日刊鹿島アントラーズニュース

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2019年6月18日火曜日

◆鹿島が鬼門とするACLラウンド16。 三竿、優磨が求める「もっと我を」。(Number)






◆◆月刊サッカーマガジン / 2019年7月号


「2018年のACLラウンド16では、内容自体はそれほど良くないなか、なんとか突破したいという“強い思い”が結果につながった。そこを乗り越えたことで、決勝までの勢いが出て優勝にもつながった」

 鹿島アントラーズの鈴木満常務取締役強化部長は、昨年のラウンド16の戦いをこう振り返った。

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16は、アントラーズにとって鬼門と呼ばれたステージだ。ACL初優勝を遂げた昨年、6度目の決勝トーナメントで初の初戦突破だった。今年もその舞台での戦いが始まる。


ケガ人が相次いだ今季の鹿島。


 決戦トーナメントを前に、1人、また1人と戦力が戻ってきた。

 アントラーズは今季、ケガ人に悩まされた一面を持つ。開幕の段階で、昨シーズンに負ったケガで三竿健斗、鈴木優磨は別メニュー。その後も白崎凌兵、中村充孝、山本脩斗、伊東幸敏、内田篤人など、離脱者が相次いだ。

 その流れはチームの成績にも表れ、なかなか勝ち続けることができず、波のある結果を繰り返した。

 中断期間前の14試合を終えて、7勝3分4敗、得点22失点13。J1リーグ5位に位置する。

 他のクラブからすれば、決して悪い成績ではない。しかし、常勝を義務付けられるアントラーズにとっては、「満足といえる結果ではない」(鈴木強化部長)。それでも後半戦に向けて、ケガ人が少しずつ全体練習に合流したり、試合に出場したりと、本来の戦力が戻ってきたのは好材料だ。

 今季、チームは「軸となる選手の確立」をテーマにスタートした。なかでも、主力に定着した23歳の三竿健斗と鈴木優磨への期待は大きい。


読書からヒントを得た三竿。


 三竿健斗は、4月28日のJ1第9節横浜FM戦で、今季リーグ戦で初めてスタメンに名を連ねた。ピッチ外からチームを見て、ピッチ内に戻ってチームを見て、気づいたことがある。

「もっと個人が“我”を出していかないと勝てないと思う。今年は若い選手が多いけれど、優磨(鈴木選手)や僕みたいに『もっとこうしろ』って上に言える選手もいないし、みんなただ黙々とやっているだけ。120%でやっているのかというとそうではないと思う。そのぬるさが今はあると思うから。

 そこに気がついて言えるのは僕とか優磨だと思うし、言うからには責任が生まれるからやらないといけなくなる。それを練習から言い合える雰囲気を作っていく必要があるかなと思います」

 三竿自身、この考えに至るきっかけがあった。それは、読書。昨年末から鼠径部の痛みで治療を続けてきた期間、元来の読書家が、さらに本を読む数を増やしたという。

「たくさんの本を読んで、いろいろな考えを頭に入れたことで、自分自身、すごく変わった。たとえば、これまでは力が入りすぎるときもあったけど、本当に自然体でできるようになった。人が言っていることを意識しすぎていたけれど、遠慮せず自分の思っていることをきちんと伝えるようになった。言葉ってすごい。人を変えられるんですから」


「大きなケガは初めてだった」(鈴木)


 同じく、三竿が指摘するピッチでの「我」を必要と感じている選手がいる。6月5日、2度の肉離れから、ようやく全体練習に部分合流した鈴木優磨だ。

 今季、チームの軸となることを期待されながら、昨季からハムストリングのケガに悩まされて未だ出場がない。葛藤のなかで過ごした治療期間は、新たな視点を生み出してくれたという。

「これだけサッカーから離れる大きなケガは初めてだった。そのなかで、サッカーに対して新しい一面が見えた。改めて自分はサッカーが好きだと感じたし、ゴールが自分のすべてを満たすくらいのものだと知った」

 ここまで長く、ピッチ外からチームを見続けることも初めてだった。今シーズンの戦いを見て、思うところがあったという。


2人が口をそろえる“我を出すこと”。


「見ていてチームに活力を与えるプレーが少ないと感じる。テンション高くやれている選手が少ない。健斗(三竿選手)だったり、自分だったりがもう少しやっていかないといけない。単純にシュートが少ないですよね。ガツガツ感だったり、自分がやり過ぎなのかというのもありますけど、外から見ていて自分がガツガツやっているのは間違いじゃなかったなと改めて感じた。

 海外の選手を見ていても、そう思った。ピッチ内では分からなかったけれど、外から見ていて相手が嫌がるプレーというのを感じることができたので。もっともっと“我”を出して、個性を出していきたいと思います」

 ガツガツ感。FWであれば、ゴールに貪欲に向かう姿勢を問われる。それを分かりやすく示してくれる存在は、いつも鈴木優磨だった。完全復帰を目指して徐々に練習の強度を上げており、戻ってきたときの存在感には期待が膨らむ。

 軸となるべき存在の2人が、“もっと我を出すことが必要”と口をそろえる。今のチームに、勝つためのギラギラ感が加わったとき、もうひと段階上のチームへとつながっていくだろう。


ラウンド16の相手は広島。


 昨季のラウンド16は、上海上港を相手に先手を奪って突破を決めた。第1戦では鈴木優磨が点を取り、三竿健斗が中盤でチームを引き締めた。ホーム&アウェイの戦いにおいてアドバンテージを持って戦うことは、2試合合計の戦いを有利に運ぶ。

 目の前の相手に対するボール奪取、幾度となくある球際での戦い、ゴールに向かった積極的なプレー。“一つひとつの場面で、すべて勝ってやる”というギラギラ感があれば、自ずとその“強い思い”が勝利へと導いてくれるだろう。

 今年の相手は広島だ。鹿島としてはACLで初の日本クラブとの戦いになる。


昌子源「背中を押してくれた」


 クラブとしてもこの一戦を大きく捉えている。

 ACLの平日ホームゲームにおける観客動員は、昨年の準決勝第1戦水原三星戦で13044人が過去最高の数字だ。目標観客動員は15000人。クラブ一丸となって、当日に最高の観客動員数と、最高の雰囲気を目指す。

 サポーターが作る雰囲気は、大きくチームの後押しをしてくれる。それは、昨年のACL決勝の雰囲気が物語る。第1戦のホームを2-0で終えた後、昌子源(現トゥールーズ/フランス)は言った。

「この結果はサポーターが作ってくれた雰囲気のおかげ。背中を押してくれた結果が、無失点という結果につながった」

 選手、スタッフ、クラブ、サポーター。

 1人、また1人と集い、それぞれの“強い思い”が集結したとき、チームとして最高の結果が生まれる。6月18日(火)19時キックオフ。まずは第1戦。アントラーズファミリーの結束の力が問われることになる


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