◆明治安田生命J1リーグ▽第36節 湘南2―0仙台(20日・ユアテックスタジアム仙台)
仙台はホームで湘南に0―2で完敗。残り2試合でJ1残留圏内の16位に入る可能性が消え、13季ぶりJ2降格が決まった。前半10分に先制を許し、後半29分にも手痛い追加点を奪われた。チーム最年長のMF関口訓充(35)は「サポーターにつらい思いをさせてしまって申し訳ないと思います。責任を感じています」と涙を流した。不協和音を抱えていた内情を、担当の小林泰斗記者が「見た」。
人心掌握にたけたモチベーターとして期待された手倉森監督だったが、ベンチやロッカー、そして選手の胸の内には不満が噴出していた。ある選手はこう漏らした。「4、5月くらいまでは心を奮い立たせてくれる人だと思っていたが、勝てば自分のおかげ、負けたら選手のせいにしたりする一面が見えて不信感が芽生えた」
起用に不公平さがあったのかはベンチ外からは分からない。練習場や、練習試合で結果を残してもチャンスがもらえなければ不満が出るのは当然だからだ。ただ、その理由を納得させられていたのかは疑問だ。チーム関係者も「信心深い」と認める指揮官に対し、この日はサポーターからも揶揄(やゆ)する罵声が飛んだが、シーズン中に主力を含めた多くの選手から「占いや験担ぎとかでメンバーを選んでいるんじゃないか」などと勘ぐる声が出ていた。
14~19年に指揮官を務めた渡辺晋元監督は、選手をメンバーから外す時などには様々なデータを見せて理由を説明。可能な限り起用法を納得させる努力をしていた。少なくとも今季のように疑心暗鬼の声が充満していることはなかった。
実は、この日の湘南戦に向けた2週間の準備期間も、体の負荷が重い球際の戦いの練習が中心で、3バックの相手を想定して重点的に対策したのは試合前の2日間だけだった。0●2の完敗、そして降格決定という事実を見れば、正しい準備だったとは言い難い。
昨季はコロナ禍で降格はなかったが、17位と苦しい1年だった。それだけに11年に4位、12年に2位と躍進させた指揮官就任への期待感は大きかった。一方で切り札的な存在を“英雄視”し過ぎたのではないか。直接反論したり、強い意見を言えるような選手やスタッフはほとんどいなかった。
東日本大震災から10年を迎えた節目のシーズンは、厳しい結果に終わった。佐々木社長は監督の進退について「選択肢は幅広く捉えています」と明言を避けたが、方針を定めなければ来季の編成にも大きな遅れが出る。再び「東北の希望」になるため、チーム再建への決断が待たれる。
◆仙台、13シーズンぶりにJ2降格決定 手倉森監督に「不信感」(報知)