日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月14日水曜日
◆高校時代の宿敵が鹿島の盟友に。 昌子源と赤崎秀平、'09年の邂逅。(Number)
http://number.bunshun.jp/articles/-/827063
現在、クラブワールドカップを日本王者として戦っている鹿島アントラーズ。初戦でオセアニア王者のオークランド・シティ(ニュージーランド)を2-1、準々決勝でアフリカ王者のマメロディ・サンダウンズ(南アフリカ)を2-0で破り、12月14日には南米王者のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)と戦う。
この鹿島の勝ち上がりに大きく貢献している2人の選手を見ていて、私はふと「ある情景」が脳裏に浮かんだ。それを思い出し、当時の取材ノートを振り返ってみると、非常に懐かしい思い出の一戦が鮮明によみがえってきた。
鹿島で攻守に輝きを見せる赤崎と昌子。
FW赤崎秀平とCB昌子源。
昌子は日本代表にも選出され、鹿島の最終ラインを担う存在で、クラブワールドカップでも対人の強さとボール奪取の上手さ、そしてラインコントロールで変わらずの存在感を放ち、「堅守・鹿島」を体現している。
赤崎はゴール前での駆け引きが上手く、スペースに飛び出してフィニッシュに持ち込むプレーが非常に速い。
オークランド・シティ戦では、54分にファブリシオに代わって投入されると、0-1で迎えた67分に強烈なミドルシュートを突き刺して貴重な同点ゴールを奪った。続く準々決勝のマメロディ・サンダウンズ戦ではスタメン出場を果たすと、ここでも大仕事をやってのける。
0-0で迎えた63分に、柴崎岳のロングパスに抜け出し、飛び出して来た相手GKを胸トラップでかわすと、ファーサイドの土居聖真に糸を引くようなピンポイントクロスを送った。赤崎のボールを土居がヘッドで折り返して、遠藤康が決勝弾となる先制点を叩き込んだ。
アトレティコ・ナシオナルとの準決勝でも活躍が期待されるこの2人。
思い浮かんだある情景とは、2009年8月7日、奈良県立橿原公苑陸上競技場でのものだ――。
インターハイ準決勝・米子北高校vs.佐賀東高校。
共に初のベスト4進出の快進撃を遂げたチームを牽引していたのは、2人のタレントだった。
有名選手だった赤崎とほとんど無名だった昌子。
米子北の2年生CB昌子源と、佐賀東のエースストライカー・赤崎秀平。
赤崎は3年生で、U-18日本代表に選出されるなど、すでにプロのスカウト陣が争奪戦を繰り広げている注目株で、昌子はこの時点では全く無名な存在だった。
だが、この試合で昌子の評価は一気に高まったのだ。
エース赤崎と無名CB昌子のマッチアップは、この試合で高校レベルとは思えない激しい攻防を繰り広げたのである。
この試合には、後のJリーガーがこの2人を含めて5人いた。
米子北には昌子の他に3年生FW山本大稀(現・栃木SC)、2年生FW谷尾昂也(元・川崎、現・ヴァンラーレ八戸)。佐賀東には2年生MF中野嘉大(現・川崎)と、将来を感じさせる才能ある選手たちがピッチに立っていたことになる。
鮮やかに蘇る――赤崎vs.昌子の対決。
試合はハイレベルなもので、中野を中心としたポゼッションから赤崎の飛び出しを活かしてゴールを重ねて来た佐賀東と、昌子を軸にした堅守と、山本と谷尾のツートップの破壊力で勝ち上がって来た米子北とは、いい勝負となった。
個性が全く違う両者の戦いの中で、ハイライトは赤崎vs.昌子のマッチアップとなった。
「相手が上手ければ上手い方が、注目されていればされている方が、燃える」
昌子のプレーはまさに鬼気迫るものがあった。
それに対し、赤崎も常に動きに変化を加えながら、昌子のマークを振り切ろうとしていた。
立ち上がりからバチバチの2人。
19分には赤崎が右からドリブルでカットインして昌子を振り切ると、強烈な左足シュート。これはGKのファインセーブにあうが、赤崎が昌子に示した挨拶代わりの一撃となった。
鮮やかなボレーシュートを見せた赤崎。
23分に谷尾のゴールで米子北が先制すると、これを皮切りに両チームの攻防は一層激しくなっていった。
31分、佐賀東の左からのクロスをボランチの選手がヘッドで落とす。赤崎が昌子を背中でブロックしながら、腰より上に跳ねたボールを、身体をねじらせながら右足ボレーで叩く――ゴールを背にした状態から放たれたループボレーシュートは、鮮やかな軌道を描いてゴールに襲いかかるが、これが米子北GKが必死に伸ばした手に当たり、コースが変わるとそのままバーを直撃した。
ゴールこそならなかったが、赤崎の圧巻のシュートに会場は大きくどよめいた。
後半に入って、さらに米子北が追加点。
そして、その直後に佐賀北が1点を返して……激しさが増す試合展開に、昌子のディフェンスもますます熱くなり、前半は数回のチャンスを作り出していた赤崎も苦しめられ始めた。
容赦なく赤崎を潰しにかかっていた昌子。
昌子はどれだけ相手がパスで揺さぶってきても、赤崎を視界から外すこと無く、ボールを持ったら容赦なく潰しにかかった。
赤崎はそれを嫌って、時には中盤に落ちてボールをさばくなど、どうにかして昌子のマークを振り切ろうとした。だが、後半は赤崎へのサポートが少なくなり、同点に追いつくことが出来なくなってしまった。
試合はそのままタイムアップの時を迎える。
米子北が佐賀東を2-1で下して、決勝進出を果たした。
観客の記憶に残るプレーができる選手こそが一流。
勝利の雄叫びを挙げる昌子とその場でうつむく赤崎。
この時、彼らはお互いがプロの世界でチームメイトになるとは思ってもみなかっただろう。いや、もしかするとプロの舞台で対戦相手として顔を合わせることになる――と直感していたかもしれない。
奈良の地で熱く燃え上がった2人のタレントのバトル。この一戦は印象深い戦いとして、筆者の記憶に深く刻まれた。
そして、その一戦を鮮明に思い出させてくれた、2人をメインキャストとするプロの舞台での躍動。観客の記憶に残るプレーが出来ることこそ、一流の証であると改めて感じさせてくれた。
もちろん他にも多くの思い出がある。もし機会があれば、鮮明に思い出したときにここでコラムとして記したいと思う。
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