プレーヤーとして、指導者として、解説者として、様々な場で顔を見せる元日本代表CB・岩政大樹。そんな彼が一冊の書籍を出版した。その名も「PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法(KKベストセラーズ)」。共に鹿島でプレーした本媒体編集長・佐々木竜太と共にその青春時代を振り返る。第2回では2人の高校時代を語ってもらった。
―御自身の高校時代を振り返ってもらえればと思うのですが
佐:高校の頃はプロを意識していた訳ではありませんでした。中学の時は鹿島のジュニアユースにいたのですが、ユースに上がることが出来ず、地元の高校に入って最後の選手権で活躍をしたらチャンスが転がって来ました。そこからプロに行くことが決まったという経緯を考えると、プロになることを意識して練習をしていたわけではありませんでした。ただ、鹿島ユースの選手たちには負けたくないと思いで練習をしていました。鹿島ユースとかは全国大会とかに出て、華やかなところでやっていましたが、自分は土のグラウンド。1、2年目は全国にすら行けず、彼らに負けたくないという想いで必至に練習をしていました。
岩:僕も高校時代にプロへの意識を持ったことはありませんでした。そもそも、中学の時にサッカー部がなかったこともあり、高校の部活で毎日サッカーが出来るという環境が楽しくて仕方ありませんでした。ちゃんとサッカーに打ち込めるようになったことが嬉しかったんです。なので、このチームが勝つためにはどうすればいいのか、重要な存在になってチームを勝たせられるか。このことを考えながら、高校時代はプレーをしていました。
―10年前と比べ、今の高校生たちは恵まれた環境でサッカーをしています。今の彼らに対して、一番大事にして欲しいことはありますでしょうか
岩:サッカーをやる上でプロを目指すかは関係ないと思っています。竜太も今話していたように、僕も良く言うのですが、夢を持っているかは関係ありません。毎日の取り組みがどうであるかが結論付けると思っています。僕らの時代はサッカー選手になるという想いではなく、少しでもサッカーが上手くなりたいという気持ちで取り組んでいました。もちろん、夢を持つことに意味がないわけではありません。ゴール地点を自分で決められるので逆算しやすくはなります。ただ、やるべきことは変わりません。毎日、何をしていくかが全てだと思っています。
佐:難しいですね(笑)大樹さんはかなり特殊で、なりたくてプロになった訳ではなかったと思います。ただ、プロになりたいと思っていたわけではない中で、ここまでプロのキャリアを積んできたことを僕は不思議に思うところがあります(笑)
岩:なるほど(笑)さっきの話になるのですが、プロになりたいという想いを持つことで、実現のために逆算をするとやるべきことが明確になります。そうすると、成長するための意味がはっきりします。そのゴールがないとやるべきことがはっきりしないので、夢を持つことは大事なことだと思います。ただ、その夢を持たずに自然と行動出来ているのであれば、それはそれで問題ありません。例えば、次の試合に勝ちたいと言う目標でもいいですし、ユースの奴に負けたくないという竜太みたいな気持ちでも良いと思います。だから、「勝つためにどうするの?」という感じで、今日やることが明確になっていれば十分です。なので、僕は最終的にゴール地点を決めなくても良いと思っています。もちろん、サッカー選手になりたいという風に決められれば良いですけど、そもそも描けない選手も多くいます。サッカー選手を目指していなかったとしても僕はなれました。なので、プロを目指す、目指さないが将来の分岐点にはならないと思います。
―そういう意味で今の高校生の印象とかはどうですか?
岩:この間、高校生の練習を見学させてもらいました。その中で感じたことは、さっきの夢の話になってしまうのですが、目標のゴールを見る子が多いと感じました。高度成長時代の日本は誰もゴールを見ていなかったと思います。皆が目先のところを見ていて、それが将来に繋がっていた。でも、今の子は夢を追うことが多く、ゴールばかり見ているように感じます。サッカー選手になりたいとか思うのは良いですけど、目先の一歩がないと意味がないですし、それがないと100歩先はありません。そういう意味で今の子たちは100歩先のための1歩を捉えられていないと思います。つまり、そのために何をするかを探れていません。サッカー選手になるために何をするかという部分で、目先のことを将来に繋げていく感覚をもっと養っていく必要があると思います。例えば、「ゴールを守るためにどうしますか」という時に、守りたいからと言って守れる訳ではありません。ゴールを守るために逆算をしながら、最初に何をすべきか、FWがどこから守備をして、どこから動かすか。自分の考えをどんどん掘り下げていき、最後のゴール地点という答えにたどり着かないといけないと思うんです。
まだまだ続く2人のトーク。【第3回】にこうご期待。(【第1回】)
(文・取材 松尾祐希)
岩政大樹 × 佐々木竜太「高校生に大事にしてほしい事」【第2回】