日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年11月11日金曜日

◆ジーコが振り返る今季の鹿島アントラーズ。「ベンチの混乱がプレーに影響を与えていた」(Sportiva)






ジーコ、鹿島アントラーズを語る(後編)


 今シーズンの鹿島アントラーズのことについて、少し触れておきたい。ちょっと辛口かもしれないが、私の心からの想いだ。

 今シーズン、チームはスイス人監督のレネ・ヴァイラーのもと、いいスタートをきった。彼の仕事のスタイルが私は好きであったし、ピッチでの選手の配し方も好きだった。聡明で現代的で、私はチームにぴったりの監督だと思った。

 しかし、さまざま事情により、私たちが予想したとおりにはいかなかった。おそらくレネは、チームが次々と優秀な日本人選手を売ってしまうことに、少し嫌気がさしたのではないかと思う。そのなかには、チームの得点王であり、鹿島唯一の日本代表、上田綺世も含まれていた。

 上田をヨーロッパに移籍させたことは、監督としてはショックだったろう。チームメイトやスタッフにとっても、あまりにも突然のことだったのではないだろうか。その結果、チームが自信を失い、結果を出せなくなることにつながったのかもしれない。サッカーでは迷いが生じると勝てなくなる。レネはこうした難しい状況の真っ只中に置かれ、その代償を払わされた。

 私は彼の去就には一切、関わっていない。2021年の12月から、鹿島アントラーズの決定に私が関わったことはない。私はチームがレネを監督にすることを知らなかったし、彼の鹿島での日々にも関わっていない。監督問題に対しては、何の相談もなかったし、助言も求められなかった。求められない限り、私は自分の意見を述べる立場にはない。
 
 南米とヨーロッパ、どちらのサッカーのスタイルが鹿島にはあっているか。これまでの歴史や結果を見れば、その答えは普通にわかるだろう。鹿島は南米、それもブラジルのスタイルで多くの成果を残してきた。その意味で、レネの監督就任はひとつの変化だった。ただし、レネに関して言えば、必ずしもヨーロッパのスタイルの指導者というわけではないと思う。出自はスイスだが、アフリカのチームを率いてきた監督だ。エジプトのアル・アハリでの仕事ぶりが認められて、彼は鹿島に招かれた。


チームにはレベルの高い監督が必要だ


 私自身は南米かヨーロッパかということにはこだわらない。現在の仕事ぶりを見て評価する。その点でレネはすばらしく、プロフェッショナルであり、いい選択であったと思う。

 後任で現在、指揮を執る岩政大樹監督。彼は優秀な選手だったし、チームのキャプテンでもあった。ただし、これまでトップチームのベンチに座ったことはない。レネ監督のアシスタントというのは彼がキャリアを始めるうえでちょうどいいものだったろう。

 しかし、ここで予想しなかったアクシデントが起こる。新型コロナウイルスによる入国制限のせいでプレシーズンの時期にレネが日本に入国できなかったのだ。そのためこの時期、コーチだった岩政はひとりでチームを率いなければならなかった。

 やっとレネ監督が日本に来られた時、レネは2人のアシスタントを連れてきていた。このことは多少の混乱をもたらした。それまでチームを率いていた人間が、急にテクニカルスタッフのなかでも指導権を失ってしまったからだ。

 その後、レネ監督はさまざまな問題に直面し、最後には解任された。もちろん彼の2人のアシスタントも一緒だ。こうしてチームを知る人間は、プレシーズンに指導をした岩政新監督だけとなってしまった。こうしたベンチの混乱は、ピッチでのプレーにも影響を及ぼした。

 リーグで優勝が狙えなくなってからは、唯一の希望は天皇杯だった。アシスタントから昇格した岩政監督はよくやり、チームを準決勝にまで導いた。我々はいい仕事をしているという確信があったし、天皇杯を制して、シーズンを救う自信はあった。

 だが多くの問題と、チーム周辺の緊張した空気が、別の結果をもたらしてしまった。我々はJ2でも18位のチームに敗れてしまったのだ。我々は彼らに勝つべきだったし、決勝に駒を進めるべきだった。J2のチームにホームで敗れることは、チームにとってはとんでもないことだった。サポーターに唯一の喜びを与えるチャンスを棒に振ってしまった。
 
 鹿島には優秀でレベルの高い監督が必要だ。暫定的に監督を任命することなどあってはならない。国籍は関係ないが、すでに監督として一定の結果を出している者がベンチに座るべきだ。チームは本物の監督を持たなくてはいけない。

 鹿島がこれほどレベルの高い、真のプロフェッショナルのチームとなれたのは、これまでずっとそうした監督がチームを率いてきたからだ。私はもう鹿島の従業員ではないが、サッカーの世界でずっと働いてきたプロとして、アントラーズの真のレベルの高さを知る者として、鹿島にはそうした監督が必要だと言いたい。

 岩政監督は、選手としてアントラーズの歴史を作ってきた大事な存在だ。だが、監督としては、鹿島が戦っているような高いレベルの戦いにはいまだ慣れていないのではないだろうか。突然、監督にされたことは彼にとっても重圧だったと思う。

 上田が移籍し、レネが去り、エレケが加入。これこそが今シーズンの鹿島の状況を物語っている。上田はピッチのなかで最も重要な選手だった。彼のチームへの貢献は非常に高かった。レネは知識と経験が豊富な監督だった。チームに絶妙なバランスを与え始めていた。ナイジェリア人のエレケはレネが個人的に望んだ選手だった。

 しかし、レネはエレケと入れ替わりでチームを去ってしまった。こうした一連のことがチームに、選手一人ひとりにネガティブな影響を与え、コーチたちにプレッシャーを与えてしまったのではないかと、私は考えている。

 今はただ、来季の鹿島アントラーズが再びチャンピオンを目指して進むことを願うばかりだ。




◆ジーコが振り返る今季の鹿島アントラーズ。「ベンチの混乱がプレーに影響を与えていた」(Sportiva)





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