国際親善試合 日本1―3ブラジル ( 2017年11月10日 フランス・リール )
ボールが右サイドのタッチラインを割ると、主審が不意に逆サイドに走りだした。前半9分から1分近く試合が中断。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の結果、前半7分に吉田がペナルティーエリア内で反則を犯したと判定された。直後のPKをネイマールに決められて先制を許すと守備が崩壊。前半17分に井手口のクリアミスを拾ったマルセロに豪快なミドル弾を決められ、前半36分には久保がボールを失い速攻から失点した。
ハリルジャパン初の世界トップ10との対戦は、ハーフタイムを待たずに勝負の大勢は決した。それでも指揮官は「後半だけで言えば1―0で勝っていた」と豪語。明らかな完敗だったが「二面性のある試合だった。前半は残念で、後半は満足。ビデオ判定でチームのバランスが少し崩れてしまった」と悲観はない。試合終了直後にはピッチ上に選手を集めて円陣を組み、後半の戦いぶりを称えた。
だが、後半に押し込む時間帯があったのは、相手がペースダウンしたからに他ならない。堅守速攻のスタイルが強豪相手に真価を発揮するとの幻想も崩れた。引いてブロックを組んだ時の守備は安定感を見せたが、ボールを保持するとミス絡みでボールを失い速攻を食らう場面が頻発。堅守速攻は世界的なスタンダードになりつつあり、強豪相手に日本の戦術ははまらなかった。井手口をトップ下に配置する新ユニットも連係不足。香川、本田、岡崎の招集を見送った一戦で、世界との距離を思い知らされた。
アジアレベルでは失点に直結しなかったミスが命取りになることを体感できたことが数少ない収穫。指揮官は国際Aマッチ100試合出場となった長友に主将を託したことにかけ「最後に選手には“佑都が主将だったから負けた”と言いました」と冗談を飛ばし、微妙な空気が流れた。中3日で迎えるベルギー戦にも完敗すれば、指揮官のジョーク以上に笑えない状況に陥る。