日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年3月7日火曜日

◆三笘薫にも伊東純也にもない魅力とは?鹿島アントラーズの快足ウインガー藤井智也にブレイクの予感(Sportiva)



藤井智也


 Jリーグ第3節。前節、川崎フロンターレに逆転負けをした鹿島アントラーズは、アウェーで横浜FCと対戦、1-3の勝利を収め、3位に浮上した。点差は2点だったが、内容的にはそれ以上で、判定次第では0-4もあり得た鹿島の完勝劇と言えた。その勝因を探ろうとした時に出てくる選手がふたりいる。

 ひとりは佐野海舟。今季、ゼルビア町田から移籍してきた22歳の守備的MFだ。4-3-3のアンカーであるが、後方に鎮座ましましている重いタイプではなく、広範囲をカバーする機動力、生きのよさが売りだ。攻撃と守備、どちらの局面にも境界なく、鋭くボールに反応する。この試合では右サイドにサイドアタッカー然と何度か飛び出していき、チャンスを演出した。後半24分には自ら惜しい左足シュートも放っている。能力の高さ、将来性を感じさせる一撃でもあったが、その時、中央で藤井智也がフリーで構えていたことも事実だった。

 このシーンで左足シュートを決めるか、藤井へのアシストを決めていれば、佐野こそがこの試合のマン・オブ・ザ・マッチだった。その佐野を抑えて筆者がその座に推す選手は、佐野がラストパスを送らなかった相手、つまり藤井になる。やはり鹿島が今季、サンフレッチェ広島から獲得した新戦力だ。

 開幕から3試合連続でスタメンを飾る右ウイングは、前半9分、ペナルティエリアの右角付近でインサイドハーフ樋口雄太のパスを受けると、相手DFがふたりがかりで挟み込もうとするその間をすり抜けた。左足のタッチを交えながら軽やかにGKと1対1になると、右足で先制点を流し込んだ。

 立命館大在学中から広島でプレーしていた24歳。広島は5バック(3バック)のチームなので、ポジションはウイングバックがメインだった。ウイングより1列半程度、低い位置で構えたからだろう。広島時代は71試合に出場しているにもかかわらず、挙げたゴールはわずかに2点。この日のゴールはJリーグ通算3点目となるゴールだった。


【藤井の加入で攻撃の幅が広がった鹿島】


 しかし、先述のとおり後半24分の場面では、ゴール前でフリーの状態で構えていた。佐野からパスがきていれば、この日1日で、広島時代に71試合を費やして挙げたゴール数に並ぶところだった。

 さらにこの日の藤井は、もう1点決めるチャンスがあった。正確に言えば決めていた。後半10分、樋口の折り返しをワントラップ。相手DFをかわしゴールネットを揺るがせていた。ところがその前に、鈴木優磨のヘディングパスを樋口が受けた瞬間、オフサイドだったのではないかというVAR判定の結果、藤井はゴールを取り消されてしまったのだ。プロ選手として、この日の前には2点しか決めてない藤井にとっては痛すぎる、かなり際どい判定だった。

 得点を挙げたのは前半だったが、先述のふたつのシーンをはじめ、藤井には後半のほうがチャンスは訪れていた。それは後半の頭から、前半プレーした4-3-3の右ウイングから、4-4-2の左サイドハーフにポジションを変えたことと大きな関係がある。サイドハーフと言っても相手との力関係で、左ウイング同然の位置で構えたわけだが、この右から左への移動により、藤井にはプレーの選択肢が広がることになった。

 右利きのドリブラーが左に回れば、切れ込んでシュートというプレーが可能になる。縦もあれば内もある。切れ込んでシュートが望みにくく、センタリングに偏りがちな右ウイングより、広角なプレーが可能となる。

 鹿島の攻勢は、藤井のポジション移動とともに加速した。戦術面でも文字どおりのキープレーヤーになっていた。「鹿島といえばジーコサッカー」と言いたくなるほど、これまで旧ブラジル式の4-2-2-2的なサッカーに陥りがちだった。ウイングのいないサッカーである。ウインガーは松村優太ぐらいで、彼にしてもケガなどで、スタメンとして活躍する機会は少なかった。そこに今季、藤井が加わった。そして実際、攻撃の幅は広がった。鹿島はいい補強をした。


【魅力はスピードだけではない】


 藤井にとってもいい移籍だった。昨季の後半、広島で出番を失っていたからだ。そういう選手の移籍先は広島より格下のチームとなるのが普通だ。プロ選手としての格を下げる移籍になるものだが、鹿島への移籍はクラブの規模的に見ても、成績的に見ても特進に近い昇進だ。そこで開幕から3試合続けてスタメンを飾り、この横浜FC戦ではマン・オブ・ザ・マッチ級の活躍をした。広島はいまごろ地団駄を踏んでいるのではないか。

 左ウイングのほうが、活躍が見込めそうなムードを感じる藤井だが、この横浜FC戦で奪ったゴールは、右ウイングとしてのプレーしていた時に生まれたものだ。右ウイングとしても一瞬ながら、光るプレーを見せていた。左右可能なウインガーであることを証明したとも言える。

 開始9分の先制点のシーンは、どこが光るポイントだったのか。樋口のパスを、身体を開きながら左足(うしろ足)で引き摺るように運んだ点にある。DFふたりの逆を取りながら、すり抜けることができた理由であり、次の瞬間、利き足である右足で、狙いを定めながらもスムーズに振り抜けた理由だ。

 たとえば、同じ右利きの左ウインガーである三笘薫は、左サイドで、右足をうしろ足にして、そのインサイドでボールを引き摺るように運びながら前進する。そこでスピードの強弱を付け、相手との縦ズレを狙いながら縦抜けを図る。

 これに対し、右ウイングとしての藤井は、右利きであるにもかかわらず左足でボールを運ぶことができる。右利きなのに、右利きっぽくないドリブルを右サイドで披露する。三笘にはない魅力だ。伊東純也にも存在しない魅力に見える。

 先制点のシーンでも、その左足の使い方が活かされていた。藤井と言えば、まずその快足ぶりに目がいくが、進行方向が分かりにくいドリブラーでもあるのだ。ドリブル自慢のウインガーが今季、またひとりブレイクしそうな予感がする。





◆三笘薫にも伊東純也にもない魅力とは?鹿島アントラーズの快足ウインガー藤井智也にブレイクの予感(Sportiva)






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