◆明治安田J1リーグ▽第17節 鹿島3―2横浜FM(1日、国立競技場)
2位の鹿島は横浜FMを3―2で下し、首位の町田と勝ち点35で並んだ。鹿島を強豪へ導いた「神様」ジーコ氏(71)や今季Jリーグ公式戦で、2番目の多さとなる5万2860人が駆けつけた大一番でルーキーのDF濃野(のうの)公人(22)が決勝点を挙げ、今季初の4連勝で8戦負けなし(7勝1分け)とした。町田は新潟に1―3で敗れ、7戦ぶり黒星を喫した。
J屈指の名門同士の激突にふさわしい好ゲームは、鹿島に軍配が上がった。1―1で迎えた後半29分、MF知念がドリブルで突き進むかたわら、DF濃野が右サイドをスルスルと駆け上がる。パスを受けた大卒新人は右足を振り抜き、勝ち越し点を奪った。直近8戦で7勝1分け。ついに首位の町田と勝ち点で並んだ。ポポヴィッチ監督(56)は「一体感を出せて戦えた」と勝利を誇った。
開始10分で失点したが、後半12分にエースFW鈴木の左足で同点とし、DFの濃野と関川のゴールで相手を突き放した。対戦4連敗中だった横浜FMから貴重な勝ち点3。鈴木は「今までだったら、たたみ掛けられず点が取れないパターンがあった。今日はたたみ掛けられた」と勝因を語った。
16年を最後にリーグ優勝から遠ざかる。優勝争いすらできていなかった近年の鹿島と現在の鹿島。何がどう違うのか。5月の来日後、全試合を現地視察し、この日も会場で勝利を見届けたジーコ・クラブアドバイザーは言う。「トレーニングの様子を見ていると、鹿島が強かった時代のような強度がある。選手と監督の距離感、コミュニケーションにもとてもいいものがある。今の鹿島はチームとスタッフ、選手がとてもいい関係性にある。一体感に包まれている」
練習での強度の高さ。首脳陣と選手の信頼関係。いわゆる「仲良し」とは違う、同じ目的に向かって突き進むという意味での一体感。近年失われていた「鹿島らしさ」が復活しつつあることに、クラブの礎を作った“神様”は手応えを語る。
それでも、無冠の歴史に終止符を打ったわけではない。鈴木は「最後の失点はいらなかった」と3―1からの2失点目に首をひねり「まだシーズンが折り返しにもなってない」と気を引き締めた。シーズンの最後、順位表のどこの位置にいるかが全て。愚直に勝利を積み重ねた先に、通算21冠目のタイトルは待っている。(岡島 智哉)