センターバックの一角に植田を起用した。パートナーはファン ソッコで、昌子を左サイドバックにスライドさせ、右サイドバックは西を並べた。3つ目の変更点は最後尾。曽ヶ端ではなく、佐藤にゴールマウスを託すこととなった。中盤は前節と同じ組み合わせで、2列目にはカイオと土居、遠藤が並び、ボランチは柴崎と小笠原のコンビが務める。
埼玉スタジアム2002には、早くから数多くのサポーターが詰めかけた。長蛇の待機列をなし、開場を待つ時から、ライバルとの一戦へボルテージを高めていた。アントラーズレッドで染まったアウェイスタンドは、ウォーミングアップに臨む選手たちを、大きなチームコールで迎え入れた。サポーターとともに、選手たちは19時4分、キックオフのホイッスルを聞いた。
前半立ち上がりは、浦和にボールキープを許す展開となった。細かいパス交換から最終ラインの背後を狙われる場面を何度か迎えたものの、選手たちはしっかりと集中力を保って対応。ペナルティーエリア内からのシュートを打たせず、決定機を作らせなかった。そして、鹿島のファーストシュートは8分、植田が敵陣に少し入った位置から思い切りよく右足を振り抜く。ロングシュートは大きく枠を逸れたが、このプレーから、次第に鹿島は攻勢をかけていく。
次のチャンスは14分、敵陣でのパスカットからジネイがドリブルで持ち出し、ペナルティーエリアに差し掛かった位置から右足シュート。GKにキャッチされたものの、新たな背番号9が前線で存在感を見せた。ジネイは相手の最終ラインへのプレスでパスミスを誘発し、安定感抜群のポストプレーで基準点となった。18分にも、ジネイが起点となって右サイドへ展開し、遠藤のクロスのこぼれ球に柴崎が反応。ダイレクトで合わせたシュートは、枠の左へ外れてしまった。
以降も、敵陣でのボール保持率を高めていく鹿島は、試合を優勢に進めた。20分には、オーバーラップした西が、ペナルティーエリア右奥から意表を突いたグラウンダーのシュートを枠に飛ばしてゴールを脅かすと、36分にも右サイドの背後を取り、柴崎の折り返しをペナルティーエリア内で収めたジネイがシュート。強烈なグラウンダーは、GKに阻まれてしまった。
鹿島は敵陣でセカンドボールを拾う回数を増やすとともに、前半の半ば以降の時間で主導権を握り続けた。小笠原や植田、ファン ソッコが鋭い読みと激しいボディコンタクトで相手のカウンターの芽を摘み、後方からチームを支えた。均衡を破ることはできなかったが、スコアレスでハーフタイムを迎え、後半に勝負を懸けることとなった。
すっかり日が沈み、静寂を両チームのサポーターのチャントが打ち破る中で迎えた後半。鹿島は立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛け、49分に土居がドリブルでバイタルエリアに進入して遠藤のクロスを演出すると、54分にもペナルティーエリア手前での土居の落としから遠藤がシュート。少しずつ攻勢をかけ、ゴールへ迫っていった。
60分を過ぎても均衡が破られず、試合は拮抗した状態となった。激しいボディコンタクトの応酬となる、一進一退の攻防の中、先制点は思わぬ形で生まれた。67分、柴崎がジネイめがけ、敵陣ゴール前へ蹴り込んだボールが、相手選手の頭に当たってGKの頭上を越え、ゴールへ。鹿島がオウンゴールで先制に成功し、1点リードを得た。
ゴールの直前にピッチに立ち、復帰を果たした金崎が前線で突破力を見せ、鹿島は追加点を目指した。しかし、次の1点は浦和のものだった。71分、左サイドの背後を取られると、中央へのクロスを武藤に合わせられてヘディングシュートを決められてしまった。先制から4分後に同点弾を許し、再びタイスコアとなった。
セレーゾ監督は、79分に中村を投入し、攻撃陣を活性化して勝ち越し点を目指した。だが、83分、中盤での激しいボール奪取の応酬から、鹿島陣内からクリアすることができずにセカンドボールを拾われてペナルティーエリア内へパスを通されると、最後は関根に決められた。
1-2と逆転され、残りは10分足らず。鹿島は、ロングボールをジネイや高崎に放り込み、パワープレー気味にゴールを目指したが、及ばなかった。埼玉スタジアムで、屈辱的な逆転負けを喫した。
次戦は1週間後、5月30日のJ1 1st 第14節、松本戦だ。1stステージは残り5試合となった。ホーム・カシマスタジアムで今度こそ白星を挙げ、這い上がらなければならない。
【この試合のトピックス】
・ジネイが加入後初先発を果たし、フル出場した。
・佐藤が、3月8日に行われたJ1 1st 第1節清水戦以来、今季2試合目の先発出場を果たした。
・植田がフル出場。5月2日に行われたJ1 1st 第9節の甲府戦以来、リーグ戦3試合ぶりの先発出場を果たした。
・中村がリーグ戦2試合ぶりのベンチ入りを果たし、79分にピッチに立った。フル出場した、5月2日のJ1 1st 第9節の甲府戦以来だった。
・高崎が、5月10日のJ1 1st 第11節FC東京戦以来、2試合ぶりの途中出場を果たした。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:トニーニョ セレーゾ
・気持ちを落ち着けて、後半も自分たちのサッカーに集中しよう。
・プレスは早く、激しく!特に両サイドで自由を与えるな。
・攻撃のテンポは良いが最終局面での選択をよりポジティブに。
浦和レッズ:ペトロヴィッチ
・もう少し運動量を上げていこう。
・しっかりリスクマネージメントをして、バランスよく戦うこと。
・我慢すること。
[試合後]
鹿島アントラーズ:トニーニョ セレーゾ
Q.途中まで、完璧な試合運びだったと思うが、ゲームプランはどのようなものだったのか?なぜ、最後まで続けることができなかったのか?
A.前後半ともに、集約される言葉は「姿勢」や「態度」、「決断力」ということになる。前半では、特に攻撃の姿勢という部分ができていなかった。相手があれだけ前を向かせてくれるのにゴールへ向かわずに横を向いたりして、攻撃的な姿勢や意識ができていなかった。後半に関しては、守備の姿勢や意識が途中から薄くなってしまった。これだけスピーディーな展開で、サイドチェンジが多く、攻守の切り替えが速い展開になっていくので、どうしても疲労が溜まる。一瞬のプレーだが、「このボールはうちのゴールには遠いから」と思って歩いているうちに、素早い展開をされてしまう。先にポジションを取っていれば、失点を防いだり、最低限、相手の邪魔をすることはできたはずなのに、後追いという形になってしまった。そこは疲労の問題なのか、守備に対する個人の意識なのか。特に後半は、前半からの疲労が溜まる状況で、その時にこそ、集中力や注意力、守備への意識、ポジション取りをしっかりとしなければいけないのだが、気が緩むのか、集中力が突然切れるのか、体力的な部分で持続力ができていないのか。いろいろな形でアプローチをして、持続していけるように指導をしているが、急激に次の試合でできるか、持続できるかというのが、大変な部分に直面している状況といえる。
A.後半に関しては、両センターバックが、最もボールを持つことができる選手だった中で、もう少し、ビルドアップで攻撃に良いボールを出せればと思う。中盤に供給するパスも、もう少し正確に出せればと思う。浦和のメリットがなかったわけではないが、もっと良い内容や姿勢を今までの浦和で見たことがある。今日は普通の浦和だったと思う。日本で注目される試合で、いろいろな戦い方や駆け引きがある中で、後半のDFラインには、守備に対する意識と姿勢、持続力が足りなかった。非常に残念に思う。
Q. 前半に1回、カウンターのチャンスがあったが、スピードを落として横パスをして、チャンスではなくなった。監督は怒っていたが、その場面については?
A. その場面は、土居選手に対して自分が怒った。カウンターを仕掛けられる場面だった。土居選手の特長は、簡単に前を向けて、スピードがあって、スピードに乗りながらドリブルできること。以前からメディアを通して伝えているし、クラブハウスでも指導をしているし、グラウンドでも練習をしているのだが、バイタルエリアでセカンドストライカーに前を向かれると、DFの最初の反応はバックステップになる。後ろに下がっていく。特に、ドリブルで仕掛けられると、最初は下がっていくことになる。そこでスピードに乗れば、相手は下がっていくし、自分とゴールの距離が近くなって、角度も広くなる。DFをうまく使いながら、ブラインドを使ってシュートコースを作ることもできる。ジネイ選手はポストプレーができて、技術もしっかりしている。良いボールが返ってくるのだから、ワンツーで抜け出したりして、違う展開を作ることができる。土居選手がもう少し、ジネイ選手の特長やタイミングを掴むようになれば、新たな進化も見受けられると思う。スピードに乗ってドリブルをしながら、トップスピードで自在にボールを扱える選手はなかなかいない。天性というか、持って生まれた才能を出してほしいから、自分は要求している。できる時もあれば、できない時もある。コンスタントに発揮できるようにならないといけない。ファイナルサードにたどり着くためにはハードワークが必要だが、ペナルティーエリア内に190cmくらいの選手がいる。そこでクロスを上げられる状況にも関わらず、ボランチに戻してサイドハーフに出して、またサイドバックへ展開して、ということがある。良い状態で最後の3分の1のエリアまで行って、クロスを上げられる状況がありながら、それをしない。空中戦に強い味方の特長、それが何なのかを把握してやらなければいけない。1週間ずっと、そうした練習をしてきた。それが試合になるとそういったプレーがうまくできていない。それは疲労が理由であったり、相手のタイトなマークがあったりとか、いろいろと要因はあるだろうが、基礎的な部分、味方の特長をしっかり生かすということに3年間取り組んでいるのだが、理想の形にはたどり着けていない。
A. 平均年齢を見ても、浦和の方が上だ。勝負をするうえでの経験値も相手の方が上回っている。例えば、浦和を見ていると、キツい時間帯に選手たちが声を掛けたり叱咤激励をして、集中力を持続させるようにしている。一方、我々は全員が無口になって走っているだけになっている。姿勢を変えなければいけない。ファウルがあって、ボランチが相手に手を差し伸べている間に相手にリスタートをされて失点しそうになった場面があった。いろいろな駆け引きがあるわけで、相手が何をしようとしているのか瞬時に察知して、反応していかなければいけない。いろいろな駆け引きのところで、一瞬、気を抜いているところで相手にやられてしまう。そういったところでの成長がなければ、難しくなる。レフェリーへのアピールも、浦和の選手は正当な方法でやっている。試合の中で使っていい術なので、そういった部分での個の成熟が求められると思う。冒頭に言ったように、攻守に渡っての姿勢、どのように攻撃と守備をするのか、チームとして変えていかなければいけない。
敗者にしては、話しすぎた。失礼します。
浦和レッズ:ペトロヴィッチ
選手コメント
[試合後]
【西 大伍】
後半にパワーダウンしてしまった。それでは意味がない。前半はある程度、やりたいサッカーをできたけど、点を取りたかった。点を決めた後に我慢できないことが続いている。その瞬間に、良い判断をしなければいけない。後から反省しても遅い。
【ファン ソッコ】
相手の勢いがある中で、もっと落ち着いて対処すべきだった。相手の30番がポストプレーをして、全体を押し上げる起点になっている。自由にさせないように、もっと徹底すべきだった。自分たちに甘さがあったと思う。
【佐藤 昭大】
浦和の攻撃力に対して、しっかりと全員が我慢しようということでプレーしていた。失点するまでは、粘り強く守れていたと思う。先制した後は相手も点を取りに来るし、試合としてはスコアが動きやすい時間帯ではあるが、しっかり守ってカウンター、そこから追加点を取れればベストで、そういう力がないということ。また練習からしっかりとやっていかなければいけない。
昌子選手のコメントは、アントラーズモバイルをご覧ください。