日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年9月30日土曜日

◆約7年ぶりJ先発も王者・横浜FMに敗戦…柴崎岳が見つめる鹿島の現状と未来「自分たちが目指す方向は他のチームとは違うのかなと」(ゲキサカ)



柴崎岳


[9.24 J1第28節 鹿島 1-2 横浜FM カシマ]

 鹿島アントラーズに7シーズンぶりに帰ってきたMF柴崎岳が24日、昨季王者の横浜F・マリノスとの上位決戦で、復帰後初の先発出場を果たした。だが、先発出場には5か月間のブランクがあったため70分間での途中交代に終わり、チームも1-2で逆転負け。背番号20にとって「やっぱりこういう試合で勝ちたかった」と悔いの残る試合となった。

 柴崎にとって公式戦での先発出場は、レガネスでラ・リーガ2部を戦っていた4月9日の第35節ポンフェラディーナ戦以来5か月半ぶり。鹿島加入後は復帰初戦となったルヴァン杯の名古屋戦で延長戦も含めて約75分間、J1リーグ前節のC大阪戦で約18分間のプレータイムを刻んでいたが、いわゆる“ゲーム体力”は万全ではなかった。

 もっとも、この一戦の重みを考えればそうも言ってはいられなかった。勝ち点6差で首位の神戸を追っていた中、続く勝ち点5差で2位につける横浜FMとの上位対決は、逆転優勝に向けたラストチャンスとも言える一戦。そこで先発起用されたという意味は誰よりも重く胸に刻んでいた。

「初スタメンでこういう試合が巡ってくるのも縁かなと思っていたし、こういう試合に勝ってこそ自分が呼ばれた意味があると感じて試合をやっていた」(柴崎)

 だからこそ、柴崎は「やっぱりこういう試合で勝ちたかった」と心境を吐露。「もちろん長く試合をやっていなくて、スタメンから90分間やるという感覚を十分に持てていない中でも、60分でも70分でも最初からしっかりとギアを上げてやっていこうというふうに思っていた。リードしてサブの選手に受け渡したかったのが正直なところ。勝ちたかった」と悔しそうに語った。

 とはいえ体力面だけでなく、プレーの面も発展途上。この日は自陣でのビルドアップこそ左サイド後方に流れて起点となり、かつて日本代表でも担っていたような役目をこなしていたが、全体的には周囲の様子をうかがいながらの黒子役に徹しており、本領発揮はこれからになりそうだ。

 柴崎は「まだ全体像は掴み切れていないところもあるので、それは自分自身が吸収していかないといけないと思う。シーズン途中の加入ということで、チーム全体が今までやってきたやり方というのもあるので、それをどこまで自分が踏襲したり、やり方を変えたり、どこまでやるべきかというのを調整しながらやっているところ」と現状を見つめた。

 その一方で、ピッチに立たないと得られない収穫はあったようだ。

 柴崎は「個人的な収穫は70分近く出られたこと。疲労から交代はしたけど、その中で良かった点と悪かった点を見出せた点が収穫」と述べつつ、チームの収穫にも言及。「チームとしてはこういうリーグ戦の終盤で、自分たちを分ける大事な試合で落としたのは非常に重く受け止めないといけない。こういう試合に勝ってこそ強いチームになっていくと思う」と勝敗にこだわりながらも、前向きな言葉を発した。

「ただ、その希望というか、最後までみんなで諦めずにチャンスを作ったり、リスクをかけながらも攻めに行く姿勢はあった。終盤にチャンスがあったし、巻き返す意志が見えた後半だったのはプラスだった。諦めずにこのまま続けてやっていけば良いんじゃないかというポジティブな要素も見える試合だった」(柴崎)

 そんな前向きな展望も口にした柴崎に試合後、現時点での横浜FM、あるいは横浜FMとの力関係にどのような印象を持ったかを聞いた。鹿島は岩政大樹監督が就任以降、過去6年間のリーグタイトルを独占している横浜FMと川崎Fの名前をたびたび例に挙げ、彼らのような積み上げを目指していくという姿勢を公言していたからだ。

 すると柴崎は「個人的に力の差がそこまであるようには思えなかった」と切り出つつし、現状のJリーグの傾向、そして鹿島が目指していく方向性の一端を口にした。

「スタイルが確立されているクラブだったり、長年積み重ねてきたサッカーの花が咲いている状態を見ると、みんな同じようなサッカーを目指したり、こういったサッカーが善であるとか、良いサッカーのように見えてくる。そうした同じようなビジョンのサッカーを目指しているチームが結構あるんじゃないかなというのが、帰ってきてJリーグを何試合か見ての一つの傾向だと感じています」

「ただ、鹿島がそれに当てはまるかというと僕はそうではないと思っています。そういうふうにスタイルを持ったチームというのも、勝てば官軍、負ければ賊軍みたいな感じなので。鹿島の歴史やアイデンティティにおいて、そういうサッカーを目指すべきかというとそうではないのかなと。岩政監督もおそらく同じことを感じていて、自分たちが目指す方向は他のチームとは違う方向にあるのかなというのが僕の見立てです。そういった位置関係から見ると、マリノスや他のチームなど結果を出しているチームももちろんあって、そういうサッカーを否定しているわけではなく、いまはまだ漠然としているけど、鹿島はそういうところではないのかなというのが僕の意見です」

 柴崎がいま目指すのは、横浜FMのようにある一定の方向性でスタイルを磨き抜いていくのではなく、さまざまな顔を見せながら勝つチームだ。

「僕はサッカーのスタイルや戦術に関してはいろんな形があっていいという意見なので、チャンピオンズリーグでやっていたり、優勝しているチームのやり方が全ていいのかというとそうではないと思う。世界のトレンドがそうだからそうならないといけないわけでもない。実際、自分たちに近いやり方をしているチームがチャンピオンになっているところもあるし、鹿島らしさという点でいえばいま作っているものは間違いではないと思う。現にいろんな顔を見せ始めているなと。それは途中から入った選手の一意見ですけど、やっていて面白くなりそうだなという感じではあるので、それをこれからもうちょっと紐解いていけたらと思います」

(取材・文 竹内達也)





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