日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年3月8日火曜日

◆悪くても勝つ。鹿島アントラーズは「3強」を脅かす存在か(Sportiva)


http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2016/03/07/post_1091/

 試合後のヒーローインビューでFW金崎夢生が発した第一声は、この試合を端的に言い表していた。

「勝ったけど、内容はよくなかった」

 J1ファーストステージ第2節。ホームにサガン鳥栖を迎えた鹿島アントラーズは、金崎のヘディングシュートから生まれた虎の子の1点を守り切り、開幕戦に続く連勝を果たした。

 しかし、試合内容はというと、相手にボールを保持されて押し込まれる場面も多く、主導権を握ってゲームを進めることができなかった。

開幕戦のガンバ大阪、第2節のサガン鳥栖と、2連勝を飾った鹿島アントラーズ

 特に後半の鹿島は、ほとんど前線にボールが収まらず、まったくと言っていいほど、攻め手を失っていた。60分には個人での打開力を持つMFカイオを前線に投入したが、事態を好転させるには至らなかった。鹿島の石井正忠監督は言う。

「前半、立ち上がりから守備で相手の攻撃を抑えられず、途中ある程度修正できて落ち着いたが、後半、また押し込まれてしまった」

 むしろ納得の表情だったのは、負けた鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ監督のほうだった。

「戦術的にも、技術的にも、フィジカル的にも、選手たちは非常にいいプレーをした。勝ち点なしでここを去るのは残念だ」
 イタリア人指揮官はそう言い、うっすらと笑みさえ浮かべていた。

 とはいえ、勝ったのは鹿島のほうである。力の差を見せつけて鳥栖を圧倒したわけではなかったが、では、鳥栖にどれほどの勝機があったかと言えば、疑わしい。

 後半は鳥栖が押し込む時間が続いていたものの、決定機と呼べるのは、試合終了間際のロスタイムにMF金民友(キム・ミヌ)が放ったシュートくらい。鳥栖のポイントゲッター、FW豊田陽平も、放ったシュートは前半の1本だけ。後半はシュートを打つことさえできなかった。

 確かに、鳥栖は鹿島陣内で試合を進める時間が長かった。だが、ゴールは遠かった。鹿島のセンターバック、DF植田直通が振り返る。

「どういう対応をすれば嫌がるのかを考えながら、豊田選手に(自由に)やらせないように気をつけた。先にボールに触らせないようにした」

 シンプルに前線へボールを入れようにも、ターゲットを自由にさせてもらえなかった鳥栖は、中盤で手数をかけざるをえなくなった。ボールは保持していても、なかなかいい形ではゴール前にボールが入らない。そんな状況に陥った。

 植田とのコンビでセンターバックを務めた、DF昌子源(しょうじ・げん)が語る。

「僕とナオ(植田)で、どちらかが豊田さんに競りにいったら、どちらかがカバーする。お互いそれができていた。それにセンターバックだけでなく、サイドバックもカバーできるポジションにいてくれたので、そこからピンチになることはなかった」

 豊田封じに成功したセンターバックコンビ。しかし、だからと言って鹿島の守備は、彼らだけが支えているわけではない。昌子は「守備と言うと、どうしても僕やナオやソガさん(GK曽ケ端準)が注目されがちだが……」と続け、こう言い添えた。

「それは、前線からの守備があるからできること。最後、僕らのところには(前線からの守備が機能することによって)限定されたボールしか来なかった」

 試合の流れを見極め、無理に追加点を狙いに行くのではなく、確実にリードを守って逃げ切る。昌子は「前線の守備からしっかりやるのが、鹿島らしいサッカー」と評したが、隙のないしたたかな試合運びは、なるほど、さすが鹿島だった。

 こうした対応には、敵将も舌を巻いた。フィッカデンティ監督は、「守備を優先して戦ったとき、鹿島のようなチームは強い。うまく戦われてしまった」と、悔しさをにじませながらも、相手を称えるしかなかった。

 もちろん、攻撃面、すなわち点を取ることに関しては物足りなさが残った。昨季ブレイクの兆しを見せたFW赤﨑秀平には、リズムよくプレーできていない印象を受けたし、カイオも攻撃の切り札としては十分な役割を果たせなかった。

 だが、攻撃は水物。長いシーズンに必ず波があり、相手の対応次第でも大きく変化する。鹿島が開幕からの2試合で奪った得点はわずか2点。それでも2試合連続1-0で勝ち点3をもぎ取っていくあたりに、鹿島の強さが際立つ。

 今季のJ1は昨季のトップ3、すなわちサンフレッチェ広島、ガンバ大阪、浦和レッズを「3強」に推す声が多い。しかしこの3クラブは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を並行して戦う難しさを抱えている。

 J1とACLを両立させることの難しさは、過去の成績が証明しており、ACLに出場しながらJ1で優勝した例は、最近5年では2013年の広島しかない。
 となれば、鹿島にとっては大きなチャンスだ。

 ACLのグループリーグが終わる5月のゴールデンウイークまでは、ACL参戦組は否が応でも過密日程を強いられる。その間に、こうして鹿島が手堅く勝ち点を重ねていけば、2007~2009年の3連覇以来となるJ1制覇は、グッと現実味を帯びる。

 J1開幕から2試合。鹿島は見るものを唸らせるほどの強さで他を圧倒しているわけでもない。率直に言えば、試合内容はまだまだだ。

 それでも“終わってみれば勝っている”ところに、まだ底の見えない、不気味な強さを感じさせる。

 今季J1の優勝争いは、「3強」だけのものではない。鹿島は間違いなくその争いに加わってくるはずだ。

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