日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年10月9日火曜日

◆ライザップとサイバーエージェントが、Jリーグのクラブを買収している理由(ビジネスジャーナル)





 鹿島アントラーズは住友金属工業(現在は新日鐵住金、2019年4月からは日本製鉄)、浦和レッドダイヤモンズは三菱自動車(現在は三菱重工業)といった具合に、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)では、多くのチームの親会社は重厚長大型企業だったが、最近は新興企業の進出が目立つ。

 IT大手のサイバーエージェントは10月1日、Jリーグ2部(J2)に所属するFC町田ゼルビアの経営権を取得したと発表した。ゼルビアのクラブ運営会社の第三者割当増資を引き受ける。出資額は11億4800万円で、全株式(議決権ベース)の80%を取得する。

 ゼルビアはJリーグのなかでも珍しい、地域・市民がつくり上げたサッカークラブだ。現在J2で3位につける町田は初優勝を狙う。だが、本拠地の町田市立陸上競技場の収容人数や練習施設などがJリーグ1部(J1)の基準を満たしておらず、J1への参加資格「JIライセンス」を取得できていない。仮に今季優勝しても、来季はJ1に昇格できない。

 サイバーエージェントの資金で天然芝の練習グランドやクラブハウスの整備に着手し、本拠地の改修計画もある。これによって早期のJ1ライセンス取得を目指す。

 サイバーエージェントは2016年4月に開局した、無料で視聴できるインターネットテレビ局「Abema(アベマ)TV」で、大相撲やプロ野球、サッカーなどのスポーツ番組を配信している。Jリーグへの参入でコンテンツの充実を図る狙いがある。

 サイバーエージェントは06年、東京ヴェルディに出資した。日本テレビ放送網に次ぐ大株主となり、サッカー好きの藤田晋社長がヴェルディの副社長を兼務していたが、わずか2年で撤退した。

 この点について藤田氏は、「当時は筆頭株主ではなく、なかなか思うような経営ができなくて撤退した。10年以上前は企業規模的にも支え切れなかった」と振り返る。

 一方で「僕がいたころのヴェルディは、選手補強費は断トツだったのに、それでも勝てず、サッカーって不思議だなと思った。決して日本テレビが悪いわけじゃない。誤解のないよう。ただ、限界を感じて撤退した」と、サッカー経営の難しさを感じたという。

 その上で「サッカーをやってよくわかったのが、サポータ-、スポンサー、選手、監督の顔色を窺い続けてもダメ。強いリーダーシップがないとサッカークラブは経営できないと学んだ。ですから今回、大多数の株式取得にこだわった」と、8割の株式を取得した意図を説明した。

 再挑戦については、「今回改めて、Jリーグの成長性、将来性に非常にポテンシャルが大きいと感じた。(ヴィッセル神戸を運営する楽天の)三木谷(浩史)さんが海外のスター選手(アンドレス・イニエスタ選手)を日本に呼ぶ流れもあるし、町田は東京発、世界に通じるビッグクラブへと成長させたいと考えている。ネットメディアの時代にクラブ経営は価値が大きい」と抱負を語った。

 楽天がFCバルセロナ(リーガエスパニョーラ)の胸スポンサーとなり、続いてバルセロナから元スペイン代表MF・イニエスタ選手を推定年俸32億円で獲得し、日本サッカー界を活性化させた。藤田氏の胸の内には、三木谷氏への対抗心がめらめらと燃え上がっているのかもしれない。
 サイバーエージェントのゼルビア買収に伴い、ゲーム事業を展開するサイバーエージェントの子会社、Cygames(サイゲームス)が、サガン鳥栖のスポンサーから撤退すると報じられた。これについて藤田氏は、「間違ったニュース。その意思決定にはかかわっておらず、まったく別問題。グループ企業が他チームをサポートしている例はほかにもある」と、否定した。

 Jリーグの規約では、1人のオーナーが複数のJクラブの経営に大きな影響を持つことを禁止している。サガンとサイゲームスはスポンサー契約であって株式を保有していないためJリーグの規約には抵触しないが、グループを挙げてゼルビアを支援することになる以上、サガンとの関係は見直されることになると見るのが妥当だろう。

テレビ通販のジャパネットやRIZAPも参戦

テレビ通販大手、ジャパネットホールディングス(HD)は17年4月、J2のV・ファーレン長崎を買収した。同年3月、3億円を超える累積赤字を抱えるV・ファーレンは選手たちの給与を支払えなくなり、J3降格寸前だった。

 そこでジャパネット創業者の高田明氏が支援を表明し、3年間で10億円以上の資金投入を明言した。クラブ運営会社の株式を買い取り、V・ファーレンをジャパネットHDの100%子会社とし、同年4月末に高田氏は自ら社長に就任した。

 同年11月、V・ファーレンはJ2で2位となり初のJ1昇格を決め、「Jリーグ史に残る奇跡」といわれた。

 フィットネスクラブ運営のRIZAPグループは18年4月、J1の湘南ベルマーレの経営権を取得した。33%出資し、筆頭株主の三栄建築設計と共同出資で新しい会社を設立。三栄は保有する株式を共同出資会社に現物出資するほか、ベルマーレが実施する第三者割当増資を共同出資会社で引き受けた。RIZAPは共同出資会社を通じ、ベルマーレの株式を議決権ベースで50%保有し孫会社にした。


クラブ経営は火の車


 サイバーエージェントが買収したゼルビア、RIZAPグループ入りしたベルマーレ、ジャパネットHDの子会社になったV・ファーレンの経営状態を見ておこう。

 Jリーグクラブ経営戦略本部は、17年度のJ1・J2・J3に所属するクラブの経営情報をまとめた。今季J1に昇格したベルマーレとV・ファーレンはJ2時代の実績である。

 V・ファーレンの高田氏は「J1で戦うには最低20億円の資金は必要」と語っている。

 17年度のクラブの事業規模を表す営業収益(広告料・入場料など、売上高に相当)は、浦和レッズが79.7億円でトップ。J1平均の営業収益は40.8億円、J2は14.1億円、J3になる4.2億円と大きく減り。格差は歴然としている。

 親会社が変わることで経営内容が好転した典型例がV・ファーレンだ。16年度(16年12月期)の営業収益は7.4億円、当期損益は1.3億円の赤字、累積赤字は3.2億円あり、存亡の危機に立たされた。

 高田氏が手を差し伸べた17年度(17年12月期)の営業収益は11.2億円、当期利益は0.5億円ながら黒字に転換し、累積赤字は2.7億円に縮小した。

 V・ファーレンは現在、J1で最下位にいる。17年度の営業収益はJ2の平均を下回る。これほどの弱小クラブがJ1に昇格したことで、「奇跡」と評されたのだ。J1でほかのチームと互角に渡り合うためには、有力選手を獲得する必要がある。30~40億円用意しなければ充分な補強はできないといわれており、ハードルは高い。

 ベルマーレの17年度(18年1月期)の営業収益は15.6億円、当期損益は0.8億円の赤字、累積赤字は9.4億円。累積赤字は京都サンガF.C.の34.5億円に次いで大きい。RIZAPグループがいかにして、ワースト2の累積赤字を圧縮させるかがポイントとなる。

 ゼルビアの17年度(18年1月期)の営業収益は7.0億円、当期利益は0.2億円の黒字、累積赤字は2.4億円だ。純然たる個人出資のクラブだったため、営業収益はJ2平均の半分である。


ゼルビア町田買収のトバッチリを受けたサガン鳥栖

サイバーエージェントがゼルビアを買収したことにより、サガンがトバッチリを受けたと報じられている。サイゲームスは15年7月からサガンとスポンサー契約を結んだ。スポンサー契約としては異例の年間5億円以上の大型契約だ。今夏にはアントラーズから元日本代表FWの金崎夢生選手や、元スペイン代表FWフェルナンド・トーレス選手が加入するなどチーム力強化に貢献してきた。

 サガンの17年度(18年1月期)の営業収益は33.5億円、当期利益は800万円の黒字に転換したが、16.1億円の累積赤字を抱えている。新たに年間5億円超の有力スポンサーを見つけることは難しい。サイバーエージェントのゼルビア買収の余波で、サガンは大きな打撃を受けることになる可能性がある。

 楽天がオーナーとなっているヴィッセルを見てみよう。17年度(17年12月期)の営業収益は52.3億円、当期損益は1.5億円の赤字で、累積赤字は6.5億円に上る。

 ヴィッセルの営業収益は、レッズに次いで2位。人件費は前年度比10.3億円増の31.0億円とJリーグトップだ。移籍金3億円超、年俸6億円(いずれも推定)といわれる元ドイツ代表FWのルーカス・ポドルスキ選手を獲得したことによる。今季はスペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手を推定年俸32億円で獲得しており、今季の人件費がどこまで膨らむのか見ものである。

 サイバーエージェントは、楽天の向こうを張ってゼルビアの補強に大金を注ぎ込むのだろうか。

 累積赤字を抱えているチームは、J1の18クラブのうち11クラブに上る。J2では、22クラブのうち15クラブ。ITの新興企業がJリーグのクラブを買収するケースが今後、さらに増えるかもしれない。
(文=編集部)




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