日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年3月13日金曜日

◆新生アントラーズでキラリ輝く。 荒木遼太郎は「ザーゴサッカーの申し子」(Sportiva)



荒木遼太郎 Ryotaro.Araki


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2020年シーズン開幕で見つけた
今季要注目のJリーガー(3)
荒木遼太郎(鹿島アントラーズ/MF)


 東福岡高校から鹿島アントラーズに加入した荒木遼太郎のプレーを初めて見たのは、1月に宮崎で行なわれた練習試合でのことだった。その試合で1得点を挙げた荒木のプレーに、思わず目を奪われていた。

 2020年、鹿島はザーゴ監督を新指揮官に迎え、新たなサッカーに着手。宮崎で行なわれた練習試合はチーム始動から間もなく、昨シーズンを戦った主力選手たちが出場することはなかった。

 新戦力と若手が中心となって行なわれたその練習試合で、高卒ルーキーの荒木はいきなりゴールをマークし、アピールしてみせたのである。

 ただ、彼に引きつけられたのは、味方が放ったシュートのこぼれ球に素早く反応したからでも、冷静に得点を決めたからでもなかった。

 試合中に見せる判断力の早さと、周りを的確に生かそうとする視野の広さ、さらには自ら仕掛ける姿勢に魅力を感じた。

「高校生からプロになって一気に環境や周りのレベルが変わって、パスの質やスピード感も全然違うのでついていくのに必死な部分はありますけど、そのなかでも自分的にやれていると感じられるところがちょっとずつ増えてきています」

 プロ1年目の選手たちの多くが感じるであろう衝撃を受けつつも、荒木は今の自分にできることを見つめていた。

「ボールに絡んでから、周りの選手を使いながら自分を生かす。そういった部分はちょっとできているかなと思っています」

 目を奪われたのは、高卒ルーキーながら味方のプレーに合わせて動き回り、パスを引き出す能力とスペースを作り出す献身的な動きだった。それが見ていて心地よかったのだ。

 東福岡高校で研鑽を積んできた荒木は、U−16から育成年代の日本代表に選出されるなど、早くから着目されてきた選手ではある。

 だが、鹿島で同期加入となる松村優太が1月の高校サッカー選手権で静岡学園高校の中心として優勝を飾った一方、荒木は最後の大舞台に立つことができなかった。身長も170cm。決して身体的な特徴があるわけではない。自らも「どこにでもいるようなプレーヤーだと思っています」と話す。

 開幕前に行なわれた水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチでも、荒木は1−0で勝利した試合に、得点という目に見える形で華を添えた。

 鹿島は新指揮官のもと、リアクションになりがちだった昨シーズンまでのサッカーから、ボールを支配するサッカーへと大きく転換を図っている。

 経験や経歴に関係なく、フラットな目で選手を見るブラジル人が指揮官に就任したことも、荒木にとっては追い風になっているのだろう。2月16日に行なわれたルヴァンカップの名古屋グランパス戦でもメンバー入りした荒木は、1枚目の交代カードとして指揮官から指名された。

 続く2月23日のJ1開幕戦。アウェーの地でサンフレッチェ広島と戦った後半15分、0−2で追いかける状況で荒木はピッチへと送り出された。それは鹿島にとって内田篤人以来、14年ぶりとなる高卒ルーキーのJ1開幕戦出場となった。

 高卒ルーキーながら、勝っている状況でもなければ、残り数分の出場機会でもない。劣勢で投入されたことこそが、いかに指揮官が戦力として重要視し、期待を寄せているかが伝わってくる。

 出場からわずか1分後、チームとして相手をサイドに追い込みボールを奪うと、右サイドからドリブルで仕掛けた荒木はクロスを上げた。得点にはならなかったが、ニアではなく、ファーサイドでフリーになっていたファン・アラーノへと的確につないだ。宮崎での練習試合でも感じられた視野の広さだった。

 後半19分、今度はゴール前から逃げるようにDFのマークを引き離すと、パスを受けてシュートを放った。視野の広さに加えて、やはり感じていた冷静な判断力の賜物だった。

 さらに後半37分、今度は中央で縦パスを引き出すと、ドリブルを仕掛けてゴール前に侵入した。周囲には味方もいただけに、パスを選択することもできたかもしれない。だが、自らボールを運び、シュートで終わった積極性は、もっとも荒木に魅力を感じていた部分でもあった。

 荒木は自身のプレーについて、こう話していた。

「相手にボールを渡してしまうのが本当に嫌なんです。ずっと自分たちで握っていたい感じなので、絶対に自分のところではボールを失いたくないですし、そう思い始めてからはずっと失うようなプレーはあまりしないようにしています」

 まさに鹿島が新たに目指しているサッカーを体現するかのような発言である。

 現状、右サイドで起用されている荒木だが、チームについてはこうも語っていた。

「柴崎岳選手(デポルティーボ)がピッチにいるかいないかでゲームの作られ方や動き方が違うし、ワールドカップの時も柴崎選手の1本のパスから得点につながった。ああいう1本で試合を決定づけるパスとか本当にすごいと思う。どんどん前に絡んでいったり、目指しているところはそこだという感じです」

 ザーゴ監督が掲げるサッカーは、これまでの鹿島にとってスタイルが大きく異なるように、成熟するまでには時間がかかるだろう。規律があり、システマチックでもあるそのサッカーは、身体に叩き込まなければならないし、瞬時の判断力も求められる。

 リーグが中断している今、練習を行なう時間を設けられることは、正直、鹿島にとってはプラスと言えるだろう。

 だからこそ、荒木のように既成概念がなく、与えられれば与えられただけ、求められれば求められただけ吸収していくスポンジのような選手は伸びていくのかもしれない。また、チームにおいては、若手が抜擢されることで競争も激しくなる。

 J1開幕戦は0−3で黒星を喫した。AFCチャンピオンズリーグのプレーオフも含めれば、ザーゴ体制下での鹿島は3試合を戦い、公式戦はいまだ未勝利である。

 だが、リーグ戦が再開されたとき、スポンジはどれほど大きく膨れているのだろうか。「ザーゴサッカーの申し子」となれる可能性を秘めている荒木の成長曲線に、鹿島の未来が見える。




◆新生アントラーズでキラリ輝く。 荒木遼太郎は「ザーゴサッカーの申し子」(Sportiva)





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