日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年1月1日日曜日
◆45年目の同級生対決…天皇杯決勝もうひとつの戦い(報知)
12月30日、大阪でJ1鹿島の練習取材を終えると電話が鳴った。強化責任者を務める鈴木満(みつる)常務からだった。あいさつと取材を済ませた後、話題は自然と天皇杯決勝、鹿島―川崎(吹田ス)に向かった。鈴木氏は「ここまで来たら負けたくないよな。元日で負けると本当に最悪の気分で三が日を過ごさなくちゃいけない。最高の正月になるか、最悪の正月になるかだから」と言うと、少し声のトーンを変えて「相手も相手だしな」と続けた。
「相手」とは、川崎で強化責任者を務める庄子春男取締役を指す。2人は宮城工サッカー部の同級生。15歳で出会った。「今はまん(鈴木氏の愛称)の方が結果を残しているけど、昔は俺が主将で、あいつが副主将だった」と言う庄子氏に、鈴木氏が「あの時、陰でチームをまとめていたのは俺だよ」と反論するのがいつもの掛け合いだ。どちらかがゴルフに行ったと聞きつければ「あいつは100切ったか」とお互いを意識している。
川崎担当を務めた2013年。川崎は開幕から結果を残せず、風間八宏監督の去就問題に発展した。試合後には必ず私の携帯が鳴った。鈴木氏からだった。「どうだ、川崎は?」「チームはバラバラになっていないか」「庄子は大丈夫か」。毎回、同じことを聞かれた。後に鈴木氏は「負けが混むとやっぱり電話しにくいからね。チームは違うけど、同じ立場で気持ちは分かる。余計に心配で気になるからさ」と言った。
2015年に低迷した鹿島はトニーニョ・セレーゾ監督を解任した。その直前には、庄子氏は「鹿島で何が起きているの?」「まんは大丈夫か」と同じように心配していた。高校卒業後は大学、就職と別々の道を歩んできた2人。高校時代、チームをどちらがまとめたのか分からないが、その関係が今も昔も変わらないことはよく分かる。
先に強化職に就いたのは鈴木氏だった。ジーコ氏の教えを受け、1996年に強化担当になり、J最多の18冠を獲得。鹿島OBの内田篤人(シャルケ04)が強さの秘けつを「まんさん」と答えるほど貢献度は高い。庄子氏は2001年に現職に就いた。タイトル獲得はないが、J2から昇格したクラブをJ1の強豪へと変貌させた。鈴木氏を「強化担当として俺の先生」と呼び、「強化のイロハを教わった。なかでも『選手を移籍させるのも補強(若手を育てる)』というフレーズは今でも意識しているし、川崎の強化理念にもなっている」と同級生の背中を追いかけてきた。
鹿島、川崎に共通するのはチーム内のトラブルがないこと。一般的に選手は派閥を作りたがるし、起用されない選手はふて腐れる。この空気が続くとチームは結果を残せない状態に陥る。危険な空気をいち早く察知し、修正するのが強化部の仕事だ。補強がメインと見られがちだが、「調整役」としての出番が圧倒的に多い。2人は監督、選手との信頼関係を築くことに尽力し、軌道修正させる力を備える点で一致する。それは取材を通しても感じる。話すことに脚色がない。「言えない」と話すことはあっても、うそは言わない。監督や選手が信頼を置く理由がそこにある。
今の立場となってからは初めて決勝で顔を合わせる両者。来年で60歳を迎える。役員で定年退職にはならないが、解任と隣り合わせの職に就いていることから、次に決勝で対面する機会が巡ってくるか分からない。もしかしたら最初で最後の舞台になるかもしれない。それをよく知るからこそ、2人は「勝ちたい」と口をそろえる。
「うちがタイトルを取って、川崎が2位になると、庄子はいつも『また、まんにやられたよ』と言ってくるけど、川崎は今や推しも推されもせぬ強豪。いつタイトルを取ってもおかしくない。ただ、うちはタイトルを義務づけられたクラブ。川崎に勝ちたい」(鈴木氏)
「鹿島はクラブW杯で自信をつけている。一筋縄ではいかないだろうけど、俺らもここまで来た。今度こそ鹿島に、まんに勝ちたいね」(庄子氏)
チームメート、社会人サッカー選手、そして強化責任者、時々ゴルファーとして切磋琢磨(せっさたくま)してきた。出会ってから45年目。2人が寸暇を惜しんで作り上げてきたチームが、日本一をかけて吹田スタジムで相まみえる。(記者コラム・内田 知宏)
http://www.hochi.co.jp/soccer/column/20161231-OHT1T50169.html
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