◆明治安田J1リーグ▽第4節 鹿島2―1川崎(17日・カシマ)
鹿島は川崎を2―1で下した。リーグ戦16戦未勝利(4分け12敗)だった天敵から、2015年シーズン以来の勝利をつかんだ。
* * *
2―1の後半30分、相手が1人少なくなった。スタジアム全体に、どこか楽観的な雰囲気があった。
ピッチも同じく。時計の針を進めようとする選手と、アピールしたい選手が混在していた。決定機を生かせず、時間稼ぎを目的としたプレーも不発に終わっていた。
危ないな、と思っていた。昨季まで川崎を2年担当していたが、数的不利の状況で不思議と点を取るチームなのだ。案の定、後半AT7分にボールキープを試みたMF知念慶が危険な奪われ方をしてしまう。
相手が速攻に繰り出そうとしたところで、背番号77の足が伸びた。相手を倒したMFパレジにイエローカードが提示された。パレジは知念に激高していた。
* * *
「あの場面はファウルで止めないといけなかった。後悔はない。結果的に失点につながらなかったので、イエローをもらったとはいえ、勝利できたことが全てです」。パレジは淡々と振り返った。
後半44分の投入以降、パレジは効いていた。そしてあのプレーは、非常に大きかった。知念に対しては「ポルトガル語で厳しく言ってしまいました。あのシーンはパスを出すべきだった」と苦笑いを浮かべたが「彼は自分のミスもいつもカバーしてくれる。あの場面は、今度は僕が彼のミスをカバーしないといけない立場だった」と語った。
突破力があるわけではなく、パワーやスピードが秀でているわけでもない。ただ、局面でのプレー判断にセンスを感じる選手だ。新外国人という立場ながら、チーム始動日のランニングで先頭を走っていて目を丸くした。ちなみに、ブラジル人だがサンバはうるさくて嫌いらしい。
開幕の名古屋戦(3〇0)、第2節のC大阪戦(1△1)と、アピールしたい立場の途中出場ながら、チームファーストに徹する姿が印象的だった。「チームのためにプレーして結果的に勝利すれば、自分の価値も上がる。個人でいける時もあるかもしれないが、バランスを取りながら判断したい。チーム第一なので、チームのために何ができるかを考えています」
* * *
この試合のヒーローは同点弾のチャブリッチであり、勝ち越し点の鈴木優磨だったが、トップ下で1・5人分の守備タスクをこなしたMF名古新太郎、失点に絡んだプレーを取り返したDF安西幸輝ら、黒子の役目を担った選手が結果を残した試合だった。こういう時の鹿島は、勝てる。どれだけ戦術が進化しようとも、何といっても「誠実・献身・尊重」が土台にあるチームなのだ。
開幕4試合を2勝1敗1分けの勝ち点7、4位で終えて中断期間に突入する。鈴木優磨いわく「俺らはまだ完成していないチームなので、この中断期間はデカい」。ポポヴィッチ・アントラーズは、まずまずのスタートを切ったのではないだろうか。(鹿島担当・岡島 智哉)
◆【番記者の視点】鹿島MFパレジの献身「後悔はない。勝利が全て」途中出場MFのイエローカードについて(報知)