
日刊鹿島アントラーズニュース
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2018年3月1日木曜日
◆左足で跨ぎ、ジェスチャーは大きく。 帰ってきた内田篤人の変化と不変。(Number)

変わらないものがあれば、心おきなく変わることが出来る。
鹿島アントラーズの歴史のなかで、高卒選手として初めて開幕戦にスタメン出場を果たした2006年のデビュー戦。2010年のシャルケでの初陣に、昨年9月のウニオン・ベルリンでの初めての試合。
そして、2853日ぶりとなった鹿島の選手としてのJリーグ“再デビュー”戦……。
今回もまた、デビューはアウェーゲームだった。
ジンクスは変わらない。
およそ2万人の観客がつめかけ、満員となったIAIスタジアム日本平での試合を終えると、内田はこう語った。
「ホントは鹿島で復帰したかったんですけど(笑)」
「上手くいかないときはあるからね」
2月25日、清水エスパルスとの開幕戦では右サイドバックとして先発して、84分にFWのペドロ・ジュニオールと交代を命じられた。内田はいつも通り左足から白線を跨ぎ、ピッチの外へ。振り返って、一礼する。高校サッカー出身者としての誇りを感じさせるような行動も、変わらない。清水東高校の同級生も見守っていた。
「高校時代の友達も見に来てくれましたし、家族も見に来てくれていたので。高校のときもここでやっていますし、楽しかったです」
試合は0-0の引き分け。
「こうやって上手くいかないときはあるからね。そんななかでも勝っていかないといけないと思うんだけど。優勝するんだったら勝たないといけない、アウェーでも」
内田は試合後にそう振り返った。
レオシルバに険しい表情で。
ただ、変わったものも確かにあった。
この試合の清水は前線のFWめがけて、シンプルにボールを送り込もうとしていた。そこでボールが収まらなくても、セカンドボールを拾えればOK。相手に奪われても、すぐにプレッシャーをかけて奪い返せればもうけもの。
そんな清水の出方に、上手く対応できなかったのが前半の鹿島だった。例えば、レオシルバ。こぼれ球を拾ったあと、相手のプレッシャーを受けているなかで強引に縦パスを入れようとして、ボールを失うシーンが続いていた。
前半16分、レオシルバが味方に強引にパスをつなごうとして奪われ、相手のカウンターからシュートを許した直後だった。右サイドにいた内田は険しい表情で腕を大きく振り、レオシルバにクリアするようにうながした。
「つなぐところと、裏に蹴るところをはっきりしてもらえれば、後ろから(DFラインを)上げられるところはある。ミスしていると、どうしても自分たちの陣地でゴチャゴチャという回数が多くなるので」
意図は伝えても、伝え方は変える。
他にも、ボールを保持しながらも攻撃がうまくいかないシーンでは、左サイドバックの安西幸輝にむかって両手の親指を立てて、横に大きく動かす仕草を見せた。
「『(あまり多く)縦パスを入れないで』と言ったんです。縦パスを入れて、左へ行って、こっちに戻ってこないシーンがあったので。幸輝には何回か、『回せ』と伝えて。多少むこうが出てくれば、前が空くので。でも、そこら辺は戦術的なことだと思う」
ただし、自己主張をするのが当然の環境で育ったブラジル人のシルバと、日本人に対してとでは、伝え方も変える。その心遣いはあった。
「色々言うんだけど、雰囲気を悪くはしたくないからね。できれば褒めるというか。そういうことは意識して、ですね」
内田の意図は確かにチームに届いている。
スタンドからその声は聞き取れないし、味方にもひとつひとつの声は届かないだろう。それでも、遠く離れた場所からでも内田の意図はハッキリとうかがえた。そのくらい大きなアクションを起こしていたからだ。
こんなにも味方を鼓舞したり、指示を送ったりする姿勢は、かつての内田には見られなかったものだ。それは彼がチームを勝たせたいからであり、29歳の新入団選手として求められているものがあるからだ。
「満男さんはやっぱりすごいなと」
内田は入団会見の際に、「前もって、言い訳を言うわけではないですよ(笑)」と念を押した上で、こう明言している。
「最初は難しいと思います。リーグが違って、ボールも違う。芝生に水を撒いている、撒いていない、とか……。その違いは、リーグが始まってからもっと痛感すると思う。最初はけっこう苦労するでしょ。まぁ、そのなかで(小笠原)満男さんは(イタリアから鹿島に)帰ってきて、バンバン優勝させているので、あれはやっぱりすごいなと思いますけど」
Jリーグ開幕直前、2月21日に行われたACLの水原三星とのアウェーゲームには帯同しなかったものの、かつて痛めていた右膝の状態に不安はない。それでも、周りの筋肉に張りは出る。
「もうちょっと足が動けば、ガツガツいって、みんなに(闘うとは何かを)見せれるんだけど、今日はやっぱりちょっと抑えちゃったね。それはしょうがない。ここでピークに持っていったら、絶対に持たないから、1年は。徐々に徐々に」
焦らない。それはずっと変わらないもの。
はじめて海外移籍をしたときもそうだった。シャルケの選手として臨んだシーズン前のキャンプでは、扁桃腺炎で一時離脱を強いられ、開幕後には足の骨折もあった。それでもシーズン中盤以降にはチームに欠かせない選手となった。
シーズンが終わるときには、こう話していた。
「練習で、なぜかトラップとかパスがうまくいかなかった。パスが30cmとかズレたりして。ただ、焦りはなかったね。代理人の秋山(祐輔)さんにもズレについて相談したことがあるんだけど、『そういうのが海外に移籍して、最初に経験する苦労なんだよ』って言われた。のんびりやろうと思っていたから。それが良かったんだよ」
内田が新しいものを見せる余白は十分にある。
内田のなかに変わらないものがあるから、変われるものがある。
普段は「サイドバックが与える影響は少ないから」とうそぶく男が、実際の試合になるとサイドライン際からチームメイトを鼓舞していた。その姿に、変化が見て取れた。これからは、それを進化させていかないといけない。そもそも、内田の存在感はこんなものではないだろう。その経験値からしても、かつて披露していたパフォーマンスと比べても物足りない。
ただし、コンスタントに試合に出場するのは2015年の2月以来。およそ3年間のブランクがある。「試合勘」などというものを内田は信じないが、試合に出続けることで身体が思い出していく作業がある。それを誰よりもわかっているのは、彼自身だ。
再スタートを切った内田の未来は、余白だらけ。でも、それは彼が新たなものを見せるために必要な余白なのである。
左足で跨ぎ、ジェスチャーは大きく。帰ってきた内田篤人の変化と不変。

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