
日刊鹿島アントラーズニュース
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2019年8月17日土曜日
◆鹿島・上田綺世の「そこにいる」能力。敵と味方からポジションをはじき出す、ストライカーに不可欠な感覚【西部の目】(フットボールチャンネル)

やべっちF.C.magazine Vol.3[本/雑誌] (単行本・ムック) /...
7月に法政大学サッカー部を退部し、鹿島アントラーズに加入した上田綺世は、Jリーグ3試合目の出場となった8月10日の横浜F・マリノス戦で、初得点をマークした。日本代表としてコパ・アメリカ2019(南米選手権)にも出場したストライカーは、ストライカーとして不可欠な「そこにいる」能力を持ち合わせている。(取材・文:西部謙司)
敵と味方を観察すること。そこからポジションを弾き出す
日本代表に招集されたコパ・アメリカ(南米選手権)では5回の決定機をすべて外した。決定機逸失の数では大会最高だったそうだ。ストライカーとしては少々不名誉な記録だが、それだけ決定機に絡めていたこと自体が希有な能力といえる。
コパ・アメリカの時点で、上田綺世はまだ法政大学の選手だった。2021年から鹿島アントラーズに加入することが内定していたが、コパ・アメリカ後の7月に予定を前倒しして大学サッカー部を退部し、鹿島へ加入した。第23節の横浜F・マリノス戦では73分から交代出場し、87分に決勝点となるJ初得点を記録した。
三竿健斗からの斜めのロブを土居聖真がヘディングで折り返し、中央にいた上田が右足のボレーで合わせてゴール。三竿のロブのときにすでに土居がフリーで、上田もフリーだった。横浜FMのポジショニングが混乱していたのは確かだが、上田はいるべき場所にいたわけだ。そして今回はピシャリと決めた。間接視野でGKの動きは見えていたかもしれないが、感覚的にどこへ打てば防げないかをわかっているシュートだった。
第一に「そこにいる」能力。コパ・アメリカでも見られた才能である。第二にチャンスを確実に決める力。こちらはブラジルでは未遂だったが、ストライカーには不可欠で、横浜FM戦では発揮されていた。
イブラヒモビッチは「ニアポストには行かないな」と揶揄された
自分のいたい場所にいるFWと、味方がパスしやすい場所に行くFWがいるようだ。前者はそこへボールが来れば確実に決める。後者はチャンスをつかむ回数が多い。ズラタン・イブラヒモビッチはいつもファーポストでクロスボールを待っていて、ある監督から「君はニアポストには行かないな」と揶揄されたこともあった。状況とあまり関係なく、自分が得意な場所にいるタイプだ。
逆に、味方の特徴やボールの持ち方から「ここに来る」という予測で動く人もいる。佐藤寿人(ジェフユナイテッド千葉)などはこのタイプだろう。ただ、実際にはどちらかだけというより、両方のミックスなのだと思う。
「ベンチから見ていて相手のラインが高いのは気になっていました。そこを上手く使って得点できた。試合では少しずつ味方から理解してもらえるようになっていて、裏を狙うタイミングとかが合ってきた」(上田)
敵と味方を観察すること。そこからポジションを弾き出した。味方からのパスをもらってボックス内で仕留めるタイプなので、自分のほしい場所と味方が出せる場所のすり合わせは死活問題になりそうだ。良いパートナーを見つけられるとチャンスは増えるだろう。
位置感覚と対人感覚
得点の大半はペナルティーエリア内のシュートから記録される。さらにペナルティーエリア内のシュートの多くがワンタッチだ。つまり、得点を量産できるストライカーはワンタッチシュートの名手である。
ボックス内でのシュートが簡単そうで簡単でないのは、とにかく時間がないから。さらにGKの存在がある。ペナルティーエリア内から誰もいないゴールを見ると、こんなに広いのに何で入らないのかと思ってしまうが、PKでもGKにコースを読まれれば止められてしまう。流れの中からのシュートでは、タイミングとコースがさらに限定されてくるので、ボール1個ぶんの差で入ったり入らなかったりの微妙な世界ではある。
GKにわかっていても止められない場所へ蹴るとなると、シュートの精度とスピードが必要になる。GKが予測していない意表をついたシュートなら精度とスピードは多少甘くても入るけれども、アイデアとタイミングが不可欠になる。
ゴールの四隅を狙うならターゲットを目視できればいいが、往々にしてその時間は与えられない。位置感覚があるかないかは大きな差になる。つまり、ゴールを見なくても場所がわかるかどうか。
フラメンゴでプレーしていたころのジーコは、いつも同じ場所にいるカメラマンに赤いシャツを着るように頼んでいたという。とっさのときの目印になるからだそうだ。少なくともゴールエリアとペナルティーエリアのラインはどのフィールドにもあるので、そこから自分の位置を割り出すことはできる。DFの位置もヒントになる。そもそもボックス内なら間接視野でもポストは見える。バスケットボールの選手はリンクを見なくても位置がわかる。それが普通らしく、広さに差があるとはいえサッカーでもその感覚を持っていることは重要だ。上田のJ初得点は感覚的に逆ポストをとらえた打ち抜き系のシュートだった。
点をとれる人は試合のレベルにあまり関係なくとれる
一方、GKの意表をつくシュートもある。こちらは少しボールを浮かす、タイミングを外すなどでGKを無力化させる。シュート直前の駆け引きがポイントになる。この手のシュートは即興的ではあるけれども、実はそうでもないことも多い。こういう状況ではGKがこう反応するだろうという感覚がすでにあって、何度も成功させているので癖のように逆をついて決められるのだ。
1994年のJリーグチャンピオンシップでラモス瑠偉(ヴェルディ川崎)が決めたループシュートは伝説的だが、ラモスはあのシュートが得意で、とくにあの時期は足の具合が良くないせいかシュート練習でもループばかり打っていた。即興的ではあったが、思いつきというより手の内に入れての一撃だった。
GKとの至近距離の1対1では意表をつくシュートが有効になる。上田もこういうシュートはたくさん決めてきたかもしれないが、コパ・アメリカを見る限りはもう少し駆け引きがあってもいいような気はした。
決定機に「そこにいる」能力はすでに持っているので、決めるほうをより伸ばしていけばJ1でも相当点はとれるのではないかと思う。不思議なことに、点をとれる人は試合のレベルにあまり関係なくとれるものでもある。
(取材・文:西部謙司)
【了】
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