日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月14日水曜日
◆FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016 準決勝(オフィシャル)
http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/51934
FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016 準決勝
南米王者を3-0で撃破!鹿島、日本・アジア勢初のクラブワールドカップ決勝進出!
日本、そしてアジアのクラブが見たことのない景色へ、鹿島がたどり着いた。FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016、準決勝。南米王者、アトレティコ・ナシオナルと対戦した鹿島は、33分に土居のPKで均衡を破ると、相手の猛攻を受け続けながらも必死に耐えしのぐ。そして83分、遠藤が華麗なヒールシュートで2点目。85分には出場間もない鈴木がゴールネットを揺らした。3-0。南米王者を撃破した。
鹿島は3日前の第2ラウンドで、アフリカ王者のマメロディ・サンダウンズを2-0で破った。前半は相手に圧倒され、猛攻を浴びて耐えしのぐ時間が続く。決定機を何度も作られたが、曽ケ端が鬼神の如くビッグセーブを連発。百戦錬磨のベテランが最後の一線を割らせず、チームを救った。そして迎えた後半、鹿島は前半とは見違える動きを見せる。
あれから、再び中2日。試合翌日のリカバリートレーニングを終えると、すぐに試合前日となる厳しい日程だ。14日、選手たちは雨の大阪で最終調整を行った。報道陣に公開された冒頭15分、選手たちはリラックスした表情でボールを追う。レクリエーション要素を盛り込んだトレーニングでは笑顔も見られた。身体的な疲労の蓄積はあれど、クラブワールドカップで戦っていることの誇りと高揚感が選手たちを突き動かす。チーム全体に漂う充実感と自信、さらなる勝利への渇望。石井監督は「アントラーズの良さは、短期決戦の中で最後まで諦めない精神力の部分」と語った。南米王者を前にしても、目の前の試合に集中して勝利だけを目指す姿勢は何ら変わらない。
指揮官はマメロディ・サンダウンズ戦から先発メンバーを1名変更。キャプテンの小笠原をボランチの一角に指名し、柴崎とのコンビでチームの舵取りを託す。攻撃のユニットは第2ラウンドと同じで、前線は赤崎と土居のコンビ、2列目は中村と遠藤が並んだ。最終ラインは右から西、植田、昌子、山本の並びで、3日前に渾身のビッグセーブを連発した曽ケ端が最後尾に立ちはだかる。そして、先発11名以外の残り12選手全員がベンチ入り。GKの櫛引と川俣、ブエノ、ファン ソッコ、伊東、永木、ファブリシオ、三竿、杉本、金崎、平戸、鈴木が控える。
前日は冷たい雨が降り続いた大阪。試合当日は厚い雲に覆われ、厳しい冷え込みに見舞われた。それでも、市立吹田サッカースタジアムは世界大会特有の雰囲気と熱気に包まれる。16時30分にキックオフを迎えた5位決定戦を終え、アントラーズとアトレティコ・ナシオナルのサポーターがスタンドをチームカラーで染め上げた。大挙して詰めかけたアトレティコ・ナシオナルの歌声を、アントラーズレッドの情熱が切り裂く。19時30分、セミファイナルの幕開けを告げるホイッスルが鳴り響いた。
開始早々、敵陣右サイドで得たスローインから赤崎がシュートを放つ。オフサイドとなったが、立ち上がりからゴールへの意欲を示してみせた。6分には遠藤が蹴った右CKに山本がピンポイントのタイミングで飛び込み、惜しい場面を作ったものの、わずかに合わなかった。ただ、序盤から得点の予感は漂っていた。
10分を過ぎたあたりから、アトレティコ・ナシオナルが攻撃の圧力を強めてきた。両サイドを広く使われ、最終ラインを深い位置まで押し下げられる時間が増えていく。12分にはペナルティーエリア手前から強烈なグラウンダーのシュートを打たれたが、曽ケ端が右手1本で弾き出した。第2ラウンドに続いて、百戦錬磨の守護神は今日も鬼神の如きシュートストップを繰り返すこととなる。
14分、鹿島に最初の決定機。中村がペナルティーエリア手前からドリブルで仕掛け、持ち前のテクニックでタイミングを外してからラストパスを通す。エリア右側で待っていた遠藤が得意の左足で狙ったが、ループ気味のイメージで放たれた一撃は枠の左へ逸れてしまった。18分には昌子が最終ラインから対角線上のフィードを遠藤へ。右サイドの深い位置で起点を作ると、機を見た攻撃参加を敢行した柴崎が後方から切れ味鋭い中央突破。ペナルティーエリアに入って相手GKと1対1のチャンスを迎えたが、スライディングシュートは阻まれてしまった。
鹿島が決定機を立て続けに作り出したことで、アトレティコ・ナシオナルも攻撃のギアを上げた。22分、ペナルティーエリア手前からのループパスから打たれたシュートは枠のわずか外へ。23分には鹿島の左サイドからクロスを上げられ、ファーサイドからのボレーシュートがクロスバーを直撃する。さらにこぼれ球に反応した相手にシュートを打たれたが、今度は昌子がゴールライン上で渾身のクリアを見せた。
激しいボディコンタクトの連発となり、ピッチは熱を帯びていった。そして30分、突然、プレーが中断となる。2分前、柴崎が蹴ったFKに反応した西が相手選手との競り合いで倒された場面がビデオ判定(VAR)の対象となり、鹿島にPKが与えられた。今大会で導入された新技術によって、先制ゴールの絶好機を得ることとなった。
クラブの歴史において、いや世界サッカー史において極めて重要な意味を持つと言っても過言ではないPK。ボールを持ち、ペナルティースポットへ向かったのは土居だった。「誰もボールのところに行かなかったから、自分が」と、勇敢にチャレンジへと向かった。そして右足を振り抜くと、ゴール左隅へ思いを込めたシュートを突き刺した。33分、土居聖真。1-0。鹿島が南米王者からリードを奪った。
勢いに乗った鹿島は2分後、柴崎が放った正確無比の左CKに反応した植田が誰よりも打点の高いヘディングで枠を捉えたが、会心のシュートは相手GKのファインセーブに阻まれた。簡単には2点目を取らせてくれない。南米王者のプライドが立ちはだかった。
前半終了間際も、アトレティコ・ナシオナルは波状攻撃を仕掛けてきた。43分、ペナルティーエリア内で3人のマークを振り切られて打たれた至近距離からのシュートは、曽ケ端が間一髪のセーブで弾き出した。さらにアディショナルタイムにも相手のシュートがクロスバーを直撃し、その直後に枠を捉えられたボレーも昌子がゴールライン上で起死回生のクリア。肝を冷やす場面の連続だったが、無失点で前半を終えた。
後半立ち上がり、早い時間に同点ゴールを狙いに来たアトレティコ・ナシオナルに押し込まれる時間が続いた。指揮官は54分に金崎、58分には永木を投入。早いタイミングで2枚の交代カードを切り、守備のさらなる安定を図る。それでも、自陣で耐えしのぐ時間が続いた鹿島。植田が激しいエアバトルを繰り返し、昌子は1対1の対応で無類の強さを誇示してみせた。西と山本はサイドでの攻防で粘り強く戦い続けた。
しびれるような時間が続き、1点差のまま、試合はラスト15分へ。焦りが見え始めた相手に対し、敵陣でボールを持てる時間が少しずつ増えてきた鹿島だが、待望のゴールには至らない。時計の針が進むのが遅く感じられた。それでも、全員がチームのために走り続けた先で、歓喜の時が待っていた。
83分、左サイドでボールを持った柴崎が左足でクロスを上げると、ゴール前へ飛び込んだ遠藤、相手GKとの間でボールがこぼれる。いち早くこぼれ球を確保した背番号25は、華麗なボールタッチで右足ヒールシュート。鮮やかにゴールへと届けた。2-0。勝利へ前進する追加点が決まった。
世界はこの時点で驚いていただろう。しかし、まだ終わってはいなかった。2点目の直後、相手のキックオフ前にピッチへと解き放たれた20歳の若武者が「次は俺が決める」という言葉を現実のものにしてみせた。84分に投入された鈴木が1分後に3つ目のスコアを刻む。右サイド深くから金崎が上げたクロスに飛び込み、ゴールネットを揺らした。
3分と表示されたアディショナルタイムを終え、鹿島がついにファイナルの舞台にたどり着いた。3-0。南米王者をクリーンシートで撃破し、日本勢、そしてアジア勢初のクラブワールドカップ決勝進出を決めた。歴史に新たな1ページを刻んだ瞬間だった。
決勝は18日、横浜国際総合競技場での戦いとなる。中3日で迎えるファイナル。そこに立てるクラブは世界に2つだけ。誇りを胸に、頂点だけを目指して。チームは横浜へ戻り、来るべき決戦に向けて準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・クラブワールドカップ初出場で、日本勢、アジア勢初となる決勝進出を決めた。
・遠藤が2試合連続ゴールを決めた。
・土居と鈴木が今大会初ゴールを決めた。
・土居の先制点となったPKは、西が受けたペナルティーエリア内でのファウルからビデオ判定(VAR)により得たPK。世界初。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
アトレティコ・ナシオナル:レイナルド ルエダ
[試合後]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
相手チームの攻撃力、技術の高さには驚かされた。それに対して、うちはしっかりと組織で守る形を90分間、作ることができた。そうして決勝に進むことができた。現場の選手やスタッフだけではなく、クラブ全体で勝ち取った1勝だと思う。クラブにとっても、日本のサッカーにおいても新たな歴史、一歩を踏み出すことができて良かったと思う。
Q.金崎選手と永木選手を投入するタイミングが早かったが?
A.相手の攻撃力が高かったので、点を取られず、自分たちが点を取ることを考えて2人を入れた。亮太については守備の安定を考えて入れたが、そこからの攻撃力もある。そこを期待して投入した。
Q.ビデオ判定についてどのように考えるか?
A.試合の途中で一旦、流れが止まってしまうが、しっかりと判定してもらえれば公平な形でジャッジができる。1つのシステムとしては良いかなと思う。ただ、あれが試合中に何度も繰り返されるようであれば、試合の流れが途切れてしまうので、また何か考えないといけない。
Q.選手たちが非常に落ち着いてプレーをしていて、パニックに陥ることなく、アントラーズのサッカー文化を体現したと思うが?
A.まずはチームとして、しっかりとした守備の形を作ることをやり続けていた。試合中に選手たちがベンチを見て指示を仰ぐのではなく、選手たちが試合中に判断しながらプレーするチーム。慌てることなく、うまく対応できたと思う。勝利に対する執着心があって、チームのために全員が、一人一人が役割を全うするチームなので、そのあたりが出ていたのではないかと思う。
Q.センターバックの2人、相手の9番に対して非常に良く頑張っていたが
A.若い2人だが、相手の強力なFWに対してしっかりと対応したと思う。前半はボックス内でボールを受けられることが多かったので、違う守備の仕方を考えないといけないとも思う。今日の試合の出来は良かったが、もっともっと、センターバックとして良くなっていってほしいと期待している。
Q.先制点の影響、そしてテクノロジー(ビデオ判定)については?
A.先制点は試合の中でかなりのウェイトを占めるので、うちとしては(先制できたことが)有効だったと思う。テクノロジーについては、試合の流れが途切れてしまうのは少し、自分としてはどうかなとは思う。長い時間をかけずに判定できるようなことがあれば、もしかすると、もっと良い形になると思う。
Q.後半26分頃、敵陣でセットプレーをもらった時に昌子選手を呼んで話をしていたが?
A.守備の対応の部分で、相手のボランチがかなり浮いていて、FWが下がってみる形だったので、そこを整理する意味で話をした。源のほうから話があったので、こちらからはっきりと伝えた。
Q.前半、左サイドをスピードで突破されたが、どのように臨んだのか?
A.最後の最後の対応の部分では跳ね返していたので、それは良かったと選手に伝えた。ただ、何度か左サイドの脩斗のところで、後半は違うやり方でやってくれたと思う。相手の特長もわかってきていたので、うまく個人で対応できたと思う。
Q.この相手に対して、守り方のポイントをどこに置いていたのか?
A.最終的には中央のところにゴールへのポイントがあると分析していた。そこが試合のポイントになると思っていた。かなり細かく(パスを)つないでくるという印象はあった。もう少し、前の選手にくさびが入ってくるようなことを想定していたが、じっくりと相手を引き付けながらスピードアップしてくる印象があったので、そこが思っていた以上だった。
Q.この勝利がこのチームにとって、アジアや日本のサッカーにとってどんな意味を持つか?今回は日本の代表として出ているが、アジア王者ではなく出場している点は?
A.まずは、このクラブワールドカップで南米代表やヨーロッパ代表の壁が非常に厚かったので、そこを1つ破れたことは、このクラブにとっても日本のサッカーにとっても非常に価値があると思っている。そして今回は開催国枠で出たことになるが、チャンピオンシップを勝ち抜いて出場させてもらった。今度はアジアチャンピオンとして出たいという気持ちになった。
アトレティコ・ナシオナル:レイナルド ルエダ
前半でオルランド(ベリオ)が相手の選手とぶつかった場面(PK)があったが、故意ではなかった。先制点を決められてしまったことで、秩序が乱れた部分があった。いつもは秩序を守ってプレーしているが、今日は我々がリスクを冒し、そこを相手に利用されてしまった。我々は過信していた部分もあったかもしれない。この結果によって、非常に苦い思いを感じている。
選手コメント
[試合後]
【曽ケ端 準】
何よりも勝てたことが非常に嬉しい。しっかりとファイナルに向けて準備できればいい。アントラーズだけでなく、日本のクラブとして初めてのファイナルだし、この一歩がないと「準決勝は難しい」という形になってしまう。アントラーズにとっても日本のサッカーにおいても大きな一歩だと思う。やるからにはしっかりとやらないといけない。
【柴崎 岳】
石井さんも言っていたように、大会当初から4試合に勝つことが目標だった。あと1つというところまで来たので、次もしっかりと勝ちたい。しっかりと準備をしてベストを尽くして勝ちたい。
【植田 直通】
決勝に進めるのは良いこと。試合内容は納得するようなものではなかった。試合前から守備陣は「無失点でいこう」と話していた。その通りになって良かった。まだ何も勝ち得たわけではない。次も勝てるように準備をしたい。
【遠藤 康】
ラッキーゴールだった。今日も後ろの選手が頑張ってくれた。後ろの選手に感謝したい。ボールをもっと持ちたかったけど、相手がうまかった。前半を無失点で抑えれば何とかなると思っていたが、PKで点が取れて戦い方が変わった。前半に失点していたら、焦っていたかもしれない。相手の攻撃に対して徐々に対応できていた。ソガさんが止めてくれた。感謝したい。
【山本 脩斗】
対峙した相手がすごくうまくて、パワーもスピードもあった。良い経験が出来た。前の選手が決めてくれて良かった。90分間、攻守に集中していたと思う。途中出場した選手も含め、皆で勝ち取った勝利。自信になるし、3-0で勝てたことは大きい。
【土居 聖真】
PKはきっかけがあれば蹴りたいと言っていた。キッカーは決まっていて、その中に自分も入っていた。誰もボールのところに行かなかったので、自分が持っていった。自信を持って蹴った。駆け引きで勝ったと思う。GKが動いたし、練習でも外したことがなかった。
【昌子 源】
攻められていても最後にやらせなければ良いけど、ほとんど覚えていない。ソガさんが守っているし、そう簡単にはやられないと思っていた。ナオとは「とにかく弾くぞ」と話していた。
【鈴木 優磨】
夢生くんから良いボールが来た。「夢生君へのお膳立てはもういらない」と話して、今日は返してもらったが、まだこんな物じゃ足りない。夢生君とは良い関係でできている。夢みたいなことが起きている。前半は危ないシーンがあった。前回もそうだったけど、ソガさんに感謝したい。
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