◆◆ワールドサッカーダイジェスト増刊 / 2020年1月号
静岡学園は23年ぶりの選手権ベスト4進出 いまだ大会無得点のエース松村が貫く信念
第98回全国高校サッカー選手権大会は5日、徳島市立(徳島)対静岡学園(静岡)の準々決勝を行い、静岡学園が4-0で快勝を収めた。大会屈指の注目株でもある鹿島アントラーズ内定のMF松村優太(3年)はこの日も不発に終わり、いまだ大会無得点の状況が続いているが、試合終了後の表情は晴れやかなものだった。
5年ぶりの選手権出場となった静岡学園は、「1試合3ゴール」の目標を掲げており、1回戦で岡山学芸館(岡山)を6-0、2回戦で丸岡(福井)を3-0、3回戦で今治東(愛媛)を2-0、そして今回の準々決勝で徳島市立を4-0で撃破し、23年ぶりの準決勝進出を決めた。華麗な攻撃的サッカーで大会に旋風を巻き起こしている。
一方、鹿島加入の内定を勝ち取り、エースナンバーの背番号「10」を背負う松村は、チームが計15得点を記録しているなかで、いまだ大会無得点。Jリーグ内定選手はメディアでも大々的に取り上げられ、世間からの注目を浴びていることもあり、対戦相手は徹底的な対策を施してくる。松村もその“洗礼”に苦しんでいた。
右サイドハーフの松村にボールが渡った際は、常に2~3人の相手選手が囲むような守備を見せてきたが、それゆえに逆サイドは比較的スペースの空いている時間帯が多く、左サイドハーフを務めるMF小山尚紀(3年)は4得点とゴールを積み重ねている。
「右サイドで引きつけてくれるんで、逆サイドは前を向くことができて、プレーしやすい。松村が相手守備陣を背負ってくれている分、他の選手たちが結果を出さないといけないというのは、みんなが思っている」
小山は、松村が相手守備陣の警戒を集めてくれているからこそ、それによって自由を得るアタッカー陣が得点を生み出していく使命感を口にした。また、主将DF阿部健人(3年)も、相手の“松村封じ”を事前に想定していたと語っている。
「マツ(松村)が厳しく来られることはあらかじめ分かっていた。それを、前の選手も共通の意識として持っている。サイドバックからマツにパスが出た時も、2~3人が猛チャージに来ていて、本当にガチガチだなと後ろから見ていても感じる。監督も、そこを逆手に取ろうと言っている」
徹底マークによる“恩恵” 「それこそ、僕が今大会で一番意識しているところ」
徹底マークによって周りの選手がプレーしやすくなっている現状を、松村本人にも尋ねると、「それこそ、僕が今大会で一番意識しているところ」と言葉を強め、「マークが厳しいのは分かっていたし、得点は他のみんなが取ってくれる。だから、僕はチームが勝つためのプレーに徹する」と強調していた。
「1試合目ではある程度仕掛けて、ゴールを奪いにいったが、これは厳しいなと。そこで吹っ切れた。2試合目以降は相手守備陣を引きつけることを意識している。もちろん得点も奪いたいけど、チームが勝つことが第一なので、味方に託します」
この日は2-0で迎えた前半40分に右サイドでパスを受けると、爆発的なスピードで相手選手2人を置き去りにするドリブル突破から、鋭いクロスでFW岩本悠輝(3年)のヘディング弾をお膳立てした。徹底マークという“宿命”を背負いながらも、松村はエースとして静岡学園の勝利に貢献し続けている。
(Football ZONE web編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)