【ヘタフェ(スペイン)24日=豊福晋】ロシアW杯アジア最終予選、オーストラリア戦(31日・埼玉)、サウジアラビア戦(9月5日・ジッダ)で約1年10か月ぶりに日本代表に復帰したMF柴崎岳(25)=ヘタフェ=が、6大会連続のW杯出場がかかる2試合に向け「選ばれた人間の覚悟を見せる」と意気込みを語った。FW大迫勇也(27)=1FCケルン=は7月下旬に負傷した右足首に問題がないことを強調した。
久しぶりに日の丸のユニホームに袖を通す機会は、日本の命運を左右する大舞台となった。15年10月の親善試合、イラン戦以来の代表復帰。柴崎は気負いも、浮かれることもなく、静かな口調で意気込みを語った。
「とにかく大事な試合。うれしさより、勝たないといけないという気持ち。今までやっていたことを自信を持ってやるだけ。代表に行って何かを変えるわけでもない。いつも以上のプレーはできないし、その時の自分のベストを尽くす」
今年1月、安定した鹿島での選手生活を捨て、スペイン2部テネリフェに移籍。念願の海外挑戦をスタートさせた。
「世界、特にW杯で外国人選手を相手に戦うとなったとき、そういう環境に慣れてないと結果を出せる可能性は低いかなと思った。このまま日本でやっていても、実際に世界の舞台に立った時に力を発揮できるか疑問があった。それを変えたかった」
世界での活躍を念頭に置いた挑戦は、入団後に胃腸の不安や急激な環境の変化に苦しみ、デビューは3月19日のレウス戦(0●1)まで遅れた。だが少しずつ適応すると主力として存在感を発揮した。1部昇格は逃したものの、プレーオフでは1得点2アシストの活躍を見せて1部ヘタフェへステップアップ。スペインの地は若武者を強くした。
「海外に出て良かった。日本にいるときには気がつかなかったけど、海外の第一線で活躍している選手は半端じゃない環境に身を置いている。Jリーグのチームは外国人選手に対してすごく優しい。活躍してほしいから優遇して、いろいろやってあげる。自分はそれが当たり前だと思っていたけど、こっちで、そこまでしてもらう日本人は誰一人いない。来てみないと分からなかった」
本職はボランチだが、テネリフェではトップ下でもプレーし、ヘタフェでは20日の開幕戦(ビルバオ戦)で2トップの一角に入った。
「求められたらやらなきゃいけないのがプロという部分と、その逆で譲れないところもある。でも今は伸びしろというか、もっと成長できると思えたのは、いろんなポジションに挑戦させてもらえたから。自分にできないことが見えてくる。無駄ではない。25歳だけど、自分に対して可能性が見えてきた」
代表通算13試合3得点だがW杯最終予選は初。日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(65)はトップ下として選出した。左肩脱臼から実戦復帰したばかりのMF香川のコンディション次第では、オーストラリア戦で先発の可能性がある。
「出る選手、ベンチ、ベンチ外のメンバーも含め一丸とならないと。批判や不満とかも今はのみ込んで一つの方向に向かっていくことが大事。選ばれた人間の覚悟というか、W杯に行くんだという強い気持ちを見せる」
少し遠回りした分、人として選手として強くなった柴崎が、W杯切符獲得のキーマンとなる。
強くなった柴崎、スペイン挑戦で「自分に可能性見えてきた」1年10か月ぶり招集