
日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月23日金曜日
◆レアル戦でも「いつも通り」の鹿島。“白い巨人”に奢り見えるも、追い込んだのはその実力【西部の4-4-2戦術アナライズ】(フットボールチャンネル)
https://www.footballchannel.jp/2016/12/22/post191162/
18日、クラブW杯の決勝が行われ、一時は鹿島アントラーズにリードを許すも、逆転でレアル・マドリーが勝利した。欧州王者に隙があったのは確かだが、鹿島に地力があったからこそ彼らを追い込むことができた。このたび『サッカー 4-4-2戦術クロニクル 守備陣形の復興と進化』(カンゼン/12月21日発売)を上梓した著者が、このファイナルにおける両クラブの戦いぶりを読み解く。(文:西部謙司)
ときどきのレアル、いつもの鹿島

すべてのポジションに世界最高クラスの選手を揃えて、「どうだ強いだろう」というのがレアル・マドリーというチームである。
選手たちのプライドは山よりも高く、タイトルと名のつくものはすべて獲って当たり前だと思っている。それはときに奢りとなって表れる。クラブワールドカップ決勝がそうだった。本気でなかったわけではないが、序盤にスイッチが入っていないのは明らか。鹿島アントラーズのせいではない。レアルはときどき、いや、ちょくちょくこういう状態になるのだ。
「気持ちに緩みがあるときは、ハーフタイムまでは修正ができない。ハーフタイムで修正できなければ試合終了までそのままになり、そうなるとたいがいは負ける」
日本代表や横浜フリューゲルスなどを率いた加茂周監督がよく言っていた。レアルは危うくそうなりかけていた。日本のクラブに負けて「世界一」を取り逃がすなど、あってはならないことだ。今年一番の番狂わせとして世界中でニュースになり、白い巨人は赤っ恥をかくことになる。
それが脳裏をかすめれば、大きなプレッシャーとしてのしかかってくる。状況はそうなっていた。が、さすがにレアルの選手は場馴れしていて動揺は小さかったようだ。決勝でほとんど失敗しないクラブでもある。ただ、そこまで追い込んだのは鹿島の実力だ。
世界一と世界一決定戦に勝つことの違い
鹿島のプレーはJリーグでのそれと同じだった。伝統の4-4-2、球際の激しさ、試合への態度など、普段の彼らと何も変わっていない。
Jリーグでも、浦和レッズや川崎フロンターレと対戦したときの鹿島はレアルとのゲームと同じようにプレーしている。相手にボールを持たれても恐れず、落ち着いて守り、ボールを奪えば効果的なカウンターを繰り出すが、無理だと思えばしっかりキープして押し返す。
J1の年間勝ち点3位だった鹿島が、いつもと同じサッカーでクラブワールドカップの決勝でレアルに善戦したことは、Jリーグ全体にとっても自信になったに違いない。
鹿島の先発11人はすべて日本人選手だった。一方、レアルのスペイン人はカルバハル、セルヒオ・ラモス、ルーカス・バスケスの3人。クラブワールドカップは外国人選手枠を統一していない。ロナウド、ベンゼマ、クロース、モドリッチなどの外国人選手がすべて抜けてしまえばレアルはもうレアルとはいえない。
クラブワールドカップにおける外国人選手の数の違いは不公平といえばそうなのだが、そもそもそこがJリーグとリーガ・エスパニョーラの差ともいえる。
クラブチームのサッカーは、クラブやリーグの持つ力、簡単にいえば財力の差が直接的に作用する。世界一リッチで世界一の選手たちを集めたレアル・マドリーはまさにその典型だ。
今回の決勝では鹿島にも優勝のチャンスがあったわけだが、仮にレアルに勝って優勝していたとしても、レアルと鹿島の力関係は変わらない。鹿島が世界一のクラブになるわけではなく、世界一を決める大会に勝利した栄誉があるだけだ。
1998年のワールドカップでフランスが優勝したとき、大会組織委員長だったプラティニが、「フランスは世界一になったのではなく、世界選手権に勝っただけだ」と冷静なコメントを残していたのを思い出す。
レアルに向いた監督、ジダン

サッカーは選手の年俸差がそのまま試合内容に反映されるわけではない。鹿島がレアルを倒すこともありうる競技である。ただし、常にレアルを倒せるだけの実力をつけるにはクラブやリーグの資金力、競技レベル、ステータスで上回らなければ難しい。それは途方もない道のりで、例えば日本代表がワールドカップで優勝ほうがずっと容易である。
ジネディーヌ・ジダンがレアル・マドリーを率いてまもなく1年が経過する。クラブワールドカップ決勝まで、わずか2敗しかしていない。獲得したタイトルはクラブワールドカップで3つめ(残りの2つは昨季のCLとUEFAスーパーカップ)。この勢いでタイトルを獲り続ければ、まもなく名監督の仲間入りだ。
レアルの監督を務めるのは非常に難しい。世界一の選手たちが揃っているのだから、監督にとってこれほど楽なチームはなさそうに思えるが、実はまったくそうではない。
まず、レアルに無冠は許されない。リーグ優勝して解任された監督がいたし、首位にいたのにクビになった人もいる。世界一の選手たちが揃っている以上、監督に逃げ場はない。成績不振は当然クビ、優勝しても内容が良くなければそれもクビ。言い訳は許されず、よほどの事情がなければ誰も何も待ってくれない。
そして、世界一の選手たちを揃えているはずなのに常にバランスが悪い。攻撃過多なのだ。歴代監督の戦術的な課題はいつも守備だった。レアルの補強戦略は補強というよりコレクションだからだ。
それは黄金時代の始まりだった1950年代からそうで、当時世界最高のアタッカーだったディ・ステファノを擁しながら、プレースタイルが丸かぶりするコパを引き抜いてきたのにはじまり、近年ではフィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカム、オーウェンと毎年1人ずつスーパースターを獲得し続けた「銀河系」の時代、BBC(ベンゼマ、ベイル、クリスティアーノ・ロナウド)にモドリッチとクロースがいるのにハメス・ロドリゲスを獲得した現在まで、ある意味一貫している。
ロナウド起用のツケ。キーになるのは割を食う選手
カゼミーロがレアルで不可欠の選手といわれるのは、彼が世界一のディフェンシブハーフだからではなく、代わりの選手がいないからだ。銀河系時代のマケレレと同じで、攻撃過多のチームを支えられる人材が1人しかいない。
スターを気分良くプレーさせておけば放っておいても得点はできるが、すべての選手を好き放題にプレーさせることもできない。スターとスターをつなぐ選手が必要で、アンチェロッティ監督のときはディ・マリア、ジダン監督ならルーカス・バスケス。スターの間でハードワークする選手、別の言い方をすれば割を食う選手がこのチームのキーマンになる。
ジダン監督は伝統のアンバランスを補正するために、フォーメーションの使い分けも導入した。
基本は4-3-3だが、ロナウドとベンゼマの2トップによる4-4-2、さらに3-5-2も使う。要は、ロナウドの使い方。本人が希望する左ウイングに置けば守備に問題が生じる。しかも背後をカバーするSBマルセロも攻撃型ときている。しかし得点源のロナウドは外せない。
そこでトップに残すわけだが、そのツケはベイルやルーカス・バスケスやイスコが負担することになる。それを納得させるうえで、ジダン監督のパーソナリティーと選手時代のカリスマ性は大きな助けになっているに違いない。
場合によってはロナウドとベイルまで撤退させているが、これができるのはおそらくジダンだけだ。
ジダンが真の名監督となるには、まだいくつかのハードルはあると思う。ただ、レアル・マドリーを率いるのに向いた監督であるのは確かだ。
千里の道の一歩

鹿島アントラーズはJリーグで最も多くのタイトルを獲得しているが、プレースタイルはひと言で表すなら「堅実」だろうか。極端に攻撃的でも守備的でもなく、戦術的にも特殊なものは何もない。
フォーメーションも基本的に4-4-2で変わらず。そして、そのままクラブワールドカップの決勝まで勝ち進み、レアル・マドリーに対しても、いつもどおりの鹿島だった。
クラブワールドカップの前身であるトヨタカップ(インターコンチネンタルカップ)が日本で開始したころ、まだJリーグはなかった。そのころはまだ、欧州と南米の王者による一騎打ちは雲の上の試合、遠くに仰ぎ見る山の頂のようだった。
やがて日本にもプロリーグが発足し、最初のステージ優勝を鹿島が成し遂げた。山の麓ぐらいまでは来ていたと思う。そして今、山頂目前の絶壁へJリーグのクラブが手をかけた。
そこまでと、ここからには、また違いはある。だが、最初に頂上アタックを開始したのが鹿島だったのは感慨深い。Jリーグ開幕から、歩調を変えずに進んできた。
住友金属サッカー部から踏み出した一歩と、クラブワールドカップ決勝での一歩が、同じ一歩だと感じさせてくれるクラブ。相手がレアルでも、世界一を決める舞台でも、一歩は一歩。いつもどおりの鹿島であり、だからこそあれだけの試合ができたのではないか。
(文:西部謙司)
【了】
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