日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年6月14日火曜日

◆ナイーブだったレッズ、老獪なアントラーズ。 J1の大一番を分けたもの(Sportiva)


http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2016/06/13/___split___j1_1/index.php

 J1ファーストステージ第15節、3位の浦和レッズと2位の鹿島アントラーズとの大一番(※浦和の消化試合が2試合少ないため、順位は暫定)。前半20分くらいまでは、浦和の勝利しか想像できなかった。それほど、ホーム・浦和の試合への入り方は素晴らしかった。

 選手たちの角度の作り方が絶妙ゆえ、ボールが1タッチ、2タッチで滑らかに回り、前線の選手たちの”つるべの動き(※)”もこなれているから、縦パスが面白いように入っていく。「立ち上がりは非常によかったと思います」と、浦和のDF槙野智章も胸を張った。

※選手の上下動の動き。誰かが下がれば、誰かが上がるといった動き。

 それは、対戦相手の鹿島・石井正忠監督も認めるところだ。
「前半は思っていた以上に縦パスを入れられ、少し押し込まれてしまった」

FW興梠慎三(写真)をはじめ、チャンスを決め切れなかったレッズ

 ところが、浦和のFW興梠慎三のヘディングが外れ、MF武藤雄樹のインサイドキックがバーを越え、MF梅崎司のクロスがクリアされると、少しずつ鹿島に反撃の機会を与えてしまう。

 そして、鹿島のFW金崎夢生が決定機を得て2本のシュートを放った。しかし、いずれもポストに直撃。この時点ではまだ、運は浦和に味方していたが、後半に入って、MF柏木陽介がボールを相手に渡し、DF森脇良太がトラップミス。さらに、MF阿部勇樹までもが相手にボールをプレゼントしてしまい、危険な香りが漂い出したとき、痛恨のミスが起きた。

 MF宇賀神友弥のパスが、そのまま鹿島のMFカイオにわたって速攻を許すと、MF柴崎岳、金崎とつながれて先制点を与えてしまう。

 その後、浦和は攻撃の手を強め、鹿島を押し込んだものの、終了間際にPKを与えて2点目を献上。力尽きた。

「ビルドアップでのミスは失点につながりかねない。失点につながるミスはいただけない。今日の敗戦を機にしっかりと学ばないといけない」

 そう振り返ったのは、槙野だ。その後の試合運びについても「自分たちのミスで失点したので、多少焦りはあったのかもしれない」と続けた。

 一方、武藤はチャンスがあったのに決められなかったことを悔やんだ。

「僕だけでも、4、5本のシュートシーンがあった。その中にはビッグチャンスもあったので、決められなくて申し訳ない気持ちでいっぱいです。決めないと勝てないし、鹿島は金崎選手が決めたから勝った」

 前がかりのときに相手にカウンターの機会を与えるミスを犯せば、失点の確率は高くなる。決めるべきときに決めなければ、当然のことながら白星は逃げていく。

 確かにふたりの指摘どおりだが、それ以上に気になったのは”ナイーブな”試合運びだった。あれだけ最高のスタートを切ったのに、ゴールを奪えないでいると、自ら焦(じ)れて逆襲の機会を許し、試合の流れをみすみす手放してしまった。

 先制されたあと、見方によっては浦和が再び主導権を取り戻したように見えた。しかし、実際はどうだっただろうか。ドリブル突破が武器のMF駒井善成を投入し、強引にサイドを崩しにかかったが、前半20分までのように、鹿島の守備陣を翻弄していたわけではなかった。

 今季の浦和が強さを見せつけたゲームのひとつに、第8節の川崎フロンターレ戦(1-0)が挙げられる。互いに攻撃力を売りにしたチーム同士による真っ向からのぶつかり合いは、浦和が90分間主導権を握り、1−0で川崎をねじ伏せた。試合後、川崎には「完敗」を認める者が何人もいた。

 うまくいっているときは、とことん強い。うまくいかないときに、どう戦うか。改めて、DF遠藤航がこの試合を振り返る。

「鹿島は守るときはしっかり守って、少ないチャンスをモノにするという戦いを徹底していた。そのことは理解していたし、僕らも焦らずやろうと思っていたんですけど、結果を見れば、鹿島のゲーム運びのうまさにやられた形になってしまった」

 流れが悪いときには、チーム一丸となってじっくりと耐え、あの手、この手で少しずつ主導権を奪い返して、自分たちの土俵に相手を引き込む――この日、鹿島が示した試合運びは、まさに浦和がこれから身につけなければならないものだろう。

 そうした老獪(ろうかい)な試合運びの中心に立つのは、今や「浦和は彼のチーム」と称されるようになった、柏木をおいてほかにはいない。


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