宮崎戦では柴崎岳が交代したあと、キャプテンマークをつける。
屈託のない表情が、FW鈴木優磨が感じている大きな手応えを物語っていた。
鹿島アントラーズは宮崎市内でキャンプ中の1月27日、ランコ・ポポヴィッチ新監督体制での初の対外試合として、J3のテゲバジャーロ宮崎とのトレーニングマッチを行った。45分×2本、プラス30分の形で行われた一戦は鹿島が2-1で逆転勝利を収めた。
鈴木を含めた主力組が出場した後半30分過ぎまでは両チームともに無得点。鹿島は何度もチャンスを作ったがゴールを決め切れずにいた。ただ鈴木は「個人としても、チームとしてもゴールを取り切らなきゃいけない部分があった」と反省しながらも、前を向く理由を説明した。
「日本に帰ってきてから、キャンプのなかでは一番コンディションがいいと感じています。いつもこの段階ではめちゃくちゃ体が重くて、全然走れなかったんですけど」
例年になく順調だと感じられる理由は、オフの過ごし方にあった。茨城県鹿嶋市内で新体制が始動した今月9日、初練習を終えた鈴木はこんな言葉を残していた。
「今年はよりサッカーから離れた気がする。1か月間、しっかりと休みました」
ベルギーのシント=トロイデンVVから復帰し、小笠原満男氏の現役引退後は空き番になっていた「40」を志願して背負った2022年、日本人選手でリーグ2位タイ、個人ではキャリアハイの14ゴールをマークした昨シーズンと、鈴木はフル稼働してきた。
J1リーグのプレー時間は、2022シーズンが2701分、昨シーズンは2825分を数えた。フルタイム出場の稼働率は実に90%に到達する。2016シーズンを最後に国内無冠が続く鹿島に、再びタイトルをもたらそうと獅子奮迅の存在感を放ち続けた。
しかし、タイトル奪還は叶わなかった。
心身に必要以上の負荷がかかっていた状況が、愛してやまないサッカーとあえて距離を置くオフにしたと鈴木は説明していた。
「身体的にも、メンタル的にも疲れていた。今は特に頭がクリアになっています」
サッカーから離れている間に岩政大樹前監督が退任し、ポポヴィッチ監督が就任した。日本での指導歴も長い指揮官は、非常に厳しい練習を課すと人づてに聞いた。
あえて空っぽな状態にして、始動後にコンディションを上げていく青写真も思い描いた。
「やっぱり練習から妥協なく100パーセントを求める監督ですし、そこに対して全員が応えたい、という気持ちがあるのが、僕自身のコンディションも上がっている要因だと思います」
昨シーズンは4人のキャプテンの1人に名を連ねたが、今シーズンは副キャプテンとして、新たに「10番」を背負う新キャプテンのMF柴崎岳を支えていく。背負うものが減った状況も、鈴木がやるべき仕事、すなわち「ゴール」をより明確にさせている。
宮崎戦では柴崎が右足を痛めて前半18分に交代。以降は鈴木がキャプテンマークを巻いた。昨年9月にスペインから復帰し、満を持して2シーズン目に臨もうとしていた柴崎の状態は気がかりだが、最前線の大黒柱は極めて充実したキャンプを送っている。
取材・文・写真:藤江直人
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