日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2018年8月6日月曜日

◆2018明治安田生命J1リーグ 第20節(オフィシャル)



西大伍 Daigo.Nishi


明治安田J1 第20節

西が劇的決勝弾!鹿島が清水を撃破、3試合ぶり勝利!

フットボールの神様とともに、鹿島が再び走り始めた。ジーコTDの合流翌日、猛暑のカシマスタジアム。J1第20節で清水エスパルスを迎え撃つと、スコアレスで迎えた後半アディショナルタイムにセットプレーから西がボレーを突き刺す。1-0。3試合ぶりの勝利を、劇的な幕切れとともに掴んでみせた。

4日前の聖地は閉塞感に覆われていた。8月1日、FC東京戦。安西のゴールで先制しながら、ホームで屈辱的な逆転負けを喫した。青赤に許した、初めてのシーズンダブル。熱帯夜の消耗戦で失意の結末を迎え、平日夜のカシマスタジアムに怒号とブーイングが鳴り響く。それでも、選手たちを出迎え、その背中を見送ったのは大きなチームコールだった。今季7敗目という現実と向き合い、そして這い上がらなければならない。

背番号12からのメッセージを受け止め、チームはつかの間の充電期間を挟んで3日にトレーニングを再開。猛暑が続くクラブハウスで、まずはリカバリーで回復に努めた。そして4日、青空に恵まれた鹿嶋。前日練習に臨む選手たち、その眼前にはジーコTDの姿があった。「全身全霊をかけて協力し、しっかりと結果として示したいと思う」。16年ぶりにクラブへ復帰したアントラーズの魂が、ついに来日。「クラブの歴史を知ったうえで、袖を通しているユニフォームに誇りを持ってプレーしなければならない」と、チームへ語りかけた。

ジーコTDが刻み込んだ、アントラーズスピリットの神髄。「このクラブに所属している以上、責任がある。そのことを自覚してもらわないといけない。日々の練習を怠ってはいけない。日々成長するために何をすべきかを考えてクラブハウスに来なければならない」。選手たちの胸に突き刺さり、さらなる奮起を促す言葉の数々。「今日一日では全てを伝えられない」が、大いなる刺激がもたらされたことは間違いない。

「試合だけではなくて練習から全力を出し切って、後悔のないようにしたい」と、ジーコTDの言葉を噛み締めるように決意を語ったのは金森だ。安西もまた「このエンブレムの重さを再認識させられた」と静かに言葉を並べる。そして指揮官は「このクラブの立ち位置を再認識させてもらった。かけてもらった言葉を力に変えて戦いたい」と闘志を燃やしていた。



FC東京戦から中3日、19日間での6試合目。「連戦を乗り切るための選手起用をしたい」と展望した大岩監督は、5名もの先発変更を断行した。センターバックの一角に加入後初先発初出場のチョン スンヒョンを指名し、ボランチには小笠原を起用。闘将にピッチの支配を託す。負傷からの帰還を果たした遠藤、そして気迫に満ちたプレーを続ける永木が2列目に並び、前線には金森が入った。その他、GKにクォン スンテ、最終ラインはスンヒョンとともに西、犬飼、安西が並ぶ。ボランチは小笠原とレオ シルバがコンビを組み、前線には鈴木が君臨。そしてベンチにはGKの曽ケ端、内田、町田、三竿健斗、田中、土居、安部が座る。





「アントラーズをさらに強くするために戻ってきた。スタジアムに足を運んで、力強さを他クラブのサポーターに見せつけられるくらいの人数で戦ってくれれば」。ジーコTDの言葉に呼応するように、猛暑に見舞われた聖地を背番号12の情熱が埋め尽くしていった。選手たちがピッチへ登場する前、ジーコTDが姿を現す。スタンドへ歩み寄り、手を挙げて応じるアントラーズの魂。カシマの空に鳴り響く、ジーココール――。再会の喜びに満ちあふれる中、キックオフが近づくにつれてボルテージが高まっていった。受け継ぐ思いを、勝利の伝統を、これからも――。先発メンバーに名を連ねていたスンテがウォーミングアップで負傷し、曽ケ端が急遽出場することとなったが、百戦錬磨の守護神に動揺はない。ベンチには川俣がスタンバイ。総力戦で挑む、90分が始まる。

18時33分、キックオフのホイッスルが鳴り響いた。30度超の熱帯夜、立ち上がりから激しいボディコンタクトの応酬となった。ボールロストから陥ったカウンターの危機に反応した小笠原が開始2分でイエローカードを受けると、以後も球際での攻防が繰り返される展開に。鹿島はなかなか起点を作れずにいたが、左サイドの安西が果敢なドリブルで突破口を見出し、セットプレーのチャンスを作る。11分の攻防ではスライディングを仕掛けてきた清水の右サイドバック・立田に警告。序盤からカードが飛び交い、競り合いはさらに激しさを増していった。



前半最初、そして唯一の決定機は16分。相手の最終ラインにプレスをかけた金森がボールを奪うと、ドリブルで縦へ。ペナルティーエリア手前に差し掛かって視界にゴールを捉えると、右足で狙う。だが、グラウンダーのシュートは相手GKの正面へ。「得点に絡む」と決意を語っていた背番号14のチャレンジは惜しくも結実しなかった。さらに2分後、ペナルティーエリア右手前でボールを持った西が巧みなボールタッチとコース取り、そして緩急をつけたドリブルで突破。守備網を鮮やかにすり抜けると、相手との交錯で倒される。だが、笛は鳴らなかった。PKは与えられず、スコアレスのまま時計の針は進んでいった。















20分、そして25分が経過しても、一進一退の攻防が続いた。鹿島は両サイド深くで起点を作り、パス交換からゴールへの道筋を見出そうと腐心したものの、決定機を作るには至らない。時折攻め込まれた場面でも、古巣との対峙に燃える犬飼が激しいスライディングを敢行してピンチの芽を摘み、初出場のスンヒョンも持ち前のエアバトルで制空権を渡さない。拮抗した展開、ルーズボールの奪い合い。41分には相手との交錯で鈴木が鼻を負傷してしまったが、治療を施されてすぐに戦いの場へと帰還した。0-0。前半はスコアレスで終了した。



ゴールを渇望するアントラーズレッドへ向かって攻める後半も、息が詰まるような時間が続いた。55分、カウンターを受けて最終ラインの背後へスルーパスを通されると、切り返しから左足でシュートを打たれる。曽ケ端が見送ったボールは枠を捉えたが、右ポストを直撃。鹿島は失点を免れた。20分後にも再び、相手のシュートが左ポストを直撃。ジーコTDの帰還を待ちわびていた聖地のゴールが、ビジターチームのスコアを許さないかのようだった。













残り15分、鹿島は突破口を作り出そうと腐心した。66分から出場した安部、72分に送り出された土居がスペースを突いてパスの中継点を作り出す。80分経過後はセットプレーからゴールに迫り、犬飼のヘディングシュートが清水を脅かした。だが、ネットを揺らすには至らない。息苦しき消耗戦、アディショナルタイムは3分と表示された。

ドラマは最後に待っていた。アディショナルタイム1分、敵陣右サイドで得たFK。献身を続けた鈴木が体を張り、チームにもたらしたチャンスだった。永木が祈りを込めてゴール前へ送ったボールを、新加入のスンヒョンが頭で落とす。ペナルティーエリア右側、内田とともに飛び込んだのが西だった。右足ボレーがゴールに突き刺さる。1-0。不甲斐なき90分の先に、劇的な結末が聖地に刻まれた。3ポイントを掴んだ価値と、抽出された課題の数々。ジーコTDは、アントラーズレッドの沸騰を鋭い眼光とともに見届けていた。











次戦は6日後、11日の名古屋戦だ。7月18日のJ1再開から息つく間もなく突き進んだ6連戦を終え、5日間の準備期間を得る。名古屋、長崎と続く敵地での戦いを勝利とともに走り抜けるために、チームは7日にトレーニングを再開。総力戦で準備を進めていく。




【この試合のトピックス】
・J1での清水戦は2015年7月15日の2nd 第2節以来5試合負けなし(3勝2分)となった。
・J1でのホーム清水戦は2013年7月10日のJ1第15節以来、5試合連続負けなし(2013~2015年、2017~2018年/4勝1分)となった。
・J1での清水戦は通算56試合目で、25勝目(7分24敗)に。1993年のJリーグ開幕以来、初めて通算成績で勝ち越した。
・西が今季のJ1で初得点を挙げた。
・チョン スンヒョンが加入後初先発初出場を果たした。
・金森が今季のJ1で初先発を果たした。
・遠藤が7月18日のJ1第16節磐田戦以来5試合ぶりの先発復帰を果たした。


監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・横パスを有効に使って、相手をうまく引かせて攻撃を仕掛けていこう。
・ボールを奪われた後のカウンターに気をつけること。
・攻撃の時、もう少しテンポを上げ、ボックスの近くで力を使おう。

清水エスパルス:ヤン ヨンソン
・全体でプレスをかけていくこと。
・サイドチェンジを効果的に使っていくこと。
・まだ満足していない。このゲームを自分たちのモノにしよう!


[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
非常に暑いなか、選手たちがいろいろなシチュエーションに応じて、自分たちで判断して戦った。特に前半はすばらしい内容だった。相手の堅い守備に手こずったが、じれずに戦い、最後はサポーターの後押しもあって勝ち切ることができた。非常にいいゲームだったと評価している。

Q. 中盤にベテランの選手を起用した。じれずに戦えた要因と考えているか?

A. 非常に大きかったと思う。急きょ出場した曽ケ端も、あれだけのパフォーマンスを見せてくれた。そうした選手たちの存在もあって、落ち着いてゲームを運ぶことができた。今後は落ち着きから、最後で決め切る精度を求めていきたいと思う。

Q. 交代の意図は?

A. ハーフスペースを使うことは、選手たちにも伝えていた。ボランチ、サイドバック、フォワード、それぞれ自分たちが狙うべきポジションにいてくれたと思う。ただ、最後の判断、プレーの選択という部分で、久しぶりに出た選手、違うポジションで出た選手と、少し呼吸のずれがあったと思う。それでもじれずに相手のウイークポイントを突き続けていたので、そこは非常に評価している。

Q. チョン スンヒョン選手がアシストも決めたが、今日のプレーの印象は?

A. これから本人にも伝えたいが、実戦、トレーニングから離れていたなかだったが、あれだけのパフォーマンスを見ることができて、非常にうれしく思う。センターバックとして落ち着きを与え、ビルドアップのところもできていた。今後、さらに彼のことを知ることで、パフォーマンスが上がり、組織が構築されていくと思う。さらにチームになじませていきたいと思う。


清水エスパルス:ヤン ヨンソン
選手たちは非常に努力して戦った試合だった。結果にはまったく満足できない。アウェイのなかで自分たちのプレーをしようと強い気持ちで臨んでいた。サッカーには多少の運も必要だ。ポストにシュートが2度当たってしまう不運もあった。勝ち点を得ることなく帰らなくてはいけないことは、非常に残念だ。


選手コメント

[試合後]

【西 大伍】
前節も我慢比べのような試合で、最後に失点してしまった。今日は我慢できればいいと思っていた。得点は応援してくださった皆さんのおかげです。

【チョン スンヒョン】
ここ2試合、勝利がなかった中で無失点で終えることを意識していた。実際に無失点で終わることができて良かった。素晴らしいサポーターの前でデビューできて嬉しい。チームのために体を投げ出して守備をする、献身性を見てもらいたいと思っている。

【曽ケ端 準】
急遽の出場は、この歳で初めての経験だった。センターバックの2人がロングボールに対してしっかりと競って、跳ね返してくれていた。2人に助けられた。みんなで連戦を乗り切っていきたい。

【犬飼 智也】
(古巣相手の勝利で)ホッとしました。セットプレーがチャンスだと思っていた。スンヒョンとは初めて組んだけど、相手に対して強いし、いい形でプレーできていたと思う。ホームで勝てて良かった。

【遠藤 康】
運の部分もあったけど、90分間やり続けたから結果が出たのかなと思う。相手を押し込む時間帯もあったし、それは良かったと思う。

【鈴木 優磨】
内容は改善しないといけないけど、勝つことが大事。個人的には、連戦が続いてなかなか体が言うことを聞かない場面もあったけど、気持ちで戦った。ギリギリのところをマイボールにするようなプレーはできたと思う。ただ自分自身、ここ数試合はチャンスがないし、シュートを打てていない。そこは改善していきたい。

【金森 健志】
自分が1対1で決めていればもっと楽に試合を運べたと思う。FWなので、点を決めないといけない。前線からの守備、ハードワークはこれからも続けていかないといけない。




2018明治安田生命J1リーグ 第20節



Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事