サッカーラボ 1カ月でプレーがどんどん進化する![本/雑誌] / サッカーラボ編...
第98回全国高校サッカー選手権は、全47試合の総入場者が33万6999人で最多記録を更新。大盛況の中で大会を終えた。これは予想を上回る数字と言って良いだろう。ともにU-17ワールドカップで活躍したFW西川潤(桐光学園 → セレッソ大阪)とFW若月大和(桐生一 → 湘南ベルマーレ ※海外移籍交渉中)が県予選で敗退。加えて、12月11日には、県予選を突破したFW染野唯月(尚志 → 鹿島アントラーズ)の全国大会欠場が発表されていたからだ。
染野は昨年度の選手権得点王(他2人)。3回戦の前橋育英戦、準々決勝の帝京長岡戦で2試合連続決勝ゴールを記録し、優勝校・青森山田との準決勝ではいずれもハイレベルな3ゴールでハットトリックを達成した。試合はPK戦で敗れたものの、染野は青森山田の選手以上にサッカーファンの心を掴んだ。同じく高校サッカー選手権で衝撃的な活躍をした日本代表FW大迫勇也(ブレーメン)と比較され、 “大迫2世”、また彼の代名詞である“半端ない”は染野を表現する言葉にもなった。
全治3カ月のケガで選手権欠場を決断
2019年はプレミアリーグEAST開幕戦で柏レイソルU-18相手にハットトリック。抜群の得点力に加え、“ヘリコプターヘッド”や右足FK、そしてパスセンスも備えた染野は日本高校選抜やU-18日本代表に選出され、国際大会で世界と対峙している。また、尚志ではインターハイ予選決勝で延長V弾を決め、夏明けのプレミアリーグEASTでゴールを連発。選手権予選決勝でも、バルセロナ五輪予選日本代表の仲村浩二監督を「アイツしかできないゴールだなと思います」と唸らせる左足ループ弾でチームを全国へ導いている。
だが、この選手権予選決勝の翌日に腰椎分離症が判明。完治まで3か月というケガで染野は選手権欠場を決断する。痛みを抱えながらも選手権予選決勝ではそれを感じさせないようなプレーを披露。報道の通り「最低でも4週間の絶対安静」の期間は選手権にも及んだが、本人が希望すれば出場することもできたかもしれない。
また、コーチ陣やチームメートは出場しなくても、登録メンバー30名に入ることを期待。だが、本人が将来のため、また自分が登録されるよりも3年生が1人登録されることを希望して「(メンバーから外れることを)自分の中で決めました」と発表した。
チームメートたちのため、鹿島で飛躍を
染野不在でも全国制覇を目指した尚志は、全国大会初戦で徳島市立に0-0からのPK戦の末に敗退。染野は4強入りしたインターハイでもケガで出場時間が限定されていたため、エースとしての十分な活躍や、チームが目標としてきた「全国制覇」に貢献できないまま高校生活を終えることになった。自身不在の選手権は鹿島でチームメートとなるMF松村優太(静岡学園 → 鹿島)がヒーローに。欠場する決断をした染野は、尚志のチームメートたちのためにもプロの世界で飛躍する意気込みだ。
「大事なところで点を決めてチームを勝たせるFWになりたいですし、メンタルの部分であったり、色々な部分で一流になれたらいい」。鹿島の「日々の練習でも『自分たちは優勝を狙う』という環境の中に置かれている」という環境の中で進化し、チームを勝たせるFWとして日本代表、そして世界へ。1年目からタイトル獲得を誓った染野が、目標の大迫を超えるような“半端ない”ストライカーとなる。