日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年8月30日水曜日

◆ジーコの監督論「黒子に徹し最後に決断」/岩政大樹(ニッカン)




 サッカー元日本代表DF岩政大樹(35=関東1部リーグ東京ユナイテッド所属)が、かつて自身も所属したJ1鹿島アントラーズの「神様」ジーコ氏(64)と語り合った。

 岩政はスカパー!のサッカー情報番組「スカサカ!ライブ」の対談コーナー「今まさに聞く!」のメーンキャストとしてジーコ氏と対談。ブラジルの英雄はなぜ日本にやって来たのか? 当時抱いた思いは? 現役選手であり解説者という自らの現在の立ち位置から、ジーコ氏の胸の内を根掘り葉掘り聞いた。

 8月30日(水)の初回放送(18時20分~)を前に、サッカーファン必見のインタビューの一部を紹介する。

      ◇   ◇

 <岩政>

 日本に来られた後に監督を意外といろんなところでされていたなというのが僕の印象です。現場をやられるという印象は元々なかったんですが、そこからいろんな所に行かれたっていうのは日本での監督経験というのはやはり大きかったですか? それに監督に対する自分のやってみたいという気持ちが出たのかな? というところをうかがいたいのですけど。

 <ジーコ>

 選手の時は監督をやるなんて思いもしませんでしたし、望みませんでした。ただ1度だけ(1999年に)鹿島を率いなくてはならない状況になりました。リーグ戦の最中で残り数試合の時にほかの監督を探す時間がないということで、自分が望んでいたわけではないですが自分しかいないと思って総監督を引き受けました。タイトルとかは望める状況ではありませんでしたが、そこで監督というものを最初に意識しました。もう少し細かく言うと前年(1998年)に初めて年間優勝をして監督がゼ・マリオで、(1999年は)前期が終わったときに鹿島の歴史上初めて降格圏にいました。

 後期が始まっても鹿島は調子が上がらないそこで降格危機という電話を受け、ほかの監督を呼ぶと適応するのに時間がかかるだからこそ「私が行かなければまずい」と思いました。13試合しか残っていない中で降格圏、それでもそこから連勝もしましたし8勝あげ、残留も果たし、実際に監督の仕事をしたからこそ興味がわきました。しかし鹿島で監督を続ける気はなかったのでセレーゾ監督を紹介しました。それでも私の監督としての姿を川淵さん(当時の日本サッカー協会会長)は見ており、2002年に「日本代表監督をやってくれないか」と話をいただいて「やりましょう」と答えました。そのときは監督の面白さを感じ始めていました4年間務めさせてもらってW杯に行けたという経緯です。

 <岩政>

 僕も今日本の5部リーグにあたる社会人リーグでサッカーをしていまして、そのチームが僕を誘ってくれた時にこのチームのジーコになってくれと言われて行ったんですけど、ご自身が鹿島に行ってみようと思われた最初のきかっけは何だったんでしょうか? 本音のところを聞かせていただけますか。

 <ジーコ>

 (鹿島の前身・住友金属のオファーを受けた1991年は)現役を引退して2年が経っていました。左ひざを4回も手術しましたし外国に行ってサッカーをやるなんて考えてもいませんでしたが、それでも「ジーコさんの経験を生かしてください」というオファーが魅力的だったんです。日本もアマチュアからプロ化するということで私も何かできるのではないかと。どういう形かは具体的にわかりませんでしたが自分の経験を伝授できると思いました。

 岩政さんへのアドバイスとして数多くの監督が世界中に存在していて1人1人やり方は違います。チーム作りや選手の良さを引き出すというときに岩政さんが言ったことを選手たちが本当の意味で信用する、信頼するという関係を作ることが一番大切です。どれだけ素晴らしいキャリアを持っていても選手たちが岩政さんを信じなければ意味がない。私もそうでしたが、いい監督につくことが重要でした。岩政さんが鹿島で学んだセレーゾ・アウトゥオリ・オリヴェイラはブラジルでも有数の監督たちです。彼らの良いところや影響の受けたところを自分のものにして、それを選手たちに伝える。

 先ほども言いましたが、選手たちが岩政さんの言葉を信じるために関係を築くことが一番重要です。戦術面からすべて自分の思い通りに動かしたい監督がいますがそれはどうかなと私は思います。試合がある中で勝敗は25%が監督の責任。主役は選手なので、後は選手の責任だと思います。監督がするべきなのは試合が終わって出た課題を克服して次の試合に備えることで、その積み重ねでチームを良くするために黒子に徹するというのが重要です。

 一番大切なのは選手に自信を持って練習させコンディションを作り上げてあげることで、実際にピッチに立つのは選手なので、先ほど言った人間関係がないとうまくいかない。この練習をやれば大丈夫という考えにさせて試合中は選手たちの自主性で進めさせ、その雰囲気作りを黒子に徹してやるという意味で、25%が監督の責任と考えています。岩政さんはルックスもいいし黒い髪の毛もあります。これが数年したら見るも無残な姿になりますよ(笑)。監督とはそういう仕事です。

 <岩政>

 やっぱり監督ってチームを作ったり、もしくは人を作ったりするってすごく面白いことの一方で孤独な職業だと思うんですが、そこで感じるのは楽しみですか? 苦しさですか?

<ジーコ>

 良いか悪いかは別として非常に複雑な部分が多いのは間違いないです。私の場合はクラブでも代表でも良い側近とチームを作れたというのが喜びです。選手もそうですが「自分が自分が」と思うとうまくいかない。周りの人間関係を生かして良い結果を出せる環境を自分でいかに作りだすか。特に監督はすべて自分で決断します。選手さらにはマッサーや理学療法士など自分の専門外のことも登用するのは監督であり、その選択が正解だと良い仕事ができるベースになります。

 そして最後は監督の決断ですべてが決まります。監督は「お前のせいだ」と責めることはできません。自分が選んだ任命責任がありますから。最後には自分が責任をとる。そうならないために良い仕事ができる周りを選ぶのです。それでも勝敗はつきますから自分が信じていたら責任を取れます。その見定めも重要です。

 鹿島の石附次郎さんを覚えていますか?(現鹿島LSC監督)当時マッサーをしていました。ひとつエピソードがあります。当時彼は若くてマッサージ専門でした。ある時、私が「あさっての試合君が監督だったら誰を選ぶ?」といきなり聞いたら、彼はびっくりして耳まで真っ赤でした。「君の責任にしない。どういうチームを選ぶか聞きたい」と2人きりのときに話しました。

 当時、石附次郎は小笠原満男の写真をポケットに入れて持っていたくらい大ファンでした。「そこまで言うなら私はこういうメンバーを選びます」と、もちろん小笠原満男も入っていました。一般的な鹿島ファンなら選ぶであろうメンバーでした。私は「なるほどね」と9割思いましたが、残りの1割足りなかったのは私だったら小笠原満男ではなく熊谷浩二を使っていたからです。自分の頭がいっぱいになった時、そのような会話をすると得るものがあることもあります。もちろん最後は岩政さんが監督だったら自分で決断しなければいけません。ただ頭が固くなりすぎるのは良くないので、いろいろな人の意見を聞くのも一つの手です。ちなみに後半、小笠原を投入したらゴールしました(笑)。

 ◇初回放送 「スカサカ!ライブ」presents今まさに聞く ~元日本代表監督ジーコ篇~8月30日(水)18:20~18:50 スカサカ!(CH800/580)で。再放送多数。

ジーコの監督論「黒子に徹し最後に決断」/岩政大樹


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