まずは次節・広島戦。「もう一度、みんなの力をひとつにして」
やるべきことは、何ひとつ変わらない。置かれている状況がどうであれ、鹿島アントラーズを率いる相馬直樹監督には、一切のブレがない。
リーグ戦ではすでに優勝の目がなくなっている。ルヴァンカップでは準々決勝で名古屋グランパスに敗れた。そして、天皇杯では準々決勝で川崎フロンターレに敗戦。これで今季の鹿島の無冠が決まった。
残るは、来季のACL出場権を獲得できるかどうか。33節終了時点で、鹿島は勝点56の6位。ACL圏内の3位・ヴィッセル神戸とは勝点5差。残り5試合も負けられない戦いが続く。11月3日に行なわれる次節のサンフレッチェ広島戦に向け、指揮官は「もう一度、みんなの力をひとつにして」と意気込む。
チームをまとめ、戦いに向かわせる作業を進める相馬監督自身、いろんなものを背負いながら戦っているはずだ。国内随一の“20冠”を誇るクラブのボスとして、そのプレッシャーは並大抵のものではないだろう。
とりわけ今季はクラブ創設30周年のメモリアルイヤーだ。タイトルで華を添えたかったが――残念ながら、それは実現しなかった。
残り少なくなったシーズンを力強く戦い抜くために、現在の相馬監督の原動力となっているものは何か。
「勝ちにどう近づけるか」
今年4月にザーゴ前監督の解任を受け、コーチから昇格して新監督に就任してから、ずっと貫いてきたことだ。
「シチュエーションはそれぞれ、いろいろあります。勝っているとき、負けているとき、今回のようにタイトルを失ってしまったときもそうです」
いずれの立場にあっても、目の前の勝負に集中する。勝利に向かって、「それに近づける準備をする」。
守り通してきたことを、最後までやり続けるだけだ。「監督を引き受けたときから、そこは責任感を持って、結果につなげられるように」という強い想いで、これまでの試合に臨んできた。
敵地で迎える広島戦でも「特別、何かを変えることはない」という。気が急いて先を見ない。「まず、次のゲーム」だ。
「目の前のことに全勢力を注ぎ込んで勝点3を取る。それが一番、残りの4試合にまたつながっていく」
相馬アントラーズの途上に、今季はタイトルがなかった。だが、道はまだ続いていく。不断の「勝ちにどう近づけるか」で、本物の強さを手にしたい。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
◆指揮官・相馬直樹のブレない原動力。不断の「勝ちにどう近づけるか」が鹿島再興への第一歩に(サッカーダイジェスト)