◇コラム「大塚浩雄のC級蹴球講座」
サッカーは格闘技だ。埼玉スタジアムで行われた浦和―鹿島の上位生き残り対決は、0―0の引き分けに終わったものの、その激しい戦いは見る者を魅了する素晴らしいゲームだった。
試合前からスタジアムは異様なムードに包まれていた。両チームともカラーが赤で、スタンドは4万5000人のサポーターで真っ赤に染め上げられていた。そしてお互いのサポーターが、激しいブーイングを浴びせあう。
フィジカルコンタクトの強い選手がそろう両チーム。特に浦和のDF陣は酒井、ショルツ、ホイブラーテン、明本と強力だ。体をぶつけ合い、強度の強いプレーでプレッシャーを掛け合う。互いの良さを消し合う攻防は、ゴールこそ決まらなかったが迫力満点だ。
特に見応えがあったのが、ホイブラーテンと鹿島FW鈴木優磨のマッチアップだ。立ち上がりにいきなり絡み、ホイブラーテンが膝を痛めたが、この2人は最後まで激しい火花を散らした。
ホイブラーテンは「ストレスのたまる試合だった」といいながら、無失点に抑えたことには満足していた。その上で鹿島の鈴木について「裏を狙ってくるのは分かっていた。特に鈴木はいいストライカーだ。(DF陣で)全体的に鈴木を止めて、いい仕事をした。強い選手と対戦することは分かっているから、試合前に分析する。常に集中してスペースを与えなかったのが良かった」と振り返った。
一方の鈴木は「あいつらすごく集中していた。センターバック。久しぶりにあんな集中しているセンターバックとやった。どのポジションとっても、常にボール関係なしにずっと見られているというか、体ごと押さえにきたというか。でも楽しいなと思いました。やってて楽しかった。日本人にはない感覚。いろいろやったけど無理でした」とにやけた。
決して汚いプレーではない。激しい駆け引きで、肉体と肉体をぶつけ合う。激しいがフェアなフィジカルコンタクトは実に見応えがある。スコアレスドローでも、観客は十分に熱狂できる。そんな素晴らしいゲームだった。
かつてはJリーグの選手が海外に飛び出し、フィジカルコンタクトを鍛えられて、強くなった。今は違う。Jリーグでも激しいコンタクトプレーが当たり前となり、それができない選手は生き残れなくなってきた。
どんなに技術があっても、戦術があっても、最後は一対一の勝負に勝てなければ、世界で通用しない。そんな選手がJ1の舞台で次々に誕生している。こんな試合なら、スコアレスドローでも大満足だ。
▼大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、1994年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため? 指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)。
◆0―0でも大満足の浦和対鹿島戦 激しいがフェアなコンタクトの応酬、サッカーは格闘技だ(中スポ)
「技術や戦術があっても、最後は一対一の勝負に勝てなければ世界で通用しない。そんな選手がJ1の舞台で次々に誕生している。こんな試合ならスコアレスドローでも大満足だ」
— 日刊鹿島アントラーズニュース (@12pointers) June 5, 2023
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